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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・六部 ???? ミルク編
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復興

それから俺たちは、ライアさんの看病をヒイラ達に任せて、アリーと共にアルナファティクに赴くことにした。勿論、ロデとロザリオも連れて。


「ライアさん、大丈夫かな?」

「私も行く!!って、言うくらい元気になってたし、戻る頃には復活してるでしょう。それよりも……」

「家の周りが、綺麗になっちゃった……」

「そうだね。あっちこっち賑やかに装飾されてたのに、今はそれも無い……」

「波に流されちゃったんだろうね。……ああ~、大・損・失!!!!」


 変わり果てた町並みを見て、ロデはその場にうずくまる。だが、俺はそこで違和感を覚えた。普通なら、ここまで綺麗じゃないんじゃないかと俺は思った。ロデの家の周りの道沿いには、ゴミひとつ落ちていないし、流木すら見当たらない。流されてきた近隣の家の家具すら無いというのは、ちょっと綺麗すぎるんじゃないか?


「人、いないわね……」


 アリーが、辺りを見回しながら言う。


「えっと、今は港の方ですかね。あそこが一番ゴミだらけですから、今頃街の人総出で掃除を行っているはずです」

「街の人、総出で?」

「勿論ですよ、ベイ君。なんせ、このアルナファティクは商業の街!!商売なくして反映は成り立たぬ。日々の生活さえも退屈になる。それが、アルナファティクと言う街なのです。ここに暮らす人々にとって、街の汚れは自身の汚れ、街の危機は自身の危機と同じなのです。経済が回らないアルナファティクなど、水を組めないバケツ。焚き火が出来ないずぶ濡れの薪に等しいのです。となれば、街の人総出で立て直しを始めるのが、この街の凄い所ってとこですよ」

「そう言えば、街の人は無事だったのかしら?」

「ふふ~ん。アリーさん、マルシア商会。ご近所さんにとても優しい商会でして、なんと、非常時に街の人間全てを匿ったのです!!……あ、盛りすぎました。すいません。備えを十分にしていない住民だけです。基本、アルナファティクがあそこまでの自体になることって無いので、それでヤバそうだった人の避難場所にはなりました。ですが、ここらへんの大きな商売している皆さんは、流石といいますか。あの雨の中でもしっかりと家を守られたようでして。やりますねぇ、アルナファティクの商人」

「それで、街の人間は全て助かったと?」

「はい。海沿いの街ですから、避難訓練とかも年一でやってましたし、それの成果ですかね。きっと避難してきた人達が家の周りの掃除もしてくれたんでしょう。それで、こんなに綺麗なんじゃないかと」

「ああ~、なるほど。にしても、この短い期間でよくやるわね」

「マルシア商会。信頼とお客様のご厚意で出来ておりますから」


 嬉しそうに、ロデは歩き出す。そして、家には入らず、港を目指して歩き始めた。数分後、港に大きな人だかりが見えてくる。そこには、マッチョのおっさん達が汗水たらして、大きな木材なんかを運搬して運んでいく姿が見えた。


「うわぁ……」

「えいやさああああ!!!!」

「えいやさああああ!!!!」

「積み込み終わったぞ!!」

「こっちにも、カゴ持ってきてくれー!!」

「馬車には、これぐらいでいいか?」

「おう。いっちょ頼むわ」

「はい」


 次々と、海の上に浮いているゴミが運び出されていく。そして、あっという間に港は綺麗になっていった。


「ふぅ~、いい筋トレになったぜ」

「あ、あの年季の入った筋肉は、ロデのお父さんですよ!!」

「ロザリオ、筋肉で私の父を判断するの、やめてもらえるかしら……」


 俺たちは、ロデの父親、ゲイル・マルシアさんへと近づいていく。周りでは、街の女性たちが疲れている男性陣に、飲み物を配っていた。


「お父さん、調子はどう?」

「おお、ロデか。見ろ。船はなくなったが、綺麗な海が戻ってきた。これで、また商品を仕入れられる」

「つまり、絶好調ってことだね!!」

「おう!!マルシア商会の未来は明るいぜ!!って、あ、皆さん、いらっしゃったんですか。これはこれは、はしたない言葉遣いで、すみません」


 ゲイルさんは、俺達は見るとそう言ってくる。俺たちは、全員でいえいえと返事をした。


「港自体は、大丈夫そうですね」

「ええ。綺麗にはなりましたが、港自体には荒れ1つもう有りません。ここから、また賑わうことでしょう」

「その日が、出来るだけ早く来るといいですね。ところで、ゲイルさん。最近の気になる情報、ご存知ですか?」

「んっ?気になる情報ですか?と、いいますと、創世級迷宮の件でしょうか?」

「流石、お耳が早い」

「いえいえ。あの情報は、人々の力でありとあらゆる街にその情報が知れ渡っています。と言っても、詳細までは私共もまだ。ただの自然消滅、という情報はちらほら聞きましたけども」

「それは嘘です。居ます。間違いなく。この地上の何処かに、怪物が」

「……」


 アリーの言葉に、ゲイルさんは目を丸くした。


「それは、確証があるという事でよろしいのですね」

「ええ。でなければ、このような話は致しません」

「なるほど。しかし、何故商人である私に、そのお話お?」

「怪物が、暴れまわっているという情報は有りません。つまり、怪物は理性的な怪物です。話が通じる怪物なのかも知れません」

「なるほど。交渉したい、と言うわけでしょうか。その化物と」

「ええ」

「なるほど。……私も、あの時背中に寒気を感じました。やはり、そうなのですね。いや、今はっきり言っていただくまで、私は恐怖から安心したいという一心で自然消滅という情報を信じたかった。そう思っていました。ですが、そうですか……」


 ゲイルさんは、広がる海に目を向けた。その目は、何処か恐怖に歪んでいるように見えた。しかし、それも一瞬。すぐにゲイルさんの目に、光が灯り始める。


「分かりました。もしもの時は、このゲイル・マルシア。マルシア商会の全面協力をお約束致しましょう」

「……ありがとうございます」

「しかし、アリーさん、ベイ君。覚えておいてください。圧倒的な力を持つものが、交渉の席に立つとは思わないほうがいい。何故なら、力で欲しいものを奪えばいいだけなのだから。ですが、本来はそれは長続きしない一瞬の略奪。それを、分かっているといいのですが……」

「気をつけます……」


 俺達もマルシアさんその言葉に、この先の未来に不安を覚えながら、穏やかに波打つ海を眺めた。


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