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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・五部 暴流神忍 ミズキ編
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破壊された檻

「やっほ~!!ライアおばさんだよ~!!」

「おばさん!!」


 ライアは、転移したその足でサイフェルムへと来ていた。そして、見たことのないでかい家から知り合いの魔力を感じると、その家のドアを叩く。そして、出てきたヒイラに突如として抱きしめられていた。


「おー、よしよし。ヒイラちゃんは、甘えん坊だなぁ~」

「良かった。無事で良かったよ!!」


 ヒイラは、泣きながらライアを抱きしめている。その後ろから、アリーが顔を出した。


「あら、おばさん。もう終わったの?」

「うん。ライアおばさんだよ。当たり前じゃないか!!」

「ふふっ、流石おばさんね」

「当然!!……あれ、ベイ君わ?」

「あ、そうね。ベイー!!」


 アリーが家へと入っていく。すると、アリーに支えられてベイが出てきた。


「ライアさん、お久しぶりです」

「おおー!!ベイ君、お久~!!」


 ライアは、ヒイラに抱きつかれたまま、ベイへと歩み寄った。そして、ふむふむとベイを眺めると、そのまま抱きしめる。


「えっ?」

「どうやら、辛い修行をしたばっかみたいだね。よしよし、いい子いい子」

「あ、あはは。分かりますか」

「そりゃあそうよ。ライアさんも、よくボロボロになるからね。分かる分かる」


 暫く抱きつくと、ライアはその場で動かなくなった。


「ん?ライアさん?」

「……くぅ~」


 ベイは、ライアを観察する。すると、抱きついたまま、ライアが眠っていることが分かった。


「ライアおばさんも、お疲れみたいね」

「無理もない。迷宮を1つ、相手取って戦ったんだから」


 ベイは、片腕でライアを持ち上げる。そして、家のベッドに寝かせると、自身も別のベッドで眠りについた。


「弱すぎいい!!!!」


 ミルクは、起き抜けにそう叫んでいた。その声で、ベイ達は目を覚ます。


「何だ、ミルク。いきなり」

「いや、あいつ弱すぎるでしょう!!一体化無しでしたよ、レム!!」

「仕方ないだろう。そういう特性の奴だったんだ。お前とは、相性が悪かった。いや、この場合は良かったというのか?」

「いえ、私と相性がいいのは、ご主人様だけですので!!ようは、弱かっただけです!!」

「まぁ、そうだな」

「アルティ!!あれでいいんですか!!」

「ええ、情報は収集済みです。ですが、ミルクさんの一体化情報が無いのは、痛いですね」

「でもでも、あんなザコ相手に、一体化する意味ないでしょう?」

「そうですね。弱い相手に一体化していただいても、意味がないです」

「つまり、私の一体化は、まだお預けってことじゃないですかぁぁああああ!!!!」


 ミルクは、力いっぱい叫ぶ。そのミルクを、ベイは抱き寄せた。


「よしよし、ミルクはスペシャルだもんな。だから、いずれ相応しい相手が出てくるさ」

「ご主人様!!そ、そうですよね!!私はスペシャル!!その私の相手が、あんな奴で務まるはずもございません!!そう、どうせなら、創生級クラスでないと!!」

「はいはい」


 はしゃぐミルクを、ベイはなでなでする。そして、そのままミルクを抱きしめて二度寝した。


「また、寝られてしまいましたか」

「ミルク、起こしちゃダメだぞ」

「わ、分かってますよ。ああ、しかし、ご主人様のいい匂いが。ここが天国」


 寝ているベイに、ミズキが近づく。そして、そっと寝ているベイに、口づけをした。


「お疲れ様です、殿」

「あっ、ミズキ。何を」

「では、私も」

「フィーも」

「わ、私も」

「えっ」


 ミルク以外の全員が、ベイに口づけをしていく。しかし、ミルクは抱きしめられているので動けない。


「ば、馬鹿な。そんな、こんなことって」

「天国だろ。羨ましいぞ、ミルク」

「ぐぬぬ、ご主人様が起きたら、私もやりますからね」

「あはは、そうだな」


 ミズキは、笑いながら愛おしそうに、ベイの頭を撫でていた。


*****


「……そろそろか」


 衝撃が重なり始める。それは、偶然に近い物だ。無計画に暴れまわる化物共の攻撃が、その一時のみ、同じ方向に集中して放たれる。その瞬間、迷宮の壁は、攻撃の損傷によって最も薄くなったと言えるだろう。それと同時に、その化物は、溜め込んでいた魔力をその一方向目掛けて解き放った。


「……」


 静かに、空間に凹みが広がっていく。ゆっくりとその間に、土で出来た巨大な身体が吸い込まれるようにして割って入り、その穴を補強していった。そして、その一瞬の先。ついにその化物は、壁を破って外の世界へと着地する。


「よっと。ふぅ、やれやれ、やっと出れたか。しんどかったのう」


 それは、ゆっくりと後ろを見た。その小さな化物の背中。そこにある迷宮から、無数の鎖のようなものが飛び出して、彼女へと迫ってきている。


「もう出たからな。内側からは頑丈だったが、外側からはどうじゃ?」


 そう言って、彼女は腕を鎖目掛けてかざした。すると、鎖が空中で分解されていく。そして、そのままその迷宮の最下層が砕け散った。


「外側からだと脆いもんじゃの。さて、忌々しい迷宮から脱出したことじゃし、外の世界を見て回るとするか。まぁ、その前に水浴びじゃな。わしの身体が汚れるわけも無いが、エチケットは大切じゃからの」


 そう言って、化物である彼女は一歩踏み出す。すると、辺りの草花が枯れた。


「おっ、相変わらず脆いもんじゃのう。どれ、これでいいかの?」


 彼女は、再び一歩踏み出す。すると、今度は草花が枯れることはなかった。反対に、今度は彼女の周囲に花が咲き始めていく。そして、その花が広がり、枯れた草花を蘇らせた。


「大きく育てよ。わしが、支配する星の草花なんじゃから」


 彼女は歩いていく。そして、その背後で、最下層を失った創生級迷宮が、大きく音をたてて地面へと落下した。しかし、辺りの地面に損傷はない。それを分かっていたかのように、彼女は歩きながら笑みを浮かべた。


 今ここに、最強最悪の生物が解き放たれた。水色の髪、褐色の肌をした少女にも見える彼女。しかし、その胸には、外見の年齢に不釣り合いなほどの大きな胸を持っている。彼女こそ怪物。彼女こそ化物。時代すら破壊し、作り上げることすら容易だというその力を持つクラスで、彼女は呼ばれている。


 それは、創世級。


 この世に君臨する、最強最悪の生物の称号。地の力を持つ最強の神。その彼女が今、人里目指して歩き始めた。




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