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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・五部 暴流神忍 ミズキ編
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同時決戦

「しかし、ライアさん達が攻略間近かぁ。大丈夫かな」

「ライアさん達なら、大丈夫でしょ。勝てなくても、死にはしないわ」

「いや、アリーさん、うちのパパとかも居るんだけど。心配なんだけど」


 そう言ってレラが、前に進み出る。


「パパ、死地に立つと、俺を置いて先に行けー!!するタイプだし」

「ジーンさん、そんな性格だったの。まぁ、ライアさんが作戦無しで突っ込むわけ無いから、そこまで酷いことにはならないでしょ」

「そうかなぁ~。ここ、サイフェルムの時とかやばかったじゃん。あんなのだったらどうする?」

「……いずれ、人って死ぬし」

「ベイく~ん!!」


 レラが、俺の肩を掴んでユッサユッサと俺の胴体を揺らす。


「パパを助けて!!パパを助けて!!」

「う、うん。分かった、分かったから。今日の夕方の迷宮攻略が終わったら、様子を見に行くから」

「本当!!」

「勿論。あの迷宮は、俺達もいかなきゃならない場所だし」

「私のためにも、行くべきなんですよね。ですが、そんな簡単に攻略できる迷宮、行く価値があるのでしょうか?」

「ミルクさん、データは必要です。最悪でも、戦わなくとも敵は見ておきたいところです」

「そうですか。なら、邪魔しない程度に見に行くとしますかね。手こずるようなら、このミルクちゃんが、握りつぶしたリンゴより酷い形に相手を変えてあげましょう」


 うーん、ミルクなら楽勝かもしれないな。こいつが負ける未来が見えない。ミズキよりも、何故か厚い勝利の信頼感がミルクにはあるな。俺の中でミルクは、ニンジャ以上なのかも知れない。


「ん?」


 ドンドンと、ドアを叩く音がする。こんな雨の中で、2人も来客か。俺は、手早く玄関に向かってドアを開けた。


「ベイ、ヒイラちゃん居る?」


 その人物は、俺のこの世界での母、カエラだった。すぐ近くの実家に住んでいるのに、既にこの距離で雨の被害を受けている。酷い雨だ。


「母さん、どうしたの?」

「これ、うちのポストに手紙が」

「手紙?」


 俺は、カエラから手紙を受け取る。その手紙には切手がなく、ヒイラちゃんへ、ライアよりと書かれていた。


「ライアさんからだ」

「え、おばさんから」


 ヒイラは、俺から手紙を受け取るとすぐに開封する。


「ハロー、ヒイラちゃん。元気してた。ライアおばさんだよ!!今、私たちは土属性神魔級迷宮の攻略の真っ最中で~す。ですが、そこで突如として大雨がおばさんたちを襲ったのよ。これは、迷宮攻略どころじゃないって、一旦は引き下がったんだけどね。なんと、迷宮の空に、巨大な屋根が出来たのよ。まるで、雨を嫌うみたいに。これはむしろ好機なんじゃないかと、私達は思ったわけさ。だって、その為に誰かが魔力使ったわけでしょ。その分、相手は不利になっているはず。ってわけで、おばさん達、この雨の中で迷宮攻略の最終決戦を始めようと思うわけよ。あ、勿論出来たらだけどね。無理はする気無いから、まぁ、多分死なないよ。でもね、もしかするといけないから、この手紙を書くことにします!!あ、転移魔法で送るから、変な場所にあったらごめんね。いや、書いとけってうるさいのよ。私はいらないって思うんだけど。……ところでさ、ベイ君は元気してるかな。彼も、色々と辛い経験をしたみたいだからね。ヒイラちゃんが側にいて、助けてあげてよ。本当は、おばさんみたいな年長者が支えてあげるべきなんだろうけど……。なんちゃって!!アリーちゃんも、ヒイラちゃんも居るし、ベイ君は大丈夫だよね。うむ。私、覚悟できたよ。ライアおばさん、とっとと迷宮攻略して、ヒイラちゃんとベイ君の様子を見に行っちゃおうかな!!と言うわけで、死ななければ時期にそっちに行きます!!期待してて!!ライアより」


 と、言うことが手紙に書かれていると、俺達はヒイラの音読で知った。


「い、今から……」

「迷宮、攻略を……」


 俺は、飾られている時計を見る。俺達の迷宮攻略作戦開始時刻までは、まだだいぶ時間があるようだ。


「ど、どどど、どうしよう~~!!!!」


 ヒイラが、大慌てで俺に抱きついてきた。


「おばさんが死んじゃ~~う!!」

「落ち着きなさい、ヒイラ。あのライアさんよ。死ぬわけ無いでしょ!!」

「でも!!でも!!」

「ふむ。私が、分身を送って見てみましょう」


 ミズキが、そう言って目を閉じる。すると、アルティが俺の手を握って、もう片方の手でミズキの手を握った。


「これで、ミズキさんの分身の映像が、マスターにも見えるはずです」


 確かに、俺の頭に映像が流れ込んでくる。まるで、空中に映像が投影されているように、俺は錯覚していた。分身ミズキは、何処かの設営テントに着地する。そして、そのテントに耳を当てた。


「よし、全員手紙は書いたな」

「ああ」

「そうね」

「……」

「何だよ。しけた面してるなぁ。良し、手紙を渡してくるぜ」

「私は、もう送ったから」

「はっ!?どうやってだよ?」

「魔法で」

「はぁ~、ほんと、なんでも出来るよな」

「当たり前よ。私はライア・スペリオよ。当然じゃない」

「はいはい」


 そう言って、ガンドロスはテントを出ていった。


「では、行くか……」

「そうだな」

「待って。屋根が出来たって言っても、まだ完成して無いじゃない。少し待ちましょう」

「……確かに」


 ミズキの分身は、迷宮を見つめる。確かに、屋根は完成途中のようだった。


「随分と建造が遅いな」

「いや、あの中は圧縮された空間だし。すごいでかいって歩いて知ってるでしょ。あれでも、凄まじく早いのよ」

「……なるほど」


 ジーンは、その言葉を聞くと武器を置いて座り直す。


「……はぁ、早く家に帰りたい。こんな連中じゃなくて、ヒイラちゃんや、ベイ君の顔を見て安心したい」

「すまないな。無理をさせて」

「いえ。私より優れた年長者の魔法使いが出払ってるせいですから、お気になさらず」

「……すまない。君に頼るしか無くてね」


 その会話に、割って入るように一人の人物がテントに入ってきた。


「お、ガーノさんじゃん」

「遅くなってすまない。私も、迷宮攻略に参加しよう」

「この土壇場で来るか。運は、俺達に向いているようだな」

「って、ほんと男しかいないなぁ、このパーティ」

「女性スタッフなら、別のテントに居るだろう?」

「いや、それはそうですけど。はぁ~、アリーちゃんみたいな天才魔法使いが、一人ぐらい私の代に居ても良かったのに……」

「それは無理な話だ。だいだい、私でさえ転移魔法は危険すぎて使えない。君ほどにデンジャラスな魔法使いなど、そう何人も居るはずがないよ」


 そう言って、ガーノは杖を置いた。その時、ガンドロスがテントに入ってくる。そして、ガーノと顔を合わせた。


「お、来たのか、あんた」

「用が片付いたのでな」

「それじゃあ、行くとするか」


 ガンドロスは、自身の剣を取ろうとする。それを、ライアが止めた。


「待って、まだ迷宮の屋根が完成していない。だから、夕方からにしましょう」

「夕方だと?」

「そんな夜近くに迷宮攻略をして、大丈夫なのかね」

「それは手をうってあります。何より、この雨の中のほうが不利でしょう。ですから、屋根の完成を待つべきです」

「……分かった。あんたがリーダーだからな。そうしよう」

「じゃ、そういうことで」


 そういうと、ライアは転移して消えた。


「何処に行ったんだ?」

「実家でしょう」

「寝具が変わるのが、嫌なんだそうだ」

「ふむ。やはり、転移は便利だな」


 ガーノは、そう言うと目を閉じて瞑想を始めた。




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