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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・五部 暴流神忍 ミズキ編
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大雨、津波警報

「ごめんくださーい!!」

「うん?」


 誰かが、玄関に居るようだ。俺は、フィー達の召喚を解除して、玄関へと向かう。そして、聞き覚えのある声だったので、スッと扉を開けた。


「うへぇ。ここまで来るだけで、ホント大変だったよ」


 そこには、シアが立っていた。馬は連れてきていないようだ。この雨の中やって来たのか。大変だな。


「まぁ、上がりなよ」

「ありがとう、ベイ君」


 俺は、シアを客間に案内して、お茶を入れた。


「うーん、温まる!!ところで、アリーちゃんと、ヒイラちゃん居る?」

「居ますよ。ちょっと待って下さい」


 俺は、2人を呼んで戻ってきた。


「こんな雨の中、わざわざ来るほどの用なの?」

「いやぁ~、実は街の見回りがてらの来訪なんで、そんな重要な話でもないっていうか」

「そう。今度は、王様でも倒れたかと思ったわ」

「あ、倒れたよ」

「……」


 シアは、特に問題無さそうに、お茶を美味しそうに飲んでいる。


「階段でつまずいてね。でも、特に問題無さそう」

「なんだ……。変な言い方しないでよ」

「でも、最近動きが鈍くなってる気がするんだよね。年かなぁ」

「……かもね」

「だと、良いんだけど」


 シアは、何かを確かめるかのようにアリーを見ている。アリーは、特に表情を崩さず、適当にあしらった。


「ところでね、ヒイラちゃんの耳に入れとこうと思ってさ」

「えっと、何ですか?」

「ライアさん達ね、神魔級迷宮、攻略間近かもしれないんだって」

「えっ?」

「えっ」


 アリーと、ヒイラが驚いたようにそういった。


「ちょっと雨で長引くかもだけど、迷宮の全体像は見えてきたってさ。流石、ライアさん達。国の英雄だね」

「すごい。……いや、危険に迫りつつあるってことかも」

「そうかもね。しかし、まさかここまで早く……」

「そうだよね。驚くほど早いよ。どうやら、魔物自体の出現率が少ない迷宮みたいでね。探索は、慎重に進めば問題なかったんだとか」

「なるほど」

「で、これが迷宮の地図の写し。最新版」


 シアは、そう言ってテーブルに紙を広げた。


「まるで迷路ね」

「でしょう。入り組んでるよね。私も、昔に迷路を描いて遊んだことがあるけど、これはそれよりももっと複雑だ」

「で、この中央部が怪しいわけ」

「そう。まだ空白だけど。ここに、大きな部屋が5つあるってライアさんは考えているみたい」

「強者がいるってことか」

「そういう事。まぁ、無理しないって言ってたから、大丈夫だよ」


 シアは、そう言って地図をしまう。


「で、アリーちゃん。一つ相談なんだけど」

「何よ」

「この雨さ。おかしくない?」


 やはり、シア達も気づいていたか。


「どうも、広範囲に渡って降り続いてるようなんだよね」

「何処から?」

「ロデちゃんの実家の近くの、神魔級迷宮から」

「そう。それはおかしいわね」


 アリーは、少し考える仕草をする。


「だとしても、水属性神魔級迷宮なら、最終的に雷魔法を打ち込めばどうとでもなるわよ」

「あ、そりゃそうだよね」


 確かに、普通の水属性神魔級迷宮ならば、相手を選ばなければそれで一網打尽に出来るかも知れない。外の迷宮を覆っている魔力で、外界への影響も少ないはずだ。だが、今回の大本は恐らく、あの宇宙の中の魔物。あの中は真空だし、雷が届くはずもない。……そう考えると、そういうことなのかも知れない。雷魔法に、水属性の生物はかなり弱い。もし、それを克服するための手段を手に入れようとしたのだとしたら。その進化の果てが、宇宙の力だったとしたら。少しだけ、あいつらのあの形の意味が分かった気がする。


「じゃ、その方向で進めようかな」

「あと、これだけ大規模に雨を降らせるとしたら相当な魔力を使っているはず。息切れして、途中でやめるかもね」

「……じゃ、様子見でも良いかもってこと」

「すぐには、ぶっ放さないほうが良いかも」

「分かった。そうしよう」


 シアは、スッと立ち上がった。玄関に移動して、立て掛けてあったレインコートを着る。


「じゃ、お世話になりました」

「いい。くれぐれも、周りに被害が出ないようにね」

「分かってる」


 そう言って、シアは帰っていった。


「そう言えば、ロデの実家は大丈夫なのかしら?」

「行ってみようか?」

「ああ、大丈夫だよベイ君」


 俺が振り向くと、そこにはロデが居た。


「アルナファティクは、海に面した街。当然、その為の対策もバッチリな街でして。いざとなれば地盤も浮かせられる魔法機構付き、最悪でも、うちの商館は水の上でも浮くという親切設計。どんな荒波でも安心ってわけですよ」

「あの家、そんな訳の分からない作りになってるの?」

「ええ。いざとなれば屋敷外の魔法機構を発動してシェルター化出来るんです。いずれは、この家にもつけたいですね。お高いですが……」

「あ、やっぱり」

「ところで、あんたそこで何してるのよ」

「いやいや、商売人は情報が命ですから。復興作業で、大量に資材や人手がいりそうですね。今のうちに、見積もっておきます」

「……はぁ、まぁ良いわ。復興は大事だものね」

「お任せ下さい!!と言っても、私はうちの人達に連絡するだけなんですけど」


 ロデは、いそいそと魔法陣のある部屋へと向かっていく。直接安否を確認しに行くのだろう。まぁ、大丈夫かな。多分。そして数分後、ロデが帰ってきた。


「いやぁ~、港は全滅みたいです。船、買い直しだそうで、復興に手を回すのはその後かなと」

「中々、上手く行かないものね」

「とは言ってもですよ、うちの家の商会は海沿いだけではありません。そこが強み!!大丈夫な地域から集めてくればあら不思議。大幅な黒字ってわけですよ」

「全国規模って、便利だなぁ」

「そうでしょう。アルナファティクの実家で修行した商人たちが故郷へと帰って店を開く。これを繰り返すこと数年。私の家の商会は、この程度での嵐では転ばぬ商会になったのです!!」

「はいはい。すごいすごい」

「アリーさん、薄い反応ですね」

「確かに、すごいことよ。でも、私って商売に興味が無いから。生きる上でもう、お金には困ら無さそうだし」

「まぁ、そうですよね」


 ロデは、それはそうだというふうに頷いた。


「でも、お金稼ぎは決して悪いことではないんです。生きる上で最低限って言っても、人によって価値観は違いますし。本当に、人ってお金のかかる生き物ですから。ですから、子どもたちのために、まだまだお金稼ぎをしておいて損はありません。未来の自分のためにも、家族のためにも、お金は必要です。ですから、じゃんじゃん自分の能力を使って、楽して稼ぐべきなんです。それこそが経済を回し、国の人々を豊かな生活へと導くのです!!」

「まぁ、そうね。お金は大切よね」

「分かってもらえますか!!」

「ええ、勿論。魔道具も、もとはそういう用途で作られてるし、開発にもお金がかかるから」

「そうです。お金は、人と人を繋ぐ橋です。これが相手の努力に見合う対価となるわけです。ですから、誰かのためにも、自分の為にも持っておくべきなんですよ。ええ」

「いや、だからって常時7桁近い金額を持って無くても良いんじゃないかな、ロデ」

「ロザリオ。私は、いついかなる時でも儲かる投資はする女でありたいの。これでも、まだ足りないくらいよ」

「そうかなぁ……」


 ロザリオは、納得いかないと言った顔でロデを見ていた。



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