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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第一章・二部 青と赤と魔王軍
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闇の激突

「なんだこれは」


 俺達が転移先で見た物は、3つに別れた転移魔法ゲートだった。出口は一つだが、入り口は3つあるらしい。おびただしい数の魔物が、転移ゲートを目指して移動している。あまりの多さに数を数える気にもならない。流石にこの数をミルク1人で相手にするのは、分が悪いだろう。


「……俺とミズキが足止めをする。フィー、レム、2人でこの転移魔法を動かしている敵を倒してくれ。危ないと判断したなら転移魔法で俺とミズキを呼んで欲しい。その時は、一体化して一気に倒す!!」

「分かりました。行きましょう、フィー姉さん」

「うん。マスター、気をつけて!!」


 レムとフィーは、そう言うと転移した。その場に俺とミズキが残る。正直に言って、この数の魔物全部を2人で相手にするのは無理だな。だからといって、全てミルク任せには出来ない。こちらは、こちらでやれる事をやるしかなさそうだ。


「よし、俺が聖魔級魔法で敵を焼き払う。ミズキ、援護を頼むぞ!!」

「承知。ですが殿、少し気になることがございます」

「うん、なんだ?」

「カヤが相手にしていた蝙蝠男。もしや、かなり出来る奴かもしれません。分身で援護をしてやりたいと思うのですが」

「そうか。……なら頼む。俺達も無理せず遠距離での立ち回りをしよう。こっちが危険になってたら意味が無いからな。じゃあ、始めるとしようか」


 俺達は、魔法による敵軍への攻撃を開始した。


*****


 レムとフィーは、転移魔法の流れを追って転移していた。その流れを追っていった結果魔法の流れの原点は、敵軍のど真ん中にあることが分かる。流石に敵軍のど真ん中に考えもなしに転移するわけにはいかない。少し中心点から離れた場所に2人は転移することにした。


「少し目標は悪い位置にいますね。どうします、フィー姉さん?」

「マスターが言ったことをするだけ。私達でも、これぐらいの敵なら無傷でなんとかなると思う。そうでしょう、レム?」

「……そうですね。見たところ周りは、中級から上級の魔物。私とフィー姉さんの敵ではないでしょう。分かりました、突っ切りましょう!!切り込みは、お任せください!!」

「うん、後ろは任せて!!よし、行こう!!」


 レムが、強大な力の鎧を出現させて身に纏う。武器を手に作り出して持ち2人は、敵大軍の只中に突っ込んでいった。敵の魔物たちがレムとフィーの存在に気づくが、その力とスピードを止められる者はいない。レムの魔法を纏わせた剣の一振りで、何体もの魔物が一瞬のうちに声を発することも出来ぬまま消滅していった。その後ろにフィーも続いて移動する。風魔法を使っての高速移動を行い、決してレムのスピードに引けを取らない速度を維持して進行しながら魔法を放ち周囲の敵を排除していった。敵大軍の中に、一本の線のように2人の歩んだ道が出来ていく。その周囲に生き延びることの出来ていた魔物はいなかった。


「フィー姉さん。どうやら向こうから来てくれるみたいですよ」

「そう。なら迎え撃ちましょう。ちょっとここは狭いから、広げないと」

「ですね。では、私が!!」


 レムが、そう言うと剣に込める魔力を強めた。レムが剣を一振りすると、周囲に黒色の斬撃が伸びて辺り一帯の魔物を切り裂いていく。フィーも、ウインドブラストを乱射して敵をなぎ払っていった。周囲に居た魔物達が2人の魔力に薙ぎ払われて消えていく。そして、敵軍の只中に周囲に魔物たちの居ない空間が出来上がった。


「……ネズミが入ってきたか」


 暫くそうしていると野太い声がする。やって来たそれは、身体が大きく太く巨大な岩のような存在感を放つ魔物だった。銀と黒色の鎧を身に纏い、顔にはヘルメットを着けている。そしてその腕は、異様に長く太く、拳に至るまで巨大。肩や腕の関節部から魔力で出来ていると思える刺が生えていてそれから放たれている魔力が強く、その魔物の存在感を禍々しいものとしてフィー達に見せていた。


「その魔力、人間ではあるまい……。何故我らに敵対する」

「お前達が、我らの主の敵だからだ」

「人間に組みしているということか。愚かな、いずれ滅びるだけの存在に手を貸すとはな。だが、その覚悟やよし!! 主を思う気持ちも、分からんわけではない。しかし、こちらもこれ以上の邪魔をされては困るのでな。消えてもらおう!!!!」


 巨大な魔物の棘から魔物の全身に魔力が広がっていき強化魔法がかかる。そのまま両肩にある刺から魔力を放出しながら魔物は、レム目掛けて突進してきた。


「グッ!!」


 レムが、魔物の突進を盾で受け止める。その高い威力にレムは少し後ろに押されたが、なんとか力を込めてレムは突進を受け止めた。動きを止めた魔物目掛けてレムは、構えた剣を振り下ろす。巨大な魔物は、レムの斬撃に対してその巨大な拳を構えた。その拳が、まるで盾のように立ちふさがりレムの鋭い斬撃を防ぐ。レムの剣が、拳に当たった状態で止まった。


「チッ!!」

「鋭い斬撃だ。だが、我が拳に傷をつけるほどではないようだな」


 レムの剣は、押し上げられた拳によって押し返された。レムは、一度仕切り直すために下がって距離を取ろうとする。だが相手は、間髪入れずに拳での突きを連続して放ってきた。盾で剣で、その攻撃をレムは逸らし防ぎきる。レムは、剣に魔力を込め攻撃の合間を縫い反撃の一閃を繰り出した。魔物も、その一撃を見てより力を込めた拳を突き出す。2人の攻撃は、間でぶつかり合いその大きな衝撃でお互いを吹き飛ばしあった。


「……」

「見事」


 レムは、無言で剣を構え直す。フィーが周囲の魔物を抑えてくれている。無様な戦い出来ない。そう考えたレムは、自身の武器に大きな闇の魔力を纏わせた。レムの剣が、強大な魔力を纏って禍々しく光る。


「面白い!!」


 相手の拳にも大きな魔力の光が灯った。2人は、お互いをにらみ合う。そして次の瞬間、2つの強大な闇の魔力がぶつかりあった。2人の攻撃は拮抗している。だが、徐々にレムの方が押されはじめた。レムは、力を込めて耐えようとする。しかしレムは、その場から弾き飛ばされた。


「チッ!!」


 飛ばされはしたレムだが、それほど大きなダメージを受けたわけでは無い。すぐに空中で体勢を立て直し、地面に着地する。それと同時にレムは相手の実力を分析し、現状が良くない状況であると考えた。今の一撃で単純な攻撃力や魔力は、向こうが上であると確信した。自分もまだ全力ではないとはいえ、今の一撃を放ってまだ相手には余裕があるように見える。つまりこの相手は、自分と互角かそれ以上の実力であるとレムは考えた。


(どうする。主に来て頂いて一体化するのが無難だろうか。私とフィー姉さんで、なんとか出来るのか?)


 レムは、そう考えながら武器を構え直す。


「実に惜しいな。それほどの実力がありながら人間につくとは。人間など、ただ滅びを待つだけの種族。今消えたほうが幸せだというのに。それでも、向かってくるのならば仕方ない。その愚かな人間と共に消えよ!!! 愚かなる騎士よ!!!」


 巨大な魔物から、先ほどよりも強力な魔力が溢れだしてその全身を包んでいった。その魔力は、魔物の容姿を変え更に巨大化させていく。更に魔物の全身の色が真っ黒に染まっていった。肩に出ている刺は、より大きくなり枝分かれして凶悪に変形していく。纏った魔力を黒色に光らせ、魔物は高まった力を誇示するかのように腕を振り抜いた。その動作だけで、周囲の大気が揺らぎ風が巻き起こる。


(まずいな)


 レムは、ベイを呼ぼうとした。もうこの状況で勝てる確率は、限りなくゼロに近い。だから一体化して戦おうとレムは思った。しかしその瞬間、レムの考えは前に進み出た者の腕で止められた。


「フィー姉さん」

「レム、私に任せてもらっていい?」

「ほう、その小さな魔力で我と戦おうというのか」

「フィー姉さん、ですが!!」

「丁度良さそうなの。私を、次の私を試すのに……」

「それは、どういう?」


 その時、レムは気づいた。フィーの周りに、魔力が集まっていく。その魔力の光は、次第に大きくなっていき結晶化して宝石のような石へと変わった。それらは、それぞれが違う色を持っておりまるで。


「魔石!?」


 瞬間、フィーの身体が光りに包まれた。いくつもの色の光がフィーを包んでその姿を変えていく。そして光が止むとその光から出てきたのは、白いフィーだった。衣装も、髪の色さえも白く変化している。そしてその周りを、7つの魔石が浮遊していた。


「マスターが滅ぶ未来になど、私がさせない!!!!」


 フィーは、上級魔物に進化した。そのランクからは、桁外れの能力と覚悟を内に宿して。



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