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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・五部 暴流神忍 ミズキ編
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見本市

「何だ、あれは……」


 近づいていくに連れ、その物体がはっきりと見えてくる。最初は、毛の生えた球体か何かに見えた。だが、それは遠く離れた時点での大きさだった。そう、それはデカかった。それは、巨大な隕石の中で蠢いていた。


「毛、ですかね」

「いや、樹木じゃないか?」


 宇宙植物といえば聞こえは良いが。まるで毛根を、顕微鏡で拡大して見ているような光景だ。それでいて、そのピントを合わせている一本の毛が、これ見よがしにビョンビョンと動き回っている。はっきり言おう。近づきたくない。


「うん?」


 今は、カザネが止まっているので、相手の動きもしっかりと見えている。突然、その毛が動くのをやめた。その毛の周りの地面に、亀裂が入っていく。そして、その毛が倒れ始めた。髪が、頭皮から抜ける瞬間ってこんな感じなのだろうか。


「出て、来ようとしているのか?」


 カザネがそう言う。それは、亀裂からあまりにも太い腕を突き出し、隕石の地表に出てきた。先程まで見えていたのは、どうやら頭の一部だったようだ。その毛のような頭に、一つの大きな目が開く。そして、俺達を見つめた。


「うわぁ……」

(キモい……)


 巨大だし、ムッキムキだし、全身がテッカテカだ。しかも、自重で徐々に隕石に埋まり始めている。どんだけ重いんだよ。


「……」

「んっ、何でしょうか?何か、喋っているような?」

(真空なのに、聞き取れるのか?いや、そもそも発声器官あるの?)


 見ていると、巨人の目の部分に魔力が集まっていく。そして、その目から光の閃光が放たれた。その閃光は、俺達のさっきまで居た場所を通り、反対側の迷宮の壁にまで届いたらしい。遠くで、何かの光が見えた。


「水、属性なんですよね?」

(アリーの言う通り、単純な水魔法だと思わないほうが良いようだな)


 カザネモードは、はっきり言って速すぎる。あの閃光のレーザーも、放たれてから避けて間に合った。安心感のある一体化だな。特にあんな化物相手でも、余裕の立ち回りが出来ると、すごい安心する。


「さて、硬さは如何程か?」


 巨人は、ビームを放った姿勢のままだ。その脇腹に、カザネが超高速の蹴りを叩き込む。すると、ブヨっと巨人の肉が波立ち、カザネの蹴りの速度についていけず、まるでプチプチでも潰したかのように潰れた。巨人の頭部分が破裂し、そこから体液らしきものが溢れ出す。俺達は、体液がつかないようにさっさと離れることにした。


「柔らかい、と、思うのですが」

(あの感触は、そうだろうな。だが、蹴りの威力も相当あるからな。普通の人間程度という所か)

「ここには、柔らかい生物が多いのでしょうかね?」

(まぁ、調べてみよう)

「そうですね」


 俺達は、次の何かがあった場所へと、移動することにした。


「あれは、同じような毛の奴ですね」

(あの隕石みたいなのに、光が反射して、星のように見えていたんだな)

「……そもそも、何処から光が来ているのでしょうか?」

(……あれだろ)


 それは、有り得ない程の光を放っていた。一見、それは人の形をしているように見える。だが、よく見ると、小さい物凄い光を放つ何かの集まりだということが分かった。それは、時折七色に見えるまばゆい煌めきを表皮に放ち、ボッーっと何をするでもなく俺達の目の前に浮いている。


「何ですか、あれは……」

(分からん。人類の常識を超越した何かだ。俺には、それしか言えん。恐らくだが、あいつ一体で太陽並みの熱量を発しているのではなかろうか?)

「……ここは、愉快な化物の見本市か何かなのでしょうか?」

(かも知れない。あれは、そっとしておこう。無理に戦う必要は無さそうだ)

「そうですね……」


 俺達は、小さな太陽を無視して、探索を続けることにした。


「あの星、動いていますね」

(動いている?)

「はい。移動しています」


 俺も、カザネと同じ方向に意識を向ける。すると、確かに何かが宇宙空間を飛んでいっていた。いや、カザネモードが移動時は早すぎるので、まるで動いてないように一瞬見えるけど。


「何か、乗っている?」

(何だ。もう、何が来ても驚かないぞ)


 俺も、その星をよく観察する。すると、その上に黄色い布のような何かを被った生命体らしきものが乗っていた。


(……)

「人工物、でしょうか?」

(……)


 何故だろう。あれからは、今までの奴と似ているが、関わっちゃいけない奴みたいな雰囲気が強く出ている気がする。今までのも、そうだったような気がするけど。こんな宇宙空間で、あんな格好をしていてただのオシャレさんであるはずがあるまい。


「通過していきましたね」

(……まぁ、ほっとくか)


 オシャレさんに、わざわざ挑むこともなかろう。しかし、ここの奴らは、独特の雰囲気を持っているやつが多いな。宇宙空間という、未知の空間ということも手伝ってか、いつも以上に連中に関わりたくない。


(こんな所で、ミズキはまともに戦えるんだろうか)

「大丈夫ですよ。ニンジャですから」

(ニンジャの可能性は、無限大だなぁ……)


 むしろ、俺よりカザネのほうが、ニンジャの可能性を信じている気がする。まぁ、ミズキだし任せて大丈夫だろうなぁという、漠然とした信頼は俺にもあるのだが。こんな所のボスって、どんなやつだよ? 想像できんぞ。


(そう言えば、魚を見ないな)

「そうですね。何処かにいるはずですが……」


 その後も、俺達は宇宙空間を飛び回る。隕石が寄り集まって出来たような小惑星。何故か視線を感じる、隕石が多く漂っている宙域。その中を飛び回り、俺達は見つけた。宇宙空間に浮いている、その不気味な城を。


「あれ、海藻が着いてますよ」

(当たりっぽい建物だな)

「と言うより、建物らしい建物は初めてじゃないですか」

(まぁ、明らかに彼処にいるだろうな。一番の実力者が)

「にしても……」

(でかいなぁ……)


 俺達の何倍あるのか分からないぐらいの、正面の入り口を見ながら、俺達はそう呟いた。こんなのを潜る奴が、相手だと見ていいだろう。いや、これノジュカントよりでかいんじゃないかな。実際。


「お二人とも、そろそろ一旦戻りませんか」

(お、結構時間経ってたか)

「目標物は発見しましたし。素直に戻るとしましょう」

(そうだな)


 カザネモードを解除して、通常の一体化に戻る。そして、俺達は一旦家に帰ることにした。



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