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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・五部 暴流神忍 ミズキ編
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深海にて

 新居に家具の運び入れも終わり、数日が過ぎた。学園の寮と新居に相互に行き来できる転移魔法陣を設けたと言うアリーの説明で、俺達は毎日新居生活を続けている。と言っても、ダミーでは無く実際に存在する。前々から作っていたらしい。流石天才。その御蔭で、ロザリオも向こうの学園寮から自分の意志でここまで転移することが可能となった。便利だな。


「はぁ~、毎日ベイ様のお顔が見られるなんて、夢のような生活ですね」

「でしょ」


 そう大げさにロザリオが言うのを、アリーが肯定する。まぁ、遠距離に居ながら一緒に住めているというのはちょっとした奇蹟だよな。あっちの社会にも、これがあればよかったのにと、思わずにはいられない。


「私達以外が使うと使えないっていう機能にするのが一番めんどかったわね。まぁ、何とかなったけど」

「生体認証してるってことか。すごいな」

「生体って言うか、魔力というか?まぁ、そんな感じよね」


 なんというか、科学的要素もある魔法陣なんだな。


「だから、私達以外の人を連れてこようとしても使えないんだけど、まぁ、別にいいでしょう。この家に、遠方から人を呼ぶなんて滅多に無いでしょうし」

「はいはい!!うちの家族とか、呼びたいときとかはどうでしょうか?」

「悪いけど、陸路で来てもらえる。出来るだけ、変に出入りする人減らしたいから。と言うか、商人にサイフェルムに自由に行き来されて物価を変えられすぎても困るし」

「なるほど。確かに、流通の価格破壊に繋がりかねないですからね。分かりました。涙をのんで、今のままで良いです」

「ロデの為には作らない。OK?」

「うっ、分かりました」

「ま、いずれ他の何処かで普及しだしたら使ってもいいわよ。まだ、当分先だろうけど」


 そう言って、アリーは読んでいた本を本棚に戻した。


「そろそろいいかもね」

「迷宮攻略か?」

「ええ、あれからシアを見ないし、城の件が落ち着いた証拠でしょう。マルシア商会の素材が売り込まれた店を衛兵が監視をしていたようだけど、それも居なくなったみたい。完璧に諦めたみたいね。まぁ、変装したミズキが素材を売りに行ったんだし、見つかるわけないけど」

「未だに巡回をしながら、衛兵が素材を売り込んだ者を探しているようです。シアだけでは、やはり完全には衛兵たちの動きを止められないようですね。もっとも、私達まで辿り着くことはないでしょうが」

「念には念を入れておいてよかったってことでしょうね。さて、ベイ達が迷宮に行く前に、少し話しておきたいことがあるの」

「うん、なんだアリー?」


 アリーは、何かの本を取り出す。それは、黄金の魚の切り身の観察日記だった。


「結論から言うと、あの魚。いえ、厳密には魚と言うには、何かが違うのかもしれない」

「と言うと?」

「あの魚、姿形は魚類なんだけど、構造がおかしいのよね。ほら、陸に上がっても鮮度を保っていたでしょう」

「そう言えばそうだな」

「そこで詳しく調べたんだけど。あの魚。自分で酸素を作り出す機能を有しているみたいなの。それも細胞レベルで」

「?」

「簡単に言うと、真空状態でも生きられるっていうとこかしら。むしろ、その為の身体としか思えない」

「まさか、真空状態って言うとあそこしかないんじゃあ」

「そう。宇宙。あの魚。宇宙で行動するための生体を持っているとしか思えないのよね」

「え、アリー魚だよ?水中に居たんだよ?」

「そう。でも、その身体は水中に居なくても生きていける身体だったのよ。水中でも生きていけるが正しいけど」

「つまり実際は、宇宙で生きるために、そのポテンシャルがあるっていうのか?」

「だと思うわ。この魚、よく見ると身体のあちこちに空気を打ち出して推進する構造があるのよね。凄まじくおかしい」

「いや、何がどうしてそんなことになるんだよ!!」

「アリーさん、流石に理論が飛躍しすぎなのでわ?」


 アリーは、ミズキの言葉に頭を掻く。


「これでも?」


 アリーは、そう言うと腕に何かの物体を作った。それは暗く、吸い込まれそうな魔力の塊に見える。


「アリーさん、それは?」

「これね、宇宙に漂っている魔力。その再現ね。何かに、近いと思わない?」

「水属性神魔級迷宮内で見た。黒い貝の城に漂っていた魔力と同じに見えます」

「あ、そっち。私は、サイフェルムに今来ている謎の魔力の流れのほうを差してたんだけど、まぁ、いいか。そういう事」

「え、宇宙にそんな魔力があったのか」

「ベイは、一回しか行ってないからあまり見れてないのかもね。あるのよ。宇宙を漂う魔力にも、こういう形がね。勿論、何にもなっていない自然な魔力のほうが多いけれど」

「とすると」

「あの黒い貝の城の中身は」

「宇宙?」

「有り得るわね」


 え、海の中にある物体の中に宇宙が広がっている? ちょっと意味が分からない。


「と言うか、それだと水属性の迷宮じゃないのか。あそこわ」

「いえ、使われている魔力は確かに水属性のものでした。そう考えると、問題ないかと」


 そう、アルティが答える。うーん、じゃあ、なんで宇宙なんだ。ますます意味が分からない。


「これまでの迷宮も、どれも普通のやつは居なかったじゃない。あの鳥も、宇宙で動けたみたいだし。あの天使も、人間が持っていない有りえない程の力を持っていた。宇宙の力を持っている水属性の魔物が居ても、不思議じゃないんじゃない?」

「言われてみれば、そうかも知れない。……いや、もしかすると海底というのは星の中心に最も近い場所とも言える。それが何か影響を」

「マスター、それよりも問題が有ります」

「うん、何だアルティ?」

「つまり、ミズキさんは、宇宙で戦わなくてはならない可能性が高いです」

「あ、ああ~」


 つまり、ニンジャが宇宙で海洋生物とスペースバトルを繰り広げるわけだ。どんなアメリカンコミックだよ。


「ご心配なさらず」


 そう言うと、スッとミズキが立ち上がる。


「私、ニンジャですから」


 いや、ニンジャでも宇宙はいけないんじゃないか。いや、ミズキだしな。スペースニンジャも可能かもしれない。


「アリーさん、何か気をつけておくことはありますか?」

「そうね。相手の魔法が水魔法とは思わないほうが良いと思う。それぐらいかしらね」

「承知」


 敵は宇宙生物。そう思うだけで、水属性神魔級迷宮はとても過酷な迷宮な気がし始めた。多分、俺の予感は当たっているだろう。今まで見てきたものは、あの迷宮の一部でしか無かったのだ。俺は、何も想像できない敵の姿に、少し嫌な気分になって顔をテーブルへと伏せた。



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