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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・五部 暴流神忍 ミズキ編
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潜行

「し、新居完成おめでとう……」

「ええ、ありがとう。で、手は回せた」

「勿論。出回っていた素材を買い取ったことにするよ。それなら、貢献者も身元不明で通るしね」

「そうね。素材を売りに来た者の顔など、しげしげと見はしないでしょう。ただし、今回の素材は別だけども」

「そこはそれ、覆面でもしてたってことでさ」

「まぁ、行けはするでしょうね。ロデ」

「はいはい」

「マルシア商会に買い取らせるわ。後は、他の手に渡らないようにして」

「まぁ、出来ますけど……」

「ひゅー、準備してくれるとは楽で助かるよ」

「問題は、何故マルシア商会にあったことが分かったかね。と言う訳で、各商会に探してますという話を持ちかけてもらえる。そうすれば、マルシア商会が売りに行くのは確定。分かった?」

「はいはい、了解しましたとも!!」


 アリーと話をつけると、シアは嬉しそうに馬にまたがって城へと戻っていく。まだ素材があると決まった訳ではないのだが……。


「と、言うわけよベイ」

「ああ、行ってくるよ」


 朝の食事も終え、準備も終えた俺達はそのまま転移魔法で水属性神魔級迷宮へと向かった。あそこに行くのは久しぶりだな。カザネを仲間にした直後以来か。俺達は、一体化した状態で水属性神魔級迷宮の最奥へと転移する。一体化の形態は全属性だ。


「また、イソギンチャクが生えているな」


 地面に生えた巨大なイソギンチャクから、魔法が俺たち目掛けて放たれようとしていた。だが、俺は動じずに地面目掛けて腕をかざす。


「あの頃の俺達じゃないんだよ……」


 かざした腕から魔力が渦を巻き、風の刃となって周囲に広がって行った。それらはイソギンチャクを実っていた蕾ごと切り裂きバラバラにする。そこに、俺は火の魔力で出来た槍を形成していった。


「クリムゾンランス・ハンドレッド」


 百の火の槍が、海中で爆発する。その爆炎は、海中であるとも余すこと無くイソギンチャクの破片を焼き払った。


「無限に魔力が回復できるんだ。まぁ、こんなものだろう」


 俺は、静かになった海底で意識を集中させる。魔力の流れを周囲から掴んでいき、徐々にその距離を伸ばしていった。


「……」

「殿」

「ああ、海底付近に何かおかしな流れがあるな」

「はい。何処かへ、魔力が流れているようです」

「行ってみよう」


 地面を下に見ながら、俺達は風魔法で水の中を直進する。目的地には大きな岩のようなものと植物が生えており、怪しいようには見えない。


「ここに、何かがあるはずだが」


 俺は、岩の周りをぐるっと一周する。だが、特に穴のようなものも開いていなかった。


「……こういう時は、安易に行くとしよう」


 俺は、地面に腕を突っ込む。そして、土魔法で巨大なドリルを作り回転させ、地面に潜り始めた。感じている魔力の流れを追うように俺は掘り進む。すると、数分して岩で囲まれた空洞へと抜けた。


「ここも、やはり水だらけか」

「ですが、水が少しおかしいですね。輝いている」

「確かに、見やすくはあるな」


 ある意味では幻想的な光景なのだろう。だが、海の底。謎の巨大空間に光る海水だ。とてもまともな場所ではないだろう。取り敢えず、俺達はその空洞を進むことにした。


「……整備されている、と言って良いのだろうか」

「そうかもしれませんね。苔や、生物がいない。何かが、管理しているのかもしれません」


 不気味なほど何もない。あるのは少しの砂と水だ。それのみが、進めど進めど俺達の目の飛び込んでくる。暫くして、ようやく俺たちは生物を発見することが出来た。


「……タコか」


 それは、あまりにも巨大なタコであった。足の節々には鋭いトゲのようなものがついていることが確認できる。やはり、見た目はタコに近くあれ、あれも魔物なのだろう。


「如何が致しましょうか?」

「相手にする、と言いたいところだが。今回は別の目標があるからな。出来ればそちらを優先したい」

「承知。であれば、私の魔法で気配を消しましょう」


 ミズキの言葉で、鎧が透明になっていく。自分の腕を見てもわからないほど、俺達は水と同化していた。そして、魔力を抑えることで気配を断つ。俺達は、ゆっくりと水の流れに合わせて動き。そのタコを通り過ぎていった。


「通路をまるごと塞いでいなくて助かったな」

「そうですね。しかし、この通路は遥かに大きい。その大きさの魔物がいると思ったほうがよろしいかと」

「考えたくもないが、そうするよ」


 さらに、俺達は通路を進んでいく。時に魔力の流れを探って、どちらに魔力が抜けているのかを調べてその流れに合わせて進んだ。


「おっと……」


 一際、広い空間へと出る。そこは、先程までの空洞よりも明るく水が光っていた。その中を、無数の魚のような物体が泳いでいる。だが、どれも見た限り普通ではなく大きかった。顔つきも全てが攻撃的であり、近づけばろくな事にならないのだろうということ予感させる。


「……」


 その中で、小さな魚が泳いでいるのを見つけた。いや、小さくはない。人と同じくらいの大きさだ。彼らは魚の顔をしていて人に近い体型をしている。だが、その身体は鱗で覆われており、とても人には見えない。


「あれが、魚人か」


 彼らは、何処かの岩陰へと消えるように泳いでいくと、それと同時に別の魚人達が泳いできた。そして、彼らは周囲を泳ぎ回ると同じようにして別の魚人と入れ替わっていく。


「警備、と言うところでしょうか」

「魔物が警備をしているのか。やはり、知能があるみたいだな」

「そうですね。他の古代神魔級迷宮同様、知能が高い魔物がいるようです」

「アリーの読みは、当たりのようだ」

「ええ、さすがです」


 俺達は、一旦魚人を見るのをやめて辺りを見回す。だが、そこに黄金の魚の姿は見えなかった。


「奥に行くしかないのか」

「そうですね」


 俺達は、また怪しまれないように水の流れに溶け込みながら魔物の群れの中を泳いでいった。目に見えていた魔物たちをやり過ごし、魚人達が消えていった奥地へと進む。すると、一気に地面が下がり、更に下に巨大な空間が広がっていた。


「こんなものが……」


 ゆっくりと、俺達は潜行を開始する。下に降りるに連れ、巨大魚、魚人をいくつも見た。どうやら、かなりの数がいるらしい。しかし、これは相当深いな。まだ、奥が見えない。


「……なんだ、あれは」


 それは、黒い貝の固まりのようにも思えた。だが、それは何かの城のようにも見える。外壁に黒い貝が縦横無尽に張り付いてできた禍々しい貝の城だ。その大きさも、普通ではない。下手すれば、人間の都市がそのまま入る大きさはあるのではないだろうか。


「どうやら、魚人はあそこから出てくるようです」

「水温が、ここは冷たいな……」

「そうですね。先程の空洞地帯に比べてここは寒い。まるで真冬の水の中のような気温です」

「この辺りには、他に魔物はいないのだろうか」

「探ってみましょう」


 ぱっと見た限り、周囲に巨大魚の姿はない。俺は、意識を集中させて周りの気配を探った。



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