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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・五部 暴流神忍 ミズキ編
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2つの方法

「はぁ……」


 アリーがため息をついている。顔をしかめて、片腕で髪をかきあげた。


「どうするんだ、アリー?」

「そうね。流石に国の姫に面と向かって恩を売りました、って事はしたくないんだけど……」

「やるしかないんじゃない、アリーちゃん?」

「そうね。ヒイラの言う通り。ただ、やり方って物があるでしょう?そこよね」

「複数選択肢があると?」

「ええ、そう。ベイの言う通り。やり方は2つある」


 アリーが、指をパチンと弾く。すると、空中に光の映像が現れた。


「一つはこっち。前に先祖がやったやり方。魔物の素材を使って、身体を蝕んでいる魔力を相殺する方法」

「魔物の素材で?」

「そう。確か、魔力を蓄える魚みたいな奴。金色で、切り分けてもその身体自体が魔力を放っている。その魚自体は戦闘を行わず、魔物たちの回復のみをする面白い習性を持ってるんだって。まぁ、実際に見たことないから知らないけど」

「というか、相殺とか出来るの?別の魔物なのに?」

「そうね。同じ迷宮の魔物だといけるのかもしれないわ。もしくは分身体とか、分裂した別物とか。ほら、そういう奴ら居たじゃない」

「確かに、居たな」

「そういうのかも。で」


 アリーが、空中に映し出していた魚の映像を消す。そして、俺を見てきた。


「一番、手っ取り早いやつ」

「お、おう」

「アリーちゃん、私、分かったよ……」

「これ、最後の手段ね」

「アリーさん、一番簡単なのに、最後の手段とはどういうことですか?」


 サラサがアリーに尋ねる。サラサは、レムとミズキが刻んだ薪を、レラとレノンとサラと一緒に紐で纏めながら話を聞いていた。ロデも、話を聞きながら出来た薪の束を数えている。国の一大事を知っても、しっかり仕事はしているようだ。


「そうね。まぁ、こっちの方法だとメリットがないっていうか。最悪、国を壊しても良いいかも、みたいな?」

「それは、穏やかじゃないですね」

「で、結局それって、ベイ君に体内の魔力を相殺してもらえばいいってことなんだよね」

「正解」

「俺か。まぁ、出来るとは思うけど……」

「ダメダメダメダメ!!」


 俺の言葉に、ロデがそう言いながら寄ってくる。ついでに、遅れてロザリオも着いてきた。


「何故だ、ロデ先輩。私は良いと思うが?」

「サラサちゃん、少しは考えなよ。命の恩人だよ。国の姫様の。ろくなことにならないって」

「……そうか?」

「そうだよ!!国に召し抱えられコース直行だよ!!ベイ君は、うちの稼ぎ頭になるんだから。そんなお金にならないことさせられません!!」

「え、宮仕えの給料って、そんなに安いんですか?」

「いや、人にもよるけどね。圧倒的にベイ君を雇うには安い!!国の給料なんて、ちょっと神魔級の魔物の素材さえ売れば5年分は一気に稼げちゃう!!そんなの、やる価値ないでしょ」

「ああ~、確かに」


 今の俺達なら、神魔級の素材ぐらい幾らでも取ってこれるからな。それなら、魔物狩りしてたほうがマシだ。


「しかも、主に売り先は国。どうせ同じところからお金貰うなら、こっちが楽して儲かる方を取らなきゃ

。宮仕えなんて無駄無駄無駄。あ、アリーさんも、ヒイラさんも、サラサちゃんもうちで雇うから。就職活動なんてしなくていいですよ。しかも、好きな時にちょこっと働くだけでOK。それぐらい儲かる算段です。人生バラ色だね!!」

「……うん。こちらが素材流通の手綱を完璧に取っていれば、もう勝ったも同然だからね。問題ないと思います、ベイ様」

「そうか。2人がそう言うなら、直接恩を売りに行くのはやめたほうが良さそうだな」

「そうね。私も賛成だわ。ロデと同じ意見ていうのが嫌だけど」

「いや、良いじゃないアリーさん。それぐらい」

「まぁ、せっかく家を作ってるんですもの。サイフェルム崩壊計画を進めるのも面倒だし、魔物狩りをする方向で行きましょう」


 何? サイフェルム崩壊計画って。いや、何かアリーが手に魔法で本みたいなもの出したんだけど。背表紙にサイフェルム崩壊計画って書いてあるんだけど。やばいんじゃないの? 既に立案済みなの?


「アリーちゃん、何、その本?」

「何ってレラ。見たまんまよ。見たまんま」

「ちょっと、見せてもらっても良いかな?」

「良いわよ」

「……」


 レラも、薪を束ねていた手を止めてアリーから本を受け取る。数ページ目を通すと、明らかに動揺しているのが見て取れた。


「これ、意外としっかりした内容だね……」

「そうね。無血崩壊って結構難しいのよ。だから、一応今のうちに練っておかないと」

「これさ、見つかったらやばいんじゃない?」

「ああ~、見つからないわよ。私の魔法で出来てるから。私が魔力を込めるのをやめると、証拠も残らない」


 レラの手から、スッと本が消えていく。確かに、あれでは証拠は残らないだろうなぁ。いや、やっぱ立案されてたんだ。サイフェルム崩壊計画。


「さて、方針は決まったわね」

「素材を取りに行く。ということですね」

「そうよミズキ。目指すは水属性神魔級迷宮、金の海!!」

「確か、前に行ったとこだよな」

「そうね。そこに、黄金の魚が居たという話よ。そして、恐らく私達が探しているものもそこにある」

「今まで、隠れていた古代の神魔級迷宮か?」

「ええ、そう。ここ数年、王家で石化発症者は居なかった。それが、急に発症したということわ」

「出てきていると?」

「まぁ、そうでしょうね。そして、それは恐らく神魔級迷宮の中にある」

「神魔級迷宮の中に、神魔級迷宮があるってことか?」

「そういう事。初めてのパターンね」


 アリーの言葉に、ミズキが僅かに顔を伏せる。そして、水の手裏剣を腕に出現させた。それを、ミズキは残っている大木目掛けて放つ。手裏剣が木に当たると、その大木が縦に裂けた。


「では、行くとしましょうか殿」

「やる気あるなぁ、ミズキ」

「皆、ここまで大きな力を得てきました。今度は私の番です。であれば、自然と気合が入るというもの」

「はいはい。やる気はあるみたいだけど、今日は無しね」


 アリーが、ミズキに向かって手を叩きながらそう言った。


「むっ」

「ほら、今日は大事な家造りじゃない。やるにしても明日から。良いわね?」

「あ、そうですね。分かりました」

「よし。じゃあ、再開しましょうか。意外と一日待てばお祖父様がなんとかしてくれるかもしれないし」

「そうですね。私たちは、私達のやりたいことを今はするとしますか」

「しかし、既にだいぶ土地は開けたんじゃないか?」

「何言ってるんですか、ご主人様。ここから基礎を私の魔法で作って、外壁や床も私の魔法で作って」

「私が外観を整えれば完成です」

「うんうん。完璧な建築計画ね」

「……え、建てるの。今日?」

「そりゃあ、そうですよ」

「小物類が足りないので、建てるだけになりますが」

「ベッド移動すれば、すぐに住めるわね。いっそそうする?」

「おお、良いですねぇ~」

「では、急いで作るとしますか」

「……」


 その日、本当に実家の周辺に、似つかわしくないほどの豪邸が建った。



 




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