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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・四部 炎羅神猿 カヤ編
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双火

「炎は全てを焼き尽くす!!こんな世界、私の炎で燃やし尽くしてやろう!!!!」


 空間が燃えていく。空間内部から青い炎が溢れ出し、外へと流れて行った。炎は壁を燃やし尽くして、辺りを本来ある姿へと変える。


「……どうだ?」


 地面は、足をシリルが着いた地点だけ燃えている。そして、シリルが遠くへ向かって炎を投げると、今度は炎が消えることは無かった。



「……」


 辺りを見回す。風が吹いている。それは穏やかではなく、強い風だ。先程までとは違う。


「違いはする。だがな」


 シリルは、再度炎を全体に向かって放出した。


「他の生命の息遣いを感じない!!」

「ああ、それかぁ~。そう言えばそうだね」

「ここには、貴様と私しかいないからな!!」

「まぁ、そうだよね。あたしのは分からないよね」


 また、シリルは炎を広げていく。今度は果についた感覚があっても、炎を放出するのをやめない。だが、数秒してシリルは、炎を出すのをやめた。


「果てが、ないのか?」

「ああ、そこまで分かる?」

「貴様に殴られた時、私は同じ場所にいた。まさか、空間の果と、果が繋がっているのか」

「そう、この空間は、端が別のとこに繋がっている。端まで行けば、特定の位置に戻されるわけ」

「焼き切ることが出来ないのか?」

「いや、ちょっとは効いてるよ。ただね、魔法で作ったとは言え、ここもあるべき世界だからさ。完全に魔法って言うと怪しいんだけど」

「?」


 カヤが言わんとしていることが、シリルには理解できない。ただ、闇雲に脱出しようとしても無理なことは理解できた。


「やはり、貴様を倒すしかないか」

「そう。……さっきからさ、ほんと心が穏やかなんだよ。でもね、そこに違和感を感じてるあたしが居るわけさ。こんなのあたしじゃないって。望んでた強さだけど、あたしらしくないって」


 カヤの口調が、穏やかなものから、いつもの調子に戻っていく。


「だからさ、そろそろあたしらしく行くよ」

「……ああ、来い!!」


 再び、シリルの前にカヤが姿を現す。そして、その赤々と燃える髪が、一気にざわつき始めた。空間が晴れ、草木は消え、風はやみ。辺りは黒一色の空間へと変わっていく。それは円形の空間。その中で、カヤとシリルは黄色の鉄の床の上に立っている。視界は開けている。ただ、太陽は見えない。何故明るいのかもわからない。ただ、お互いがお互いの魔力を高め、自分の武器に最大限の力を乗せて構える。2人は、どちらからともなく動き、そして空間の中央でぶつかった。


「……」


 それは、2つの炎の波だ。一つは荒波のような青い炎の波。その一撃一撃をカヤは躱し、丁寧に避けている。そしてもう一つは、穏やかに揺り返す波のような赤い炎。だが、その炎は次第に揺り返しを強め、荒れ狂っていく。その激しさを増す棒突きを、シリルも全て丁寧にガードし、受け流していた。


「やはり、動きでは私に分がある」

「そうみたい」


 カヤの動きは、洗礼されている。その一撃一撃に無駄がない。だが、単純にシリルのほうがポテンシャルが上だ。以下に無駄のない動きをしようとも、シリルはそれを既の所で見切り、受け流してしまう。これでは、カヤには決定打を撃つことが出来ないだろう。それは、勝ち筋がないということでもある。


「だが、私の攻撃も当たらないか……」


 そう。カヤは、シリル動き全てを見切っている。これも、シリルはカヤにとって決定打が放てないという証だった。つまり、2人はお互いにどちらにも決定打が撃てない状態である。


「なら」

「決着をつける方法は、ただ一つ」


 互いに、2人は一歩飛び退く。シリルは右の拳一つに、カヤは棒先に魔力を集中させ始めた。


「良いのか?先程までの力を使えば、私を圧倒できるかもしれんぞ」

「そうかもね。でも、あんたとは、そんな勝負したくないから!!」


 まるで示し合わせたかのように、2人は体勢を低くすると、最大級の力を入れて地面を蹴り飛んだ。ポテンシャル、つまり純粋な威力という時点では、シリルが勝っている。この攻撃で、単純にぶつかるだけでは、カヤには勝機はないだろう。


「はぁあああああああ!!!!」

「でぁあああああああ!!!!」


 2つの炎がぶつかる。その瞬間、お互いの炎がお互いを燃やしあい、相殺しあっていった。2人の距離が近づくに連れて、炎は消えていく。そして、お互いの武器が直接ぶつかりあい、カヤの棒が先端から粉々に砕け始めた。それは押しつぶされたとでも言うべきか。シリルの拳が、カヤの棒を粉砕しつつ突き進む。そして、シリルの拳がカヤの棒を完全に破壊しきろうとしたその瞬間。


「……」


 カヤの棒が、回転を始めた。あえて遅れて回転を加えたことで、カヤは突き進んできていたシリルの拳の軌道をそらした。そして、カヤの中腹まで粉々に砕かれた棒が、シリル目掛けて伸びていく。そして、カヤの棒が深々と、シリルの腹へとめり込んだ。


「……カハッ!!」


 シリルは、そのまま後ろに倒れていく。そして、遠ざかる意識の中、シリルは見た。この床の上に、何かが居るのを。


「……」


 それは鎧だ。カヤと同じ顔をした鎧。それを見て、シリルは朧気に理解した。この床は、巨大なカヤの手の平の上だったということを。



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