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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・四部 炎羅神猿 カヤ編
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火の写し身

 その2体は、辺りを溶かしていく。睨み合っているだけで、ただ立っているだけで、足元にマグマが広がり、自然を消していく。だが、どちらもそのマグマの海に沈むことがない。足元に魔法を張り、一瞬もバランスを崩すこと無く、両者は身構えている。やがて、お互いの足元から広がっていったマグマが合体し、2つのマグマの円が繋がった瞬間、両者は動いた。


「うぉぉおおおおおおお!!!!」


 山をも動かすかのような雄叫びを響かせ、シリルはマグマを蹴る。それは、先程までとは比べ物にならないほどの速さと、熱量を増した跳躍。唯の人ならば、今の彼女に接近されただけで、焼け死ぬだろう。


「ふっ!!」


 片や、カヤはそのシリルの突進を、軽く棒で受け流した。シリルが力の炎神であるとすれば、カヤは技の炎神と言えるだろう。その技術に、揺らぎはない。


「くっ!!」


 カヤに受け流され、勢いを殺しきれず飛んでいったシリルは、なんと、別の山を踏み抜いて反転してきた。その踏み抜いた一撃で、山の中心部が円状に溶け、大量のマグマとなって飛び散り辺りを燃やす。


「がぁああああ!!!!」


 シリルの動きは、先程までと比べて何処か粗野になっていた。まるで獣のようだ。だが、それは先程までのどの一撃よりも確実に速く、そして重い。今度はただのパンチだ。それを、カヤが受け流す。だが、その受け流した衝撃で、後ろにあった山が溶けて消えた。


「ひゅ~、半端ない熱量!!」

「そうだろう。私自身さえも、おかしくなりそうだ。こんなに気持ちが高ぶりっぱなしなのは、初めてだぁぁ!!!!」

「ああ~、暑いとテンション上がるよね。分かる」


 軽口を叩きながらも、カヤはシリルの攻撃を受け流していく。そう言う特性が、カヤ達にはあるのだろうか? しかし、カヤが受け流しただけで、辺り一面が火の海になっていく。これは、酷いな。


「ああ、良い~。辺りが、青い炎で満ちていく……」


 シリルが、青い炎を眺めながら息を吸い込む。すると、そこらじゅうに散らばっていた青い炎が、シリルに吸い込まれていった。そして、シリルの炎の強さが増す。


「ああ、そういう……」

「燃やした数だけ火力を増し、強くなる!!それが、炎だ!!!!」

「ちっ」

 

 更に、シリルの攻撃力、スピードが増した。攻撃も粗野だった物が研ぎ澄まされていき、カヤを苦しめる。しかも、それが8本の腕の分襲ってくるのだ。そりゃあ、辛いに決まっている。


「この力、慣れてきたぞ!!!!」

「……みたいね」


 ついに、シリルの一撃が、カヤの受け流し速度を超えた。カヤは、それでも慌てて防御する。その御蔭で、少し吹っ飛ばされるくらいで今回は耐えることが出来た。


「ハハハッ!!どうした!!その程度か!!!!」

「いやいやいや、強い強い。それじゃあ、こちらも慣らさせてもらうとしますか!!」


 そう言った直後、カヤの髪から何かが分離する。それは、カヤの鎧と瓜二つのもう一体の鎧だった。それが、一体だけではない。7体出てきた。それらは、まるで別々の意思があるかのように移動し、シリルを見つめている。


「なんだ、また蜃気楼か?」

「さて、どうかな?」


 カヤが、とぼけてそう言う。すると、増えたうちの一体が、シリル目掛けて突っ込んだ。


「ふっ!!」


 これを、シリルはあえなく撃破する。その拳の一撃で、その一体の腹を貫いた。すると、腹を貫かれた分身は、炎となって消える。


「……」

「こんな感じか。OK、それじゃあ行こう」


 その言葉を合図に、残っていた分身体が、カヤの動きと同じ動きをしてその場で構える。その動作に、わずかのブレもない。


「調整完了。それじゃあ、受けてみよ!!」


 シリル目掛けて、7体の鎧が突っ込んだ。シリルは、先に立っていたカヤ。つまりオリジナルだと思われるものに狙いを合わせて突っ込み、攻撃する。そしてシリルの攻撃は、そのカヤの腹を易易と貫いた。だが次の瞬間、そのカヤの姿は、炎となって消える。


「残念、外れ!!」

「ぐっ!!」


 残った分身たちが、シリル目掛けてそれぞれの攻撃を叩き込む。シリルは、8本の腕でそれらを受けたものの、その威力に苦悶の声を上げた。シリルは、カヤたちから飛び退く。そして、その間にカヤは、また鎧の髪から別の分身を生み出した。


「どれが本物でしょうか?」

「……」


 シリルは、それぞれのカヤを見比べている。だが、見た目的には何の違いもない。


「はい、時間切れ!!」


 合計で8体になったカヤが、再度シリル目掛けて突っ込んだ。それは、棒を使った連携による息もつかせぬ連撃。それに対して、シリルは大きく移動し、避けて逃げ回る。そうしないと、カヤ達に囲まれて袋叩きにされるからだ。だが、徐々にカヤ達がシリルを追い詰めていく。それは、一糸乱れぬ連携をしているからだろう。徐々にシリルは逃げ場を失い、ついにはカヤたちに囲まれた。


「じゃあ、一撃受けてもらおうかな」

「お断りする」

「あっそ。じゃあ、八連撃だ!!」


 シリルを囲んだカヤ達は、シリル目掛けて棒突きを叩き込む!!それは、回転を加えた強力な一撃。その8体の攻撃を、シリルは8本の腕で防いだ。


「ぐっ、ぐうう!!」

「ギブアップかな?」


 シリルに、カヤがそういう。だが、シリルはニヤリと笑った。


「いや、貴様がそうやって油断するのを待っていた!!!!」

「!?」


 瞬間、シリルが青い炎を全身から打ち出し、辺りに向かって解き放つ。それに対して、攻撃をしているカヤ達は、反応が一瞬遅れた。


「くっ!!」


 7体の分身体が、その場で消える。カヤ自身は、上空に飛び上がることで、その炎を避けた。


「貴様が、本物だー!!!!」

「はははっ、当たり!!」


 上空に居るカヤ目掛けて、シリルは飛んだ。片腕に青い炎を貯めて、シリルはカヤに迫る。カヤは、それに対して棒に赤い炎を貯めて迎撃の構えを取った。そして、足から炎を噴き出して落下し、シリルへと迫っていく。


「受けてみろぉぉおおおおおお!!!!」

「かかってこいや~!!!!」


 2つの炎が、空中で激突した。それは閃光を放って周囲を焼き尽くしていく。その熱量だけで、辺り一面が真っ黒な大地へと変わった。2人は、お互いにお互いの攻撃を弾きあい、地面に着地する。


「……」

「……」


 もう、周囲は数時間前の景色とは一変していた。その辺りは焼けただれ、マグマの池が点在し、水の池は蒸発している。まさに、地獄と呼ぶに相応しい地となっていた。


「……何故、そんなに余裕でいられる」


 不意に、シリルがそう言った。辺りの景色を見て、カヤの動きを観察して、シリルは問いかける。その質問に、カヤは鎧の下でニヤッと笑った。




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