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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・四部 炎羅神猿 カヤ編
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炎羅神猿、カヤ・アルフェルト

「えっと、神様と言っても色々あるんですが?」


 確かに、ミルクの言う通りだ。全知全能から、八百万でくくられる神様も居る。神といっても、どのへんのことをカヤはさして言っているのだろうか。ちなみにだが、最近サイフェルムでは、カザネも平和の象徴的な扱いを受けていて神様に近い扱いを一部ではされているという。


「えっとねぇ~。あたしは、主様を導いてあげたい。どんな障害があっても、どんな予測が難しい未来でも、あたしは主様を導いてあげたいんだ。皆で平和に暮らす、その未来に」

「えっと、取り敢えず戦闘力が高いってことでいいんですかね?」

「それだけじゃ駄目な気がするなぁ。なんて言ったら良いんだろう。取り敢えず簡単に言うと、あたしが今より強くなって、その、色々出来るみたいな?」

「いや、よく分からないです」

「だよねぇ~。ああ、でも何となくあたしは分かったよ。心構えは出来た!!」


 カヤは、そう言うと棒を引き抜いてジャンプする。そして、力強く棒を振り、空中に広がる炎の空を吹き飛ばした。


「あ、ちょっとカヤ!!」

「俺達も行こう!!」


 炎の空が閉じてしまう前に、俺達も魔法でジャンプする。そして、俺達は山の山頂に着地した。


「無粋な連中だ……」


 その声に山の下を見ると、シリルが何かを見ていた。その視線の先を見る。あれは、戦車か? 戦車のような箱型の物体が、大群をなしてこの山に迫ってきている。そう言えば、今はこの山が燃えていないんだな。だから近づけるのか。


「撃てええええ!!」


 戦車から、何かの魔法が放たれた。あれは見たことがある。この山に配置されていた、巨大な大砲の魔法の、縮小版のようなレーザーだ。 それがシリル目掛けて放たれる。それはシリルの青い炎によって、シリルに激突すること無く消えた。だが、戦車達が近づくに連れて、その砲撃は数を増していく。すぐに雨のような魔法の砲撃が、この場所に降ってくることになった。だが、その魔法が俺たちにも届くことはない。全て、シリルが魔法を焼き払っているのだ。だが、一応いつでも防御できる体勢ではいよう。


「小賢しい」


 シリルが、8本の腕で戦車に狙いをつける。すると、戦車の車輪部分と大砲部分だけが青い炎によって燃やされた。恐らく、中の人達は無事だろう。それをシリルは休みなく続けていく。あっという間に、魔法戦車達は、その場で何も出来なくなった。


「やはり、効果は認められません」

「移動する砲台なら、破壊されるまでに時間を稼げると思ったが、無意味だったか」

「魔砲車に搭載した魔法結界も通用していないようです」

「被害状況は?」

「確認していますが、死人は0のようですね。駆動部と、大砲部分をやられたようです」

「……わざとか。わざと外されたのか?」

「その、ようですね」

「やつには、我々は殺し合いをするほどの脅威になりえる相手ではないということか」


 戦車から、わらわらと人が出ては逃げていく。なんというか、可哀想だ。


「邪魔が入ったな。さぁ、始めよう」


 シリルは、カヤを見据えて構える。その体に青い炎を纏い、最初から全力でカヤを迎え撃つ気のようだ。


「……すぅ~、はぁ~」


 カヤは、深呼吸をする。その後、棒を軽く手首の力で回転させて振り回すと、シリルに歩み寄った。


「あんたさ、やっぱ悪いやつじゃないじゃん。いや、食べ物を奪ったのは良くないけどさ。人をボコボコにしたり」

「我々にも、目的があるのでな。だが、その目的のために彼らの命まで取ろうとは思わない。私達は、消える同胞を何人も見てきた。それが自分だとしても、何かが消えるということは、もう取り返しの付かないことだ。それは、人間とて同じことだろう。悲しく、時には利益になることもあるだろうが、進んでやろうとは思わないはずだ。だから、食料をいただくことで、彼らに私達のお願いを聞いてもらうことにした。これが一番早いからな」

「何か、急いでるってこと?」

「知らないのか?この星には災いが存在している。それは、今の私達ですら敵うか怪しい相手だ。それは自然を凌駕し、生命を踏みにじる。それに対抗するには、私達には新たな力が必要なのだ。それを成すには、自分を超えた何かを生み出すより他にない」

「どうかな~。鍛えたら、なんとかなるんじゃないの?」

「いや、私達には、自分の限界が見えた。お互いが、お互いを見つめ合い、知っているからだろう。だが、時間があればそれは、予想もつかないほど上に行けるはずの力だ。時間があれば、だが……」

「時間が、ないっていうの」

「聞こえる。いずれの化物の物かは分からないが、その脈動が。それは、恐らくあの檻の端に肌をくっつけているのだろう。聞こえるんだ。僅かだが、この星をも壊すような脈動が」

「……」


 シリルは遠くを眺めている。それは、創生級迷宮の方角だっただろう。俺たちには聞こえないが、シリルには、それが聞こえているようだ。


「お前は凄い。だが、それすらもちっぽけな力だ。だが、今の私達は、それぐらいの相手と戦うことで成長することが出来る。まだ、立ち止まらずに前にすすめるのだ。だから、お前には悪いがここで沈んでもらう。なに、命までは取らない。だが、そこの男を渡してもらうぞ。世界を、いや、私達が生き残るために必要だからな」


 そう言うと、シリルは再び構えた。


「それは無理。だって、世界を救うのはあたし達だから。あんたじゃない」


 カヤは、自分が持っていた棒を消す。そして、虚空に腕を伸ばし、何かを握り込む動作をした。


「アルティ」

「はい、カヤさん」


 アルティが輝き、俺達を内包してカヤの腕に飛んでいく。形状を変化させ、アルティはカヤの腕に収まった。それは魔力の輝きを放つ棒。その棒を振り回すと、カヤはシリル目掛けて構えた。


「なんだ、それは?」

「言ったでしょ、あんた達も一体化出来るのかって」

「まさか!!」


 アルティから、赤い炎が噴出される。それをカヤを包み込み、巨大な一個の大きな火となった。その中から、何かの腕が出てくる。それは、鋭い爪のように見えた。まるで獣。しかし、その形は人のものだ。人の形を保ちつつ、まるで神のように荒々しい姿をした鎧が、その場に姿を表した。カヤは、そのまま棒を振り回し周りの火の粉を払う。


「さて、試させてもらおうかな。あたしの想像した、あたしの力を。この星を救う主様の妻、その一人。炎羅神猿、カヤ・アルフェルト!!安心させてあげる。あんた達が強くならなくても、あたし達がなんとかするんだって!!」


 カヤは、新たな棒を出現させて握る。シリルという強者を前に、カヤは怯むこと無く仁王立ちして相手を見ていた。



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