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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・四部 炎羅神猿 カヤ編
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八本腕の炎姫

 火がこちらにまで迫ってくる。その火を、レムが魔力の壁を張って防いでくれた。シリルのお仲間たちは、この程度ならなんでもないと言わんばかりに、火を気にせずリーダーを応援している。足元が燃えているのに、全く気にする様子がない。まぁ、青い炎の中に居ても平気な身体みたいだから、このぐらいでは問題ないんだろう。どういう原理かは、分からないが。


「……」


 一呼吸分くらいの睨み合い。その後、先に動いたのはカヤだった。一歩踏み抜いて前に前進するのかと思いきや、カヤは空高くジャンプした。足から火の魔力を放出して空中を蹴り、どんどんカヤは空に上っていく。そして、一定距離に達すると、カヤは足に魔力を貯めて反転。地上目掛けて貯めに貯めた魔力を放出し、空中を蹴り抜いた!!


「ふっ!!」


 空に大きな爆炎の雲が出現する。それはあまりの爆発力に閃光を放ち、金色の雲のように見えた。金色の雲を蹴り、カヤは地上へと加速する。地上で待ち構えている、シリル目掛けて。


「面白い……」


 シリルは、腕に更に青い炎を纏わせて空中に腕を上げた。どうやら、受け止めるつもりのようだ。その動作の間にも、カヤは全身から魔力を放って加速しながら落下してきている。更に棒をシリル目掛けてカヤは突き出し、身体を捻らせて回転し始めた。今のカヤは、カヤそのものが一つの弾丸のように見えた。赤い火の魔力の弾丸が、シリルの目掛けて直進する。


「あ、駄目だこれ。皆、全員で壁を張るぞ!!」

「はい、マスター!!」


 レムの壁に、合わせて俺たちは魔力の壁を張り強固にする。


「ねぇ、私達もやったほうが良いんじゃない?」

「大丈夫でしょ、あれぐらい」

「……私は、張っておくか」

「大げさだ……なぁ!!!!」


 カヤが、シリル目掛けて直撃する。カヤの棒を、シリルは掴んで止めようとしていた。だが、その威力を完全には押し殺しきれていない。激突の衝撃で、カヤの超加速と魔力で威力を増した衝撃波が、辺りに広がった。それは地面にヒビを入れ、周りの大気を灼熱に染める。俺達は周りを魔力の壁で囲ったので、熱も衝撃も大丈夫だが、敵の彼女たちはどうだろうか。


「おっ、おおおっ!!!!」

「ちょっと、地面揺れすぎ!!」

「一人飛ばされちゃった!!!!」

「壁を張っといて、正解だった……」


  どうやら、被害は軽微なようだ。というか、この空気の中で呼吸できて、喋れてるの凄いな。


「うぉぉおおおおおお!!!!」


 掴まれている棒に、カヤは渾身の力を込めて衝撃を放った。棒も回転させて、威力を更に増す。棒全体から放たれた衝撃に、シリルは棒を掴んでいることが出来ず、一瞬離してしまった。だが、一瞬あれば今のカヤには十分だった。この状況でカヤの棒を離せば、二度と掴み直すことは出来ない。カヤの攻撃は、その一瞬でシリルの身体の半身に激突し、その体の半分を塵へと変えた。


「……ふぅ」


 地面をその威力のまま削り取り、残りの威力を受け流し切るためにカヤは、空中に何度かジャンプして回転で威力を殺してから着地する。カヤが後ろを振り向くと、身体を半分削り取られたシリルが立っていた。


「あたしの勝ち、ってことでいいのかな?」

「……」


 カヤの勝ちだろう。と、思っていた。身体が半分になってしまったシリルの表情が、ニヤッと笑うまでわ。


「ここまでの技を、まだ持っているとわな」


 シリルの身体から、青い炎が吹き出す。それは、彼女の半分の肉体を形作り、完全にその姿を再生させた。


「うげぇっ、回復魔法まで使えるの!!しかも、回復速度が早い!!」

「回復魔法か。違うな。私達の身体は、元からこの青い火だ。体を作り直した、という方が正しいだろう。お前のその武器と同じだ。私達は、そのように身体を作り直せる。私達は火だ。完全に消さない限り、何度でも燃え上がる。だから、身体を半分消し飛ばしたくらいでは、致命傷にはならんぞ」

「め、滅茶苦茶な奴ね」

「とは言っても、もう一度あれを体の中心目掛けて打たれては、本当に消えかねない。では、本気を出させてもらうとしよう」


 シリルが、彼女の仲間目掛けて手をかざす。すると、彼女の仲間たちが青い炎となって、シリルへと集まっていった。そして、その体に吸収されていく。


「やっと、一体化した」


 シリルの身体に腕が生えていく。その身体は更に強靭に膨れ上がり、その身長を増加させた。シリルの額に新たな目が出現し、辺りを見回す。その身に宿った力を示すかのように、シリルはその場で身震いすると、一瞬にして地面が青い炎の波で埋まった。


「ちょ!!魔力の壁が消えていくんですけど!!!!」

「レム、切り払え!!皆も、攻撃で払うんだ!!」

「はい!!」


 魔力の壁が消えるのと同時に、レムが辺りを切り払う。なんとか、俺達のいる部分だけは青い炎が避けていった。カヤは、棒を地面に突き刺して、その棒の上によじ登っている。そして、棒に衝撃を乗せて放ち、辺りの青い炎を消していた。


「望んだ通りの姿になったぞ。だが、生憎この姿で暴れるにはここは狭すぎる。上に着いて来てもらおう」


 両腕で胸を打ち鳴らし、大声で吠えるとシリルはジャンプする。炎の天井をくぐり抜け、どうやらシリルは地上へと出たようだ。


「……よし、あたしらも行きますか!!」

「ちょっと待ってください、カヤ!!あなた、一体化した時のイメージはあるんですか?」

「イメージ?」

「私がもっと速くなりたいと願ったように、シデンが新たな力を願ったように、ミエルさん達が力を合わせたいと願ったように、カヤさんにも、そんな強くなりたいという理想はあるんですか?」

「う~ん、なんとかなるんじゃないかって、漠然と考えてたくらいだしぃ。そこまで、具体的じゃないかな……」

「だとしたら不味いですよ。ただ、力が引き上げられただけの一体化になりかねません!!」

「せっかく属性特化一体化をするのですから、何か考えられたらいかがですか?」


 ミルクとカザネが、そうカヤに言う。というか、ここ暑いんだけど。魔力で冷やしてるのにまだ暑い。この青い炎、何度くらいあるんだ。レムがさっきから切り払っていっているけど、全然温度が下がってる気がしない。


「う~ん、そうだなぁ~」

「何かないんですか!!何か!!」

「やっぱり、あたし全身全霊で主様の為に居たいっていうか。主様のためになんでもしてあげたいって気はする。ミズキみたいに、役立ってあげたいし。ミルクみたいにお世話してあげたい。フィー姉さんみたいに癒やしてあげたいし。レムみたいに安心感を与えてあげたいなぁって。でも、あたしはあたしだし、皆みたいになれる訳が無い。あいつ、シリルみたいに皆で一人じゃないから。あたし達それぞれだから、出来ることってあると思う。だから、あたしは……」

「あたしは?」


 カヤが、目をつむって黙る。それを俺たちは、黙って見守っていた。


「神様になりたい!!!!」

「……はっ?」


 ミルクの疑問の声が、辺りに響いた。



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