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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・四部 炎羅神猿 カヤ編
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対話

 2人が向かい合う。お互いに構えない。だが、お互いから強烈な殺気が放たれていることだけは、お互いにわかっていたはずだ。構えていなくとも、二人共お互いをすぐにでも殴る心構えができている。一瞬でも相手が動けば、カヤ達は殴り合いを始めるだろう。


「……もういいからさ、こいつ捕まえてあいつ叩き出そうよ!!」

「ん?」


 そう言ってきたのは、最初にカヤに投げ飛ばされた魔物だった。どうやら、今戻ってきたらしい。


「……待て。安易な思考に走るな」

「良いじゃん!!そのほうが楽だし!!」


 そう言うと、彼女はリーダー格の女性の言葉を無視して俺に飛びかかってきた。俺は、強化魔法を纏う。さらにディレイウインドも使い、相手の魔物の片腕を手に取り、背中にまわさせてそのまま地面に押しつぶすように組み伏せた。


「いたっ!!」


組み伏せた魔物が、ジタバタと暴れる。すごい力だ。強化魔法を纏っていて組み伏せていても、振り払われそうなほど力強い。いや、正直振り払われそうだ。


「おっと、そこまでですよ」

「えっ?」


 俺を、振り払おうとしていた魔物の動きがピタリと止まる。ミルクが出てきて、相手の動きを腕力で止めたのだ。やっぱり、ミルクは凄い。


「なるほど。かなりの力ですね。ですが、流石に私とご主人様の二人がかりなら抑えられなくもない」

「……どこから出てきた」

「そうですね。言うなれば、愛する人から、と言うところでしょうか」


 ミルクがそう言う。ミルクが出てきたのを気に、他の皆も俺の回りに姿を現し始めた。


「……召喚魔法か」

「その通りです」

「あたし一人で、相手にするつもりだったのに」

「しょうがないでしょう。多勢に無勢では、こういう状況も起こりえますからね。後ろは任せて下さい、カヤ」

「……ありがとう、ミルク」


 カヤが、俺の方に向かって指を動かしている。その動きでカヤのしたいことを察した俺は、押さえつけていた魔物を逃してあげた。


「いちちっ」

「へましたな」

「増えるなんて聞いてないぞ!!」

「あいつだけでも、無理だっただろう」

「いや、振り払えた!!」

「黙れ」


 リーダー格の魔物が、先走った魔物を静かに威圧する。その威圧に、その魔物は気まずそうに黙った。


「何故、あいつを開放した?」

「あたし、勝負をしに来たの。だから、人質を取ってるとか思われたくなかったし。気兼ねなくぶつかりあいたかった。それだけ」


 カヤのその言葉に、敵の魔物は穏やかな笑みを浮かべる。そして、フィー達に視線を向けた。


「なるほど。あれ程の魔物たちを従えているとわ。当たりの中の、当たりだったらしいな」

「そりゃそうよ。あたし達の夫だもの」

「ふむ。どうだ?我々に彼を貸してはくれないだろうか?」

「……はっ?」

「それほどなら時間はかからない。3日、いや4日もあれば用は済む。それまで貸してはくれないか。そうすれば、我々は大人しくしよう」

「何言ってるの、あんた?」

「言った通りだ。我々は強い次世代の後継者がほしい。そして、そこにはその元となる男がいる。それさえ叶えば、我々が戦う理由はない」

「……はぁ~。あんたら、見積もりが甘いわよ」

「どういうことだ?」

「説明しましょう!!」


 そういうと、勢い良くミルクが話し始めた。


「第一に、我々は、ご主人様を貸し出すなどという気がない!!ご主人様を愛していない相手に、種目的でご主人様を明け渡すなど、我々に取って損失でしか無い!!」

「何も減らないではないか?」

「減るんですよ!!我々が構われる確立が!!!!」

「そ、そういうものか……」

「ご主人様はお優しいので、確かにかまってくださいますが!!人目を気になさるので、性的にが控えめ!!その機会を減らすマネは、大きな損出!!!!よって、この話は受けられない!!!!」

「そ、そうか……」

「第二に、貴方達の見積もりは甘すぎる!!4日だと!!それでは、ご主人様相手では、望んだ行為にすらたどり着けない!!」

「……まさか、種無しなのか?」

「そんなわけ無いでしょう!!バリバリですよ!!バリバリ!!そりゃあ凄い!!!!良いですか、何故出来ないかというと、貴方達が途中でへばるからです!!!!」

「?」


 ミルクの言葉に、敵魔物全員が、頭にはてなマークを浮かべていた。


「体力なら、自信が我々はあるが」

「では、行為は経験があるのですか?」

「……ある奴はいるか?」

「あるわけ無いじゃん」

「機会なかったよね」

「殴り飛ばしてばっかだった」

「……恥ずかしいので、秘密で」


 どうやら、全員経験がないらしい。と言うか、どうするかを知っているかすら怪しい。


「そんな貴方達ごときで、うちのご主人様を相手にするとか。普通のアリが一匹で、魔物に挑むようなものです!!」

「そ、それほどの力の差があるのか!?」

「当たり前です!!慣れている我々ですら、未だに意識を保っていられない!!貴方達ごときでは、一ヶ月。いや、一年挑んでも太刀打ち出来ないでしょう!!」

「な、なんという男だ!!」

「あいつ、スケベってことか?」

「性豪ということだろう」

「変わりなくない?」


 ひどい誹謗中傷を受けています。誰か助けて。


「よって長期貸出も、短期での貸出もする気がない!!それ以前に、私達がご主人様の妻!!そういうことがしたいなら、ご主人様に自ら認められなければ駄目!!それこそが当たり前でしょう!!!!」

「確かに、そうだな」


 リーダー格らしき女性は、考えている。


「やはり、戦うしか無いか」

「最初からそうしてよ」

「力を示す。それで認めさせよう」

「あんた達は敵だけど、その考えは好きよ」


 カヤと、敵のリーダーがお互いに構える。2人に、先程までの殺気はない。ただ、純粋な強者としての力のみが、2人を包んでいた。2人はお互いに笑みを浮かべると、一歩踏み出す。まるで、相手の動きがわかっていたかのように、2人はお互いの拳を同じタイミングでぶつけ合った。





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