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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・四部 炎羅神猿 カヤ編
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三度目

 次の日。俺達は再度迷宮へと来ていた。同じようにして、カヤと俺だけで。カヤは、昨日よりも足取り軽く迷宮へと進んでいく。俺も、そんなカヤを追いかけるように早足で進んでいった。また燃える迷宮の麓まで行くと、今度は魔物は出てこない。代わりに、山の麓に大きな穴が開いており、俺たちに入ってこいと迷宮自身が言っているかのようだった。


「行きます?」

「行くしか無いだろうな」

「だよね」


 俺とカヤは、そのまま足取り軽く山に開いた穴へと入っていく。俺達がその穴を進むと同時に、後ろの穴が狭まり、その入口を閉じた。穴は、すぐに光指す出口へと続いていた。その先には、緑豊かな大地が広がっている。山の中だというのに、まるで外のように自然な明るさを保っていた。空を見上げると、燃え盛るマグマの天井が広がっている。その大地に、9人の女の魔物が立っていた。その女たちは、誰もが俺たちを睨みつけている。舌なめずりしている者さえいた。正直、近づきたくない光景だ。


「恐れもせず、よく来たな」


 その彼女たちの一番後ろにいた女性が、俺達へと話しかけてきた。その女性の後ろで、他の女性達は沈黙を保っている。彼女だけ、他の女性達とは明らかに違う桁の魔力を放っていた。恐らく、この迷宮のボス格的な存在だろう。


「まぁね。この前はちょっと驚いちゃったけど、今回こそはケリを着けようと思ってさ」

「お前のことは知っている。少しは出来るようだな」

「まぁ、それなりにね~」


 そう言って、カヤは頬をかいている。敵の集団を前にしても、カヤは武器を取り出さない。全く焦りがないようだった。


「お前は、その男のなんだ?」

「妻だよ」

「なるほど。お前が既に、その強き男を手に入れているという訳か」

「手に入れるっていうか~。手に入れられちゃったというかぁ~。ほら、見ての通り主様って格好いいからさ。それに強いし、優しいし。あたしも、皆みたいにその魅力に参っちゃって……」


 カヤは、頬を染めて恥ずかしそうにしている。なんだか、俺も恥ずかしくなってきた。


「つまり、その男はお前よりも強いのか?」

「当たり前じゃない。あたしよりどころか、この星の頂点にいずれは立つんだから。そんなの、聞くだけ野暮というか」

「知りたいことは分かった。お前を倒して、その男を貰う」

「だいたい、創生級に対して恐れもせずに戦いを挑もうとしている時点で格好いいというか。そんな主様が、日増しに格好良く見えないわけが無いっていうか。今は、皆が結構強い力を手に入れてきちゃってて内心焦ってるけど、それでも皆のためにって頑張ってるところとか凄い可愛くて。毎回ぼろぼろになりながらでも、主様自身もきっちり新たな力を手に入れているところとか流石すぎて……」


 カヤが、もじもじしながら話している間に、敵は距離を詰めてきている。命令を出した女性は動かず、その後ろの女性たちがゆっくりとこちらに近づいてきていた。


「本命のアリーさんも居るのに、あたしたちへの配慮もきっちりしているっていうか」

「いつまで喋るんだ、こいつ」

「殴って良いのかな?」

「まて。下手に手を出していい相手じゃない」

「大袈裟すぎじゃないの?」

「凄いアホそうだぞ」


 そう言うと、一人が大地を蹴り、カヤへと猛スピードで飛びかかった。そのまま、カヤへとまるでロケットのようなスピードで飛び蹴りをかます。だが……。


「もう格好良すぎて、たまらなくて」

「へっ?」


 カヤは、その蹴りを瞬時に見切って敵の足首を握り、そのままその速度を維持したまま放り投げた。その間も、カヤは喋り続けている。敵は、その速度のまま飛んでいき、山の外壁にぶつかった。


「マジかよ」

「まずは、あのうるさい口を黙らせる」


 次に、二体の魔物が走ってきて両側からカヤを挟み込むように移動すると、片方がカヤの顔を、もう片方が、回し蹴りでカヤの足を狙おうとした。だが、カヤは最小限の動きでその攻撃を両方躱す。勿論、喋るのを止めない。


「最初に会った時は、普通と何処か違うと思ってたけど……」


 喋りながら、敵の放つ二撃目に合わせて、カヤは己の腕と足を動かした。カヤの胴狙いに合わせられた蹴り。顎狙いに合わせられた拳を、カヤは手のひらと足裏で受け止める。そしてそのまま、的に接した部分から衝撃波を出して、2体の魔物を吹き飛ばした。


「ごわあああ!!」

「嘘だろ!!」

「やっぱ、運命ってあるんだなって」


 受け身を取る魔物を、カヤは見もしない。代わりに、まだカヤは喋り続けている。


「……昨日あった時と、まるで別人のようだ」

「この短時間で、腕を上げたのか?」


 今度は、昨日手合わせした二人が出てきた。この2人は、一人ずつ挑んでくるらしい。冷静そうな方が、距離を詰めてカヤを殴ろうとする。しかし、カヤはこの攻撃を受け流して避けた。


「やっぱり、最大の魅力は何と言っても!!」

「こっちを見ろ!!失礼だぞ!!」

「あたしから、主様を奪うとか言った連中が、何を言ってるの?……殺す」


 さっきまで和やかな空気を発していたカヤから、一気に殺気が放たれた。だが、相手は怯むこと無く拳のラッシュをカヤへと叩き込む。あまりにも早いその拳の乱打を、カヤは冷ややかな目で捌いていた。お互いに、その場から一歩も動かない攻防が続く。だが、カヤは目を一瞬見開くと、敵の拳を手のひらで受け止めた。そのまま、敵はカヤを殴り飛ばそうとする。だが、拳が動かない。


「なんだ。力が、入らな……」

「殺す」


 まるで、徐々に力を奪われているかのように、敵はカヤの手の平に抑え込まれていった。ただの手の平に拳を抑えられているだけで、相手はその場の地面に膝をつき、そのまま押しつぶされそうになっている。これは、どういうことだ?


「下がらせろ」

「う、うん」


 もう一人の魔物が、カヤから魔物を引き剥がした。カヤは、特に追うこともなくその光景を黙ってみている。ただし、目は笑っていない。


「力が出きる前に、相殺したか」

「分かるんだ。そうね、身体を動かすのにも力がいる。それを、あたしの衝撃で打ち消してやればいい。それだけで、相手は何も出来なくなる。面白いでしょ?」


 今度は、カヤが相手へと近づいていく。ゆっくりと、自分の存在を示すように。そのカヤに歩み寄るように、敵のボスらしき女性がカヤに歩み寄ってきた。




 



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