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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・四部 炎羅神猿 カヤ編
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戦ってみて

「帰ってきました」

「今日は早いわね。おかえりなさい、ベイ。皆」

「ただいま、アリーさん」


 俺は、家に帰ってきたので皆を召喚する。


「……地形が変わっていましたね」

「あれ、あの山に入れるのか?」

「もしかするとだが、さっきの地割れは、中に導こうとしていたのでは無いだろうか?」

「ああ~、なるほど。つまりミズキは、あいつらがご主人様を迷宮に監禁プレイするつもりだったと言いたい訳ですね」

「プレイとか言わないでくれ、ミルク……」

「いや、あながち間違っていないかと。ただ、本当に奴らの目的がそうならばですが」

「えぇ~」


 まぁ、プレイかどうかはともかく、迷宮内に閉じ込めようとしていたって発想はやばいな。今までになかった状況だ。いや、初めて一体化した状況に近いか。でも、今回は神魔級だしな。それも、恐らく創生級になる敵だ。ヤバさが違う。


「と言っても、さっきのを見た感じ地底は、土の塊ですね。でしたら、脱出は容易でしょう。というか、転移ありますし」

「いや、それは考えが甘いぞミルク。あの青い炎を、地底部分だけ一時的に消した状態だったかもしれない」

「ああ~、そういう可能性もありますか。あの炎が魔法を打ち消すなら、転移も無理になるかもしれないですね」

「そういう事だ」

「本当に監禁できてしまうとは、恐ろしい迷宮です」

「うう~ん、でも、こっちから行かなきゃならないんだろうなぁ」

「ですよねぇ~」

「やっぱり?」

「そりゃあ、カヤがまだ本命と戦って一体化していませんからね」

「もうカヤは、通常個体には対応できるようだ。なら、後は乗り込むだけか」


 カヤは、その言葉に何か考えるように頭を捻っている。


「ねぇ、もうちょっと修行していい?」

「それは構わないけど、どうしたんだカヤ。あんなに嫌がっていたのに」

「主様、あたし分かった。あいつら、かなり出来るわ」

「それほどか」

「うん。あいつ、突っ込んで来なくなったけど、その前から、あたしの挙動に動きを合わせて対応しようとしていた。掴まれる前に、早く拳を引っ込めようとしていた。対応力が高い」

「戦いの中で、戦闘スタイルを変えていくということか」

「ああいう相手は、長引くと辛くなると思う。だから、何かもう一手欲しい」

「何か、か」

「あてはあるのか、カヤ?」

「ある。後は、出来るかどうかだけ」


 カヤは、腕を軽く振り回して準備運動を始めている。どうやら、今からやる気のようだ。なら、俺達が手伝うのは当たり前だろう。


「よし、試しに行くか!!」

「はい、主様!!」

「また行くの?行ってらっしゃい、ベイ」

「行ってくるよ、アリー」


 俺達は、すぐさま転移して、またミエルの故郷の迷宮へと行くことにした。


「さて、ちょっとまってね」


 カヤが、着いた途端近場にあった岩に手を乗せる。そして、体の内側から発生させた衝撃で、その岩を破壊した。


「これくらいなら楽勝」

「じゃあ、これならどうです」


 ミルクが、土魔法で岩を作った。岩なんだろうけど岩というより、卵のようにツルツル過ぎて岩っぽくない。磨き上げた泥団子みたいな表面をしている。大きさは結構あるから、そこは岩っぽいな。


「どれどれ」


 それに、カヤが同じようにして衝撃を送り込む。だが、多少亀裂が入るくらいで、完璧には破壊できなかった。


「……ミルク、同じのもう一個」

「はいはい」


 カヤは、ミルクが作ったもう一つに手を置く。そして、息を吸って精神統一をすると、一気に手のひらから衝撃を吐き出した。


「ふっ!!!!」


 それは、岩の内部に伝わっていく。そして、岩の内部から岩を破壊し、その衝撃が広がっていって岩そのものを内部から破壊した。それは岩自身の全てを細かく砕き、広がっていく。先程とは違い、ミルクが作った岩は、粉々になった。


「おお~、威力が違いますね」

「今のがそうか?」

「うん。新しい力の込め方って感じかな」


 カヤは、手のひらを握ったり開いたりすると、その腕に棒を出現させて握った。


「ミルク、さっきのより硬いの、複数個お願い」

「はいはい」


 ミルクが、即座に新しい岩を作る。そこに、カヤが棒を触れる程度まで持っていき、軽く小突いた。


「出来たかな?」


 その瞬間、岩の一部に、何かで削り取られたかのようなきれいな穴が空いた。それは、岩のある一点のみに綺麗に開いている。他には、亀裂すら出来ていない。


「回転か」

「そういう事」


 カヤは、己の内側から発する衝撃に、回転を加えたのだ。恐らく、今のは棒を回転させたんだろう。あまりにブレのない回転であった為に、回っていると気づかなかったんだと思う。一瞬だったし。


「次は、腕の筋肉を使っての回転かな。棒は、そこそこ出来るっぽい」

「それで、衝撃の威力を一点に集めようというわけですか」

「そうそう。衝撃が分散しちゃうと、ダメージが残りにくいからね。今度はこれで、確実に相手の体力を奪っていくよ」

「エグいですね」

「それだけじゃないよ。相手の筋肉にも直接回転が行くから、筋組織がねじ切れるよ。多分、上手く決まれば、一撃で使い物にならなくなるんじゃないかなぁ」

「……確かに、決め手になる攻撃ですね」

「でも、ちょっと練習が必要かも。ミルク、次お願い」

「はいはい」


 カヤは、指先で岩を小突いて小さな穴を開けていく。なんだか恐ろしくもあり、不思議な現象を見ている気分だ。と言うか、表面上は分からないけど、筋組織を捻っているんだろうか? 表面上分からないっていうのは凄いなぁ。


「ふふふ~ん♪」


 カヤが、鼻歌交じりに指先で岩の彫刻を作っていく。なんだか、俺に近い形になってきている気がするな。その次は、フィーの形に近い岩。その次は、レムに近い形に削っていた。なんだか、地味な修行風景だ。やってることは凄いんだが。


「また来てた」

「おお、ロロ。また来たよ」

「くぁ~」

「ジャルクも来たか。よしよし」


 カヤの修行風景を眺めていると、またロロがやって来た。ロロは、カヤの指先を興味深げに見ている。そして、ロロも指先で岩をつついた。勢い良くついたために、指先が少しグキって音をたてた気がする。


「……痛い」

「結構、勢い良くぶつけたね」

「回復するから、こっちに来なさい」


 俺は、ロロの指先に回復魔法をかける。数秒で止めたので、大丈夫だろう。


「……前より調子がいい」

「それは良かった」

「もう一回チャレンジ」


 ロロは、カヤの指先を再び見つめて、岩を軽く突く。けれども、穴は空きません。


「なんで?」

「はははっ、コツが有るんだよ」


 カヤは、ロロに優しく原理を説明している。こういうのが、後のロロの成長につながるんだろうなぁ。そう思いながら、俺はジャルクを撫でていた。



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