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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・四部 炎羅神猿 カヤ編
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内の力

寝ているカヤを抱き上げて、ミルクが魔法で作ったベンチに寝かせる。俺たちも、ミルクが作ったベンチに座った。


「……」

「レム、対抗策を思いつきましたか?」

「ああ、一応な」

「ええ~、もう?」


 寝ながら、カヤが反応する。


「今の受け流しは、相手の動きに合わせてカヤが回転し、相手の武器や拳に回転力による誘導を行うことで成立する。まぁ、気づいたら、刃の軌道が少しそれて当たらなくなってる程度の受け流しだ」

「十分でしょ」

「勿論そうだな。ギリギリを通っていても、当たっていないんだから良い。だが、修正が効く」

「当てに来れるってこと?」

「そういう事だ。違和感に合わせて力を途中で込め直す。あるいは、こちらも回転による力方向の切り替えで軌道を修正するかだ」

「あまり長くは、この手は使えないってことね」

「そうだな。相手がただの獣でもなければ、学習し、合わせてくるだろう。少し、時間は稼げるかもしれないが」

「う~ん、別の手が必要かぁ」


 カヤは、起き上がってあぐらをかいて座り、顎下を触っている。今の合気道のような動きでもだめとなると、どうするんだ? やはり、純粋な反応力を磨くしか無いんじゃないか。


「……ふむ」

「思いつきそうか?」

「二段構えってどう?」

「二段構え?」

「まぁ、やってみよう」


 カヤが起き上がって、武器を構える。レムも続き、武器を構えた。そして、またレムが切り込む。


「はぁあああ!!」


 カヤは、また同じようにして回転し、レムの剣の軌道をずらした。だがその途中、レムが僅かに自身の手首をひねって回転を加え、剣の軌道をずらす。その為、剣はまたカヤを切る方向に向かって刃を走らせた。それを、カヤは待ち構えていたかのように棒でガードする。


「!?」


 その瞬間、レムの剣が跳ね上がった。まるで、何かに弾かれたかのようだ。すぐにレムは、剣を構えなおして再度カヤに斬撃を放つ。また同じようにして軌道を修正し、カヤを切ろうとした。だが、また棒によるガードをされ、剣が弾き返されてしまう。


「なんだ?」

「何でしょう?」


 カヤが、イタズラが成功したかのように笑う。カヤは、ガードはしたが棒を動かしてはいない。レムを押し返してもいない。だが、レムの剣は弾かれた。まるで、何かに押されたかのように。


「そんなことが、出来るのか」

「ミズキ、今のが分かったのか?」

「ええ。カヤは、自身の身体の筋肉。その全てを唸らせて、衝撃を棒に伝え、レムの剣を弾き返したのです」

「えっと、つまり内蔵とかそこら辺の筋肉を使って、打撃をしたってことでいいのかな?」

「まぁ、そんなとこですね。カヤの柔軟性のある身体だから、出来る芸当ではないかと。まさか、内側にあるものを使って打撃を行うとわ」

「発勁ってやつかな」

「見てください。レムの剣があたる瞬間、カヤが握っている部分から、棒に振動が伝わっていくのが見えませんか」

「う~ん。ああ、なるほどね。見えた見えた。滅茶苦茶小さい触れじゃん」

「それだけ、無駄なくエネルギーが伝わっているということでしょう」

「つまり、カヤは相手に触れてさえいればどの体勢でも、どこからでも攻撃ができるということか。しかも、相手の内部に」

「なるほど、そうですね。衝撃を伝えられるということは、相手の内部にも衝撃を放てるということ。今は防御に使っていますが、それは威力が高そうです」

「つまり、こういうことでしょ!!」


 カヤが、蹴りをレムの盾目掛けて放つ。レムの盾に蹴りを防がれたカヤだったが、その瞬間、新たな衝撃が足から盾に向かって放たれた。その衝撃で、レムは一歩後ずさる。


「中々の威力だな」

「ちょっと面白いね、これ。疲れるけど」


 カヤは、脚を戻してまた武器を構え直す。しかし凄いな。やろうと思っただけで、そんなことが出来るとわ。しかも、練習も無しで。


「これなら、行けるかもしれませんね」

「あいつらに、対抗できそうか?」

「ええ。あの、肉体内部という見えないところから放つ打撃は、とても戦術的に有効です。おまけに、あれは回避にも使える」

「回避にも?」

「見てください」


 言われるがままに俺がカヤを見ると、ちょうどカヤは、レムの斬撃を避けていた。今度は、先程の軌道が修正された斬撃をだ。回避のしかたは、見ていれば分かる。身体の側面から衝撃を発して、少し体勢をずらしたのだ。それ以上動かして避けようのない身体を、無理矢理に動かして避けたのだ。強引な使い方だな。


「あんな動き、予測出来ません。今のカヤは、全方位に死角がない。何処からどんな技が飛んでこようと、強引に避けることが出来るのです。これは凄いですよ」

「確かに凄いな。しかも、魔法無しでだもんな」

「ええ」


 避け、弾き、攻撃もできる。確かに強みのある技術だ。あれは、俺でも真似できそうにないな。


「うん?」

「どうした、カヤ?」

「これ、魔法と合わせれないかなって」

「魔法とか?」

「そう。放つ方向に、同時に魔法を……」


 カヤが、棒先から衝撃波を放つ。それと同時に、勢い良く棒先から炎が吹き出した。その瞬間、カヤ自身が大きく後ろにスライドする。まるで、何かに吹き飛ばされたかのように。


「う~ん、これなら回避距離がだいぶ伸びるね」

「なるほど。移動力が増幅されるわけか」

「確かに、距離を取るのに使えそうだな」

「よし。これで練習してみよう」


 再び、レムとカヤが向き合って戦う。今までより安定して、カヤはレムの斬撃を避けるようになっていた。


「さて、レム。そろそろ交代と行きますか」

「ああ、ミルク」

「え、ミルクも?」

「当たり前でしょう。力がある相手なんですから、私の拳にも対応できないと駄目ですからね」

「ご遠慮したいです!!」

「駄目です」


 ミルクが、ガントレットを装着してカヤに飛びかかる。そのミルクの打撃を、カヤは先程と同じように回避した。


「いいい!!!!」

「それじゃあ、駄目なんですよね」

「衝撃が、回避したのに身体に当たってる!!」

「力があるとは、そういうことですよカヤ。今までは、安全に距離を取って私と訓練していたから分からなかったでしょう」

「つまり、もうちょっと距離を見極めて回避しないと、駄目ってこと?」

「その、通り!!!!」

「うひゃああああ!!!!」


 ミルクの打撃を、カヤは大きく後ろに飛んで回避する。まだまだ、カヤの訓練は続きそうだ。



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