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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・四部 炎羅神猿 カヤ編
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避け方

カヤが、いやいやと首を横に振っていても、自体は解決しない。取り敢えずやってみようということになり、俺達は、ミエル達の故郷の迷宮に行くことにした。


「やるしか無いのかぁ~」

「構えろ、カヤ」


 レムが、鎧を纏って剣と盾を出現させる。それと同時に、カヤも魔力で棒を出現させて、軽く振り回すと構えた。


「行くぞ」

「いつでも」


 それまでの和やかな雰囲気が、2人から引いていく。2人の意識は、目の前の相手に集中し、お互いを鋭い眼光で見ていた。レムが、緩やかに一歩を踏み出す。次の瞬間、レムの腕がぶれて、カヤの首があった地点にまでレムの剣が伸びていた。いや、伸びたんじゃない。レムの踏み込みが早すぎた。唯それだけだ。だから、魔力で強化していない俺の目には、レムの剣が伸びたように見えた。今、レムはカヤの目の前にいる。己の剣を、より楽に振るえる位置へと。カヤの首が、一撃で消し飛ぶかと思われるのほど強烈な斬撃が、カヤに迫る。だが、それをカヤは、上体をやや傾けることで避けた。かなりギリギリの位置を、剣がかすめていった。


「良いぞ、カヤ」

「ちょっと、初撃にしては早くない?」

「これからまだ、早くなる」


 そのレムの言葉に、偽りはない。振り抜いたはずの剣、それが刃先を変えて、今度は逆方向に薙ぎ払われる。それも、カヤは一歩下がることで避けた。だが、それで終わりではない。今度は、先程とはうって変わって間髪入れずに切り返しが続けられる。それは、レムが剣を振るう度、腕に負担をかける度速度を増し、カヤを襲っていった。下がってもレムが詰める。避けてもすぐに切り返しが来る。そんな中で、出来るだけ避けを重視しながらカヤは、レムの攻撃を受けていたが。ついに、ある時から持っている棒で、レムの攻撃を防ぎ始めた。そこからのカヤは、防御のみを重視している。レムの剣を、避けることが出来ない。だが、レムの剣はそれでも速度を増し、止まることがなかった。


「どうしたカヤ。避ける練習たぞ」

「ちょっと、きついのよね、レムさん」

「なに、すぐに慣れる。速度も一定値で上げているしな。カヤなら大丈夫だ」

「いや、辛いんですけど……」


 そう言いながらも、カヤはレムの斬撃をしっかりと棒で流したり、受け止めたりしながら防いでいた。凄いよなぁ。


「避けろ、カヤー!!」

「慣れ始めたら避けるから、ちょっと待って、ミズキ!!」


 レムの斬撃の速度は、まだ上がり続けている。既にただの斬撃が、周りに風圧で傷跡を残すまでになっていた。その斬撃を、俺達は魔法で防ぎながら、2人の動きを観察する。徐々に、カヤの棒での防御する感覚が短くなっていった。レムの斬撃が早すぎるというのもあるが、カヤ自体が、防御しながら身体で斬撃を避けようとしているからだ。カバーしつつも、カヤは斬撃の回避方法を模索している。その為、必要な防御が徐々に減っていき。


「……」

「おっ」


 風切り音を上げるその強烈な一太刀を、カヤはついに回避した。防御に頼らず、身体の柔軟性を使い、避けるだけで対処したのだ。その光景に、レムが鎧を着ているのに、笑ったのがわかった。だが、斬撃の手を緩めない。まだ、速度は上がる。剣は行き交い、カヤをミンチにでもしてしまうかと思われる速度で縦横無尽に走っていた。だがその尽くを、カヤは棒を地面に立てて足場にしたり、うずくまったりと、色々な姿勢で避けている。神業だな。


「うん?」

「また、防御が増えてきましたね」

「限界があるのが、当たり前だよな。だが、レムは止まらない」


 レムの斬撃の速度は、まだ上がっている。もうレムの腕が、どんな動きをしているのかすら分からない。だが、目の前でそれを見続けていたカヤは、まだ辛うじて避けを行いながら、その斬撃に対処していた。


「……」

「流石に、あの速度は厳しいか」

「俺なら死ぬ」

「またまた、ご主人様はご冗談お」


 カヤが、レムの斬撃を受け止める度、避ける度、辛そうな表情を浮かべている。もう、速度についていく限界が近いのかも入れない。だが、それでもレムは止まらなかった。もう何度目か分からない斬撃が、カヤに迫る。既に、カヤは殆どのレムの斬撃を、また棒で受け止め始めていた。その動きも、レムの斬撃の速度に段々と反応が遅れ始めている。ついに、カヤの防御が追いつかなくなったかと、俺達が思ったその瞬間、カヤは、またしてもレムの攻撃を避けた。


「?」


 レムの動きが、何故だか一瞬鈍る。だが、すぐに斬撃が再開された。だが、先程とうって変わってカヤは、斬撃を避けまくっている。いや、避けているように見えるが、何かがおかしい。レムの斬撃が、カヤの避ける動きに合わせて、カヤを傷つけ無いように誘導されているように見えた。ようは、攻撃がカヤによってそらされている。それも、避けるという行動で。


「身体でも、受け流しが出来るみたい。これのほうが楽かも」

「なるほど。体を使って、私の剣を受け流していたのか」

「そう。これほどの速さなら、私の動きだけで、レムの剣に軌道を変えるほどの力を乗せることが出来る」

「まさか、回避という手段で、受け流しをするとわ。素晴らしいぞ、カヤ」

「楽な方が良いからね。さ、続きをやりましょう。少し、このやり方に慣れときたい」

「良いとも」


 また、レムが剣を振るう。その動きに合わせて、またカヤは回避をし始めた。最初の頃と、その動きは違う。まるで、踊っているかのようだ。華麗に、そしてキレよくカヤは、身体を動かしてレムの剣を避けている。縦・横・突き。いかなる斬撃にも、カヤはその動きに合わせて動き。その斬撃を、受け流し続けた。


「よし、そこまで。ちょっと休憩にしよう」

「うへぇ~、目が回りそう」

「体を使った受け流しか。面白い」


 ミズキの停止の合図に、2人は戦闘を止めた。カヤは、その場に座り込んでいる。レムは、剣と盾をしまい。鎧を消した。


「物に触れずに、受け流しをするとわ」

「凄いわね」

「自分の動きで、相手の動きを制御したんだ。並の技ではない」

「それを、あの短時間で思いついて、実行したと」

「やはり、カヤには才能があるな。技術的で、武術的な才能が」

「あ~、身体がフラフラする。回りすぎた~」


 俺達の会話など気にせず、カヤはその場に、大の字に寝転んだ。



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