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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・四部 炎羅神猿 カヤ編
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修行帰りの大剣

 森を抜け、丘を超え、一つの村にたどり着く。その村の入口には多くの武装した人々が待ち構えていて、飛んでくる2体の魔物を睨んでいた。


「来たぞ!!」

「構えろ!!」

「……待ちくたびれたぜ」


 村入り口の酒場で、一人の男が席を立つ。立てかけていた巨大な剣をその手に取り、男は村の入口を目指して、悠々と歩いていった。


「食料か、強い男か」

「むしろ両方でも良いぞ。寄越せ!!」

「お前たちに、渡すものなど無い!!」

「失せろ!!」


 村の入口近くに着地した魔物に、武装した人々が向かっていく。彼らは冒険者か、はたまた国の兵士か。動きがぎこちないものもいれば、達人だと分かるくらいに鋭い動きをするものもいる。その彼らの誰もが、どんな武器をもってしても、2体の魔物の拳の攻撃であっさりと沈んでいった。実に鮮やかな攻撃だった。すべての攻撃を、最小限の動きでかわして急所を殴る。一発ずつだが、その攻撃で全ての立ち向かった人々が、その場に意識を無くして転がった。


「おうおう、やるなぁ~。楽しめそうだ」

「ん?」


 俺が動こうとした瞬間、倒れた人々の後ろから見覚えのある人物が出てきた。その男は、自身の巨大な身長よりもでかい巨大な剣を担ぎ、恐れること無く村の入口へと進んでいく。


「そろそろ国に戻らねぇといけねぇからな。修行の締めくくりに付き合えよ、化け物ども」


 その男の名は、ガンドロス・エジェリン。サラサの祖父で、師匠にあたる大剣使いだ。どのような修行を積んできたのか、彼のマントはボロボロに傷ついている。


「見ない顔だ」

「強いかな?」

「試してみな」


 ガンドロスが、剣を構える。その体から、紅蓮のような真っ赤な気を身体から放出すると、ガンドロスは魔物目掛けて踏み込んだ。その瞬間、地面がえぐれてガンドロスの身体が消える。人に出せる速度を超えた速度で、ガンドロスは魔物2体に切りかかった。


「うらぁああああ!!!!」

「ふっ!!」


 ガンドロスの剣を、魔物が2体がかりで受け止める。指先でその剣をつまみ、その勢いを殺そうとしていた。だが、ガンドロスは2人の腕を、そのまま剣を振り抜いて押し返す。勢いで後ろへと下がった魔物は、初めて戦うための構えをとった。


「結構マシだな」

「……」

「どうした?」

「でもなぁ、筋肉ムキムキマンはなぁ……」

「……そうだな」

「背もでかすぎるしなぁ。うちらよりでかいじゃん」

「そうだな」

「好みじゃないっていうかね」

「そうだな」

「余裕じゃねぇか。傷つくぜ、その態度!!」


 再び、ガンドロスが魔物目掛けて斬りかかる。今度は、一体の魔物がその拳で剣を掴んだ。その瞬間、剣の動きが先程の勢いが嘘のように止まる。


「ほぉ……」

「この程度か」

「いや、そうこなくちゃ面白くねぇ」


 魔物が拳から、青い炎をだして剣を焼こうとしている。だが、ガンドロスは身体から、今度は深い茶色のような気を放出した。その時、ガンドロスの太い腕が、更に一回り強化され大きく膨らむ。


「うらあああああああ!!!!」

「……これは」


 止まった剣が動き出し、魔物の腕を払い除けた。


「どうやら、今までの斬撃は良く見えているらしいな。なら、速度を上げさせてもらう」


 また、ガンドロスの放出する気の色が変わる。今度は深い緑色だ。腕の太さは元に戻り、代わりに、ガンドロスの動きが早くなっている。さらに速度を上げた斬撃で、ガンドロスは魔物に切りかかった。


「ふっ」


 今度は魔物は、剣を握らずに、剣の側面を叩くようにしてはたき落とそうとした。だが、ガンドロスの斬撃は止まらない。軌道を変えられても、持ち前の腕力で軌道を修正して、すぐに相手を切れるように剣を構え直し振り抜いていく。その高速の斬撃が10回ほど続いた時、初めて敵の魔物は、斬撃を完全に受け止めずガンドロスの斬撃を飛び退いて回避した。それほど、ガンドロスの攻撃は凄まじかった。俺と学校の大会で戦ったときとは、比べ物にならないほどの領域に達していた。


「そこそこ強い」

「でも、そこそこだなぁ」

「そうだな」

「筋肉マンだしなぁ」

「そうだな」

「無しが良いです」

「保留すら拒否か」

「無い無い」

「……お前、お前より強い男、知ってるか?」

「ああ、俺より強いやつだと?……そうだな。俺の孫娘の夫なら、将来俺を超えるかも知れねぇな。いや、もしかしたらもう、超えてるかも知れねぇ。若いのに、俺とやりあえたような奴だ。そんな奴が、修行をサボってるはずねぇからな」

「なるほど。候補はまだいるか」

「じゃあ、そっち優先で」

「だから、喋ってねぇで、戦えやぁぁああああ!!!!」


 黒い気が、ガンドロスから溢れ出す。力の限り剣を振り抜き、ガンドロスは2体の魔物に対して斬撃を飛ばした。その斬撃を、2体の魔物は空中にジャンプして回避する。


「取り敢えず、一応皆の意見も聞くか」

「無いって。無い無い」

「一応だ、一応」

「こら~!!降りてこい!!!!」


 2体の魔物は、空中に足から炎を出して浮いていた。ガンドロスの言葉を無視して、2体の魔物は迷宮へとそのまま空を蹴って戻っていく。背を向けた2体に向かってガンドロスが斬撃を放ったが、その斬撃は、虚しく外れ空中へと消えた。


「ちっ。あまり深追いはしたくねぇしな。ここまでか」

「おお、すげぇ!!!!」

「あいつらを、追っ払ったぞ!!」

「旅人さん、あんたすげぇな!!」

「……いや、見逃されたと、見るべきだろうな」


 ガンドロスは、彼に感謝してくる村人たちを押しのけ、村を全速力で出ていく。後を追う村人たちを全力で振り切り、ガンドロスは何処かへと消えた。きっと、ライアさん達と同じ迷宮に行くんだろう。それで、急ぎ足で村を出ていったって所か。まぁ、誰も殺されないようだし、彼がいなくなっても最悪食料だけで済むか。まぁ、それが今問題なようだが。彼は、そこまで知らないだろう。きっと、誰も殺されていないって情報しか知らないはずだ。知ってたら、残っているだろうからな。


「……」

(どうしました、ご主人様?)

「アルティ、見たか」

「はい。見ました」

「ミルク、お前も見ただろう。あいつらが、極力物理攻撃を避けず。青い炎で、剣を燃やさなかったのお」

(えっ。燃やそうとしていたように見えましたが?)

「いや、あの量でもさっきの炎なら、一瞬で消し炭に出来たはずだ。それでも剣は残っていた。つまり、あれは燃やすための炎じゃなかった。強化するための炎だったんだ。手のひらに魔力を纏わせて、まるでカヤの髪のように燃えているように見える形で、強化していたんだ」

(つまり、あいつらは物理攻撃に対して、青い炎を強化でしか使わず。物理攻撃には、物理攻撃で対抗してくるということですか?)

「かも知れない。魔法を使う相手には、自分たちも魔法を使うが、それ以外の攻撃には肉体で対処する。もしかしたら、それがあいつらの流儀なのかもしれない」


 俺は、2体の魔物が飛んでいった方角を眺めながら、そう呟いた。



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