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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・三部 鎧竜神天 ミエル・シスラ・サエラ・シゼル編
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ドラゴンライダー

「さて、そろそろ帰るとするか」


 一晩安静にしていたせいか、身体が動きたくてたまらないといった反応を見せたので俺は、朝から城の外でストレッチをしていた。全身の筋肉を伸ばし、魔力を身体に漲らせて拳を空中に向かって放つ。それだけで、大気が揺らぎ、風の流れができたのを感じた。


「……良い空だな。飛び交い、増殖する機械の化物もいない、平和な空だ。日常っていうのは、こうじゃないとな」


 雲が穏やかに流れ、青々とした空を見ながら俺はそう思った。そうしていると、何かの走ってくる音が聞こえてくる。


「見つけた!!」

「くぁ~!!」


 それは、ロロとジャルクだった。ジャルクを頭に乗せて、ロロは一直線にこちらに向かって走ってくる。そのまま俺の足に抱きつくと、よじ登ってロロは俺の肩に座った。


「……大丈夫?」

「ああ、お陰で元気だ。ほら、この通り」


 俺は、ロロを片腕で捕まえると、そのまま肩に乗せた状態でバク転した。その後、少し走って見せて元気だというアピールをする。そうすると、ロロは穏やかに微笑んだ。


「よかった。昨日は、安静にしてないとって、合わせてもらえなかったから」

「うん、ああ、ちょっと戦いで疲れちゃったからな。心配かけたかな?」

「うん、心配した。ジャルクも」

「くぁ~」

「おお、ジャルクもか。ごめんな」

「くぁぁ」


 よしよしとジャルクを撫でる。すると、ジャルクは仕方ねぇなと言った鳴き声を漏らした。よしよし、可愛い奴め。


「族長、帰ってきた」

「ああ、ミズキが救出した中にいたのか」

「そう。他の皆も、何人かは死んじゃったけど、それでも皆生き残ってた。嬉しい」

「良かったな」

「……だけど、問題がある」

「問題?」

「族長を倒さなければ、族長には成れない。族長は、相棒を失ってはいるが、正直強い。今は勝てない」

「なるほどなぁ」

「というわけで、暗殺するしか無い!!」

「……いやいやいや、そこは、真正面から強くなって越えようよ!!」

「族長は、現役バリバリの戦士。片や、私は子供。伸び盛りとは言え、族長に追いつくには時間がかかりすぎる。それまで、待てる?」

「俺がか?」

「そう。待てないなら、愛の脱族もやむなし!!」

「結構、選択が重いんですね。ロロさん」

「愛に生きてるから!!」

「くぁ~!!」


 ロロは、覚悟決めてるからと言った表情をしている。何故かジャルクも、脱族する気満々なようだ。


「……待つよ。俺わ」

「本当?覚えててくれる?忘れない?」

「ああ、ロロは印象深い子だからな。忘れないよ」

「くぁ~!!」

「ジャルクもな」

「……一ヶ月。いや、一年。一年で族長を殺す!!」

「いや、殺しちゃダメでしょ!!」

「無理でしょうね。一年では、流石に経験の壁を超えられない」

「アルティか」


 アルティが、歩いてきて俺の腰辺りに寄り添うように捕まる。落ち着くらしい。


「でも、殺す!!」

「いや、殺しちゃダメだよ!!」

「じゃあ、半殺す!!それぐらいじゃないと、強いって言えないから!!」

「そこまでハードなの。族長選抜って」

「毎回、参加者の顔は、赤く腫れ上がってぼっこぼこ!!」

「ガチでやばい勝負だった」

「手がなくもありませんね。一年で、相手を半殺すことが可能な手段が」

「本当!!」

「ええ。魔物の強さは、保有魔力の強さです。成長する過程で、その魔力量が多ければ、成長する身体もより強力に成長していくでしょう。それこそ、同じ種族の誰よりも」

「すごい!!頭いい!!」

「仲間の皆さんのおかげです。それで、やり方なのですが」


 アルティが、手のひらに何かを形成していく。それは、魔石だった。俺の、契約用の召喚魔石。


「マスターと契約することです。この石で」

「やる!!やる!!」

「ただし、条件があります。マスターの為にあること。マスターを裏切らないこと。マスターを信じること。それから……」


 俺の肩から、ロロは飛び降りた。そして、ロロは俺の目の前に座る。そして、傍らにジャルクも座らせた。


「仲間を助けてもらいました。私をかまってくれました。ジャルクにも良くしてもらいました。そして何よりも、私に、一緒に居て欲しいと思わせてくれました」

「くぁ」

「……」

「この魂、身体。全てでも貴方に答えることが出来ないかもしれない。でも、それでも、貴方を見ていたいんです。その背中を、見ていたいんです。寄り添いたいんです」

「ロロ……」

「だから、誓います。すべての条件を、貴方の為に……」

「……はぁ。ロロちゃん、いちいち重いですよ」

「惚れました」

「これが、子供が言うことなんですかね。どういう教育をされているんでしょうか」

「身体にしびれが走るほどの好きな相手は、何を振り払ってでも掴めと」

「なるほど。私達と同じということですか。……少し心配事もありますが、まぁ、いいでしょう。ですよね、マスター?」

「ああ」


 アルティが、魔石をロロの手に握らせる。そして、ジャルクの前にも、魔石を作って置いた。


「歓迎しましょう、ロロ&ジャルク!!今日から、貴方達も仲間です!!」


 ロロが、握った魔石を見つめている。暫くすると、何かを感じ取ったのか、魔石に魔力を流して契約を完了した。それを真似て、ジャルクも契約を完了させる。ここに、正式に俺達の新たな仲間が増えた。その名は、ロロ&ジャルク。まだ未知数の実力を秘めた、天使と飛竜のコンビである。


「さて、ここまではいいのですが……」

「これで、強く……」

「マスター。ちょっとロロちゃんに、魔力を流し込んでみてもらえますか」

「魔力を、流し込む?」

「ええ。出来れば、マスターの肉体内の魔力濃度に近い感じがいいのですが……」

「俺の肉体内の魔力濃度……。こんな感じか?」

「ああ、ゆっくり濃度を濃くしていって下さい。はい。そのような感じでお願いします」


 俺は、アルティに言われるがままに、ロロに魔力を流し込んでいく。すると、何故だかロロの顔が変な表情になってきた。まるで、何かを我慢しているような……。


「うっ、うっ。うぇぇぇえええええええ!!!!」

「ああああああああ!!!!ロロが、吐いたぁああああ!!!!」

「朝ごはんが、ドバドバ出てますねぇ」

「ロロ!!しっかりしろー!!」


 俺は、魔力を注ぐのを止めて、ロロの背中を擦る。ひとしきり吐くと、ロロは元気になった。


「ほら、口元ゆすいで」


 俺は、水魔法でロロの口を洗う。


「大丈夫か?」

「は、はい。まだ、体に力が入ってますが、大丈夫です」

「やはり、こうなりましたか」

「どういうことだ、アルティ?」

「この迷宮の魔力濃度と、マスターの肉体内の魔力濃度は、今や天と地程の違いがあるのです。その魔力濃度の濃い空間に、今のロロちゃんを取り込むと、こうなるのです」

「え?つまり、魔力の濃さに酔ったとでも言うのか?」

「酔ったと言うのは、おかしいですね。うちの皆さんのように、完全に肉体が確立、固定された状態ならば話は別なのですが。ロロちゃんは、まだ肉体的にも成長途中。そんな中に、大量の魔力が雪崩込むと、身体の魔力が無意識にパニックを起こしてしまうのです。使いようのない、消費しようのない魔力がいきなり入ってくるわけですから、そうなりますね。結果、排出したい、どうにか消費したいという肉体的行動に繋がり」

「吐いたと」

「そうなりますね」

「ということは、あれには、俺の魔力が」

「そうなりますね。虹色に光ってますから、多分そうでしょう」


 新事実。魔力は、口から出すと虹色に光る。


「で、結論ですけど。ロロちゃんをマスターの体内に今取り込むのは、止めたほうがいいですね。つまり、今のロロちゃんは、一体化にも参加できないということです」

「そういうことか」

「ええ。さて……」

「くぁ!?」

「次は、ジャルクちゃんの番ですよ」

「くぁぁ!!」


 逃げようとして、アルティに捕まるジャルク。


「これも、仲間の強さを確かめるために必要な行為ですから。もし耐えられるなら、マスターの体内の魔力に当てられて早く、そして強く成長できますからね」

「ジャルク、頑張れ!!」


 そういうアルティの言葉に、俺はやらざる終えず。結果、ジャルクも虹色に光る粘液を、口から垂れ流すこととなった。



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