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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・三部 鎧竜神天 ミエル・シスラ・サエラ・シゼル編
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城内戦

 ミズキと別れた後、ミルクは、敵の城の中を縦横無尽に走り回っていた。大量の土の牛を引き連れて、目の前に出てきたありとあらゆる障害をその突進で壊し、薙ぎ払い、脚を止めること無く突き進む。


「少々、目障りですね……」

「うん、何か声が?」


 ミルクは、辺りを見回す。しかし、周りに声の主はいない。おかしいと思いながらも、ミルクは目の前の敵を蹂躙しながら突き進んでいった。だが、その声を聞いた瞬間から、少しだけ城の中の通路の様子が変わる。


「……さっきより、道が狭くなっていますね」


 通路には、一区角ごとに区切りとなっている、目印の柱のようなものがある。ミルクが通過した通路。それが、一区角ごとにどんどんと狭くなっていた。


「建築上、ここで通路を狭くする意味があるのでしょうか?あるいは……」


 ミルクは、思考を巡らせながらも移動を止めない。だが、通路を進むに連れて敵が減っていることを感じて、ミルクは確信した。そこで初めて、ミルクは牛の動きを止める。


「最初から、小さかったわけではないみたいですね。それに、ここまで一本道でした。分岐していた道もありません。これは、通路が作り変えられていると見るべきでしょう」

「気づいても、もう遅いですよ。貴方は、最初から私達の体内にいるのですから」

「……なるほど。どこから聞こえてくるのかと思っていましたが、この城そのものから聞こえてきていたわけですね。それは、方角も分からないはずです。なんせ、その内側にいたわけですから」

「理解が早くて結構です。それでは、この先のこともおわかりでしょう。死ね」


 壁が、ミルクを押しつぶそうと迫ってくる。前後の出口も閉じ、完全な閉鎖空間に、ミルクは閉じ込められた。


「これは、流石に思いつかなかった展開ですね。まさか、この城そのものが……」


 そう言っている間にも、壁は迫ってきている。土の牛が壁に押しつぶされ始めた。牛達は形が変形し、まるで四角い箱にでもなるかのようにして押しつぶされていく。その光景を、ミルクは黙ってみていた。


「諦めがよくて良いですね。そのまま死んで下さい」

「おっと、勘違いしないで下さい。私は、スペシャルでしてね。この状況でも、慌てる必要が無いと思っているんですよ。勿論、確信を持ってね」

「何も、出来ないのにですか?」

「それが、勘違いなんですよ。なんせ、私はミルク。愛するご主人様に選ばれた最高にして、最強のスペシャルなパワーファイター。今、私の牛を貴方が潰している間に、微弱な衝撃を辺りに撒いて周りの地形を把握しました。その結果、一番壁が薄いのは……」


 ミルクは、そう言いながら狭い通路の中で軽くジャンプする。そして、腕を振り上げて床面に叩きつけた!!


「ここだ!!」


 床の壁が崩れ、下層へとミルクは落ちていく。だが、その途中でミルクの落下が止まった。ミルクが、先程までいた通路。その壁を、下層から出てきた巨大な腕が殴り壊した。その腕の主は、ミルクを片腕に乗せて、元いた階層へとジャンプする。その巨体で周りの壁を無理矢理破壊し、押し広げて、その牛は進み始めた。その姿は、ミルクの進化前の姿、牛鬼と完全に一致していた。土で出来た、牛の鬼である。


「いや~、懐かしい我が姿。そして、動かしやすい。やはり、愛され体型になった今でも、貴方は私の一部なんですねぇ。……さて、急いで外に出るとしますか!!」

「ブモォォォオオオオオオオオオ!!!!」


 狭くなった通路を、土の牛鬼が駆けて行く。通路の圧縮するスピードよりも早く、殴りぬけ、突進して破壊し、牛鬼は外目掛けて走っていった。徐々に通路の圧縮が迫り、牛鬼の動きが鈍くなっていく。だが、それでも、通路に完全に動きを止められるよりも早く、牛鬼は最後の内壁を破壊した!!


「ブモォォォオオオオオ!!!!」

「流石、私!!」


 外に出た瞬間、牛鬼は、空に向かってミルクを放り投げる。その直後、牛鬼は壁から飛んできたレーザーによって、あっという間に破壊されてしまった。


「いやぁ~、やはり外に出た直後が一番危険でしたか。内部なら、攻撃手段が限られますもんね」

「ミズキは、大丈夫なんだろうか。ミルクさん」

「余裕でしょう。なんせ、ミズキですから。それよりもカザネ、私達のほうがやばいのでは?」


 そう言いながら、ミルクは外に出た瞬間、自分を掴んでくれた仲間を見つめた。その顔は、仲間の身を案じながらも、この状況に対しては特に構える必要もないといった表情をしたカザネがいた。


「問題ない。さっきから飛んで私を追いかけてこようとしている魔物や、光の魔法があるが」


 そうカザネが喋っていた直後、城の壁から複数のレーザーがカザネに向かって放出される。だが、そのレーザーは、カザネの身体をすり抜けた。


「このように、全く私を捉えられていない」

「貴方が味方で、ほんと良かったですよ」


 カザネは、ミルクを背中に背負う。胸が凄すぎると、一瞬カザネは思ったが、そのまままた、城の周りの上空の囮活動を始めた。


「……」


 ズルっと水が動き、何かを揺らす。それは、貯水タンクだった。その貯水タンクの水が、蛇口から一滴、すっと床に落ちていく。その水滴から、何者かが出てきてその場に着地した。その水滴から姿を表したミズキは、辺りを見回す。


「やれやれ、この城自体が敵そのものだとわな。本気で行かざるおえないようだ」


 ミズキの姿が、服が、辺りの色と同化して、その姿を隠していく。だが、ここは敵の体内。その程度では敵に位置を誤認させることは不可能だろう。だが敵は、ミズキを未だに見つけられないでいた。


「もう一人、ネズミがいたはずですが?」

「はい。ですが、各部分に敵の反応がありません」

「どういうことです?」

「各部屋のセンサー、視認カメラ共に異常がありません。恐らく、敵は普通ではない者だと思われます」

「普通ではないというと?」

「恐らく、空気、もしくはそれに近い何かなのでわ?例えば、水などでしょうか」

「水ですか」

「はい。生物として認識されない何か。それに近いものだと思われます」


 その敵の思考をよそに、ミズキは通路の天井を進んでいた。まるで蜘蛛のように、天井に張り付いてミズキは通路を進んでいく。通路上にいた敵達を避け、そのまま戦闘をせずにある地点に向かって真っ直ぐミズキは進んでいった。


「ここか……」


 ミズキは、ある自動ドアの前に着地した。だが、そのドアは、ミズキに反応して動かない。そのドアの隙間に向かってミズキは指を差し込むと、その隙間からズルっとミズキは中へと入っていく。そのドアの先は、巨大な浮遊する魔石が置かれた大部屋に繋がっていた。




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