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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・三部 鎧竜神天 ミエル・シスラ・サエラ・シゼル編
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輝き

「なるほど」

「きつくは無いけど、きりはないわね」

「物量だけは、確かに凄いです」

「皆さん、慎重に行きましょう!!」

「了解っす」


 念話で、皆の声が離れていても聞こえる。レム、カヤ、シデン、ミエル、シスラは、それぞれ武器に魔力を纏わせて攻撃することで、攻撃範囲を拡大し、残骸を残さず敵を処理していた。皆、敵の攻撃を一撃も受けていない。だが、敵が多すぎて、攻撃を休んでいる暇はなさそうだった。これでは、体力が徐々に削られて行ってしまう。と言っても、彼女たちならば一日中動きっぱなしでも、動きが鈍ることはないのだろうが。


「私の、血の魔神がー!!」

「自爆するなんて、あの程度の兵ぐらい、使い捨てに出来るということかしら。これは、きつい相手かもしれないわね。ここにいる、全ての敵が爆弾である可能性もあるなんて」

「まるで、ミズキ地獄ですね」

「速度が遅いから、難易度は低いがな」

「レムは、そう感じるでしょう。他の皆は大丈夫ですか?」

「あたしは大丈夫だよ、ミルク!!余裕余裕!!」

「思考がわかるので、もし自爆しそうでも避けられます」

「私達にも、動きがよく見えています。今は大丈夫です」

「そういうことっす!!」

「どうやら、皆大丈夫そうですね、ご主人様」

「ああ。……そろそろ、動きがあるか」



 このまま地上の戦線を維持したまま、俺達の体力を削ってくるなんてことはないだろう。何か、相手はこのタイミングで仕掛けてくるはずだ。攻めあぐねて、兵力を消耗するのはよくないからな。


「そろそろいいでしょう」


 ヴァルキューレがそう呟くと、再び地面が震え始める。俺達が見ている前側、その穴が震え、穴から何かが浮き上がってきた。それは、魔力に圧縮された浮遊物体。その浮遊物体は、穴から出てきて空中に浮くと、周りを覆っている魔力の壁を消し始めた。圧縮が解除されて、その場に超弩級の大きさの浮遊する島が出現する。いや、これは要塞だ。鉱物、鉄か何かで作られた浮遊する円形の物体だ。その巨体は白金に輝き、その物体のあり得なさを強調している。武装されたその姿は、まさに要塞。そんなものが、一瞬にしてこの迷宮の上空に出現した。その大きさは、この迷宮よりも更に圧倒的にでかい。この迷宮自体を、その巨大な影の下に、すっぽりと飲み込んでしまっている。


「……また、凄いものが出てきましたね、これわ」

「ああ。ミズキ」

「行くとしますか」


 ミズキとミルクが、カザネに捕まる。その瞬間、一瞬の風の音のみを残して、3人はその場から消えた。俺ですら、その動きを捉えるのがやっとだ。カザネが速すぎる。


「皆さん、無駄な抵抗もここまでです!!上空の優位は、私達が握りました!!皆さんには、これで人生から退場してもらうことにいたしましょう!!それでは、さようなら!!」


 俺達が、その言葉に浮遊都市を見上げると、浮遊都市の下側がまばゆく光り始めた。何という熱量だ。すでに熱さがここまで伝わってきているのに、その光は、更に輝きを増していく。俺は、山と地上で戦っている皆を覆うように水属性の魔法でバリアを展開した。それと同時に、フィーに目で合図をして、彼女を内に戻す。すでにアルティも内にいるので、これで準備は完了だ。


「これで、おわりです!!」


 大出力の光の熱線が、迷宮に向かって放たれた。だが、まだ俺達は何もしない。光の熱線が、地上へと到達しようとする。だが、その光が途中で別のところへと移動し始めた。


「?」


 それはこの迷宮で最も高い位置にある城、その頂上だ。そこには、俺が設置したオルヴィアの石が置いてあった。オルヴィアの石は、魔力を吸収し、その身に蓄える性質がある。その石が、迫りきていた光の熱線を、地上に降り注ぐ前に全て吸収していた。浮遊都市からの熱線が止む。そのすべての魔力をオルヴィアの石は吸収しきると、白銀に輝き始めた。


「オルヴィアの石が!!」

「あれは、充電MAXってことっすかね?今の一撃で、空いていた容量全てを、埋め尽くしきったんっすか!!たった一撃で!!」

「それほどの威力の、魔法だった言うことですか」

「ですが、これでオルヴィアの石は、害の無いものへとなりましたね。これで、勝手に魔力を吸収してしまうこともないでしょう」


 白銀の光が収まっていく。それと同時に、再び頭上に光の魔力が集まり始めていた。


「なるほど。貴方がたも、その石を持っていましたか。我々の物と少し違うようですが、それでその石は、もう吸収には使えないでしょう。今度こそ、おわりです」


 また、光の熱線が地上目掛けて降り注いでくる。それを、俺は地上から飛び立って、右腕で受け止めた。


「は?」


 あまりのことに、機械すら驚きの声を上げる。光を受け止めた俺の腕に、その光が吸い込まれていった。そして、俺の身体に変化が起きる。腕に、足に、身体に、黄金の鎧が出現し始めた。その全ての光を再度吸収しきると、俺の身体は、完全に黄金の鎧に包まれていた。


「完璧です、マスター。仲間の故郷を救うべく、今再びのゴールドモード。完全に制御しきれています。おめでとうございます」

「ありがとう。……正直、まだきつい気もするが。制御に余裕がない」

「我々が、バックアップいたします。フィー姉さん」

(了解!!)


 俺の内にいるフィーとアルティが、魔力の制御を手伝ってくれている。俺は、そのお陰で一杯一杯だった鎧の制御を少し止め、身体を動かした。うん、やっとまともに動けるな。と言っても、まだ制御が辛いため、そんな難しい動きは出来なさそうだが。


「なんですか、あれわ?」

「私達の夫です!!」

「そうっす!!凄いっしょ!!」


 ミエル達が、戦いながらそう言い放つ。少し、照れるな。


「なるほど。そういう生物もいるのですか。いや、ありえないことではないですね。我々にも、再現できるのでしょうか?……あの素材、欲しい」

「はぁ~?何言ってるんすか!!ベイさんは、あんた達なんかに、渡さないっす!!」

「その通りです!!」

「……少し予定と違いますが、このようなことは想定できていたこと。では、何処まで防ぎきれるか、耐久テストと行きましょうか。素材の性能を、確かめることも出来ますしね」


 なんだ? 敵の口調を穏やかなものになっている。この声には聞き覚えがあるな。確か、あの時ニーナの故郷で聞いた。


「それでは、またレーザーを……」


 敵がそう言って、浮遊都市を見上げる。だが、その時、浮遊都市から爆発が起きた。


「な、何事です!!」

「侵入者アリ。侵入者アリ」


 敵のヴァルキューレから、二種類の声が聞こえてきた。やはり、あの浮遊都市から遠隔操作しているものの声が届いていたのか。


「わははは!!止められるわけがないでしょう!!暴れ狂う、私の牛を!!」


 浮遊都市内部の城。その城の通路を、土で出来た牛の軍団が蹂躙していた。立ち塞がるヴァルキューレ、パワードスーツを勢いに任せて吹き飛ばし、牛は進んでいく。


「そろそろ中心部だ。私はここで降りる」

「分かりましたよ、ミズキ。何かあったら、呼んでくださいね。すぐに来ますから」

「ああ、やりすぎるなよミルク」

「誰に言ってるんですか?ぶっ飛ばすに、決まっているでしょう」


 そう言って、ミルクは再び牛に跨って駆け出した。その後姿を、ミズキは笑みを浮かべて見送る。


「外にはカザネ、内にはミルク。これで、私を構える敵はいないだろう。楽な仕事だ。……だが、手は抜かないでおくか」


ミズキは、腕の指先から壁の隙間に向かって水を垂らす。その水に吸い込まれるかのように、ミズキは隙間に消えて、その場から姿を消した。



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