不吉な予感
で、なんでこうなっているんだ。
「新しく仲間になりました、カヤです。よろしくね!!」
いや。自己紹介は、凄く普通でいいのですが。さっきから何故俺を抱きしめたままなのでしょうか? 抱きしめるというか、殆どおんぶしている状態みたいになっている。カヤは、俺に嬉しそうに頬ずりしながら一向に離そうとしない。しっぽまで使って全身で抱きついてきている。……柔らかい。
「ふむ……」
アリーさんの目が険しい。でも何だろう。その気持分かるわ~。みたいな雰囲気も感じる。と、とりあえず、危ないことにならなさそうで良かった。
「(いや~、会えない時間が愛を育てちゃったんですねぇ。多分これ、あとで彼女が自分でこの行動に赤面するタイプのやつですよ)」
「デレデレだな。私も主にこのぐらい甘えてみたいものだ」
「殿も嫌がるとは思えませんし、甘えてみてはいかがですか?」
「いや、だが、そう簡単にはだな……」
うちの魔物娘たちは、いつも通りだな。
「そう言うミズキはどうなんだ?主に、甘えてみたくはないのか?」
「ふむ、そうですね。……では、まず私が許可を頂いて触手も使って全力で殿を抱きしめてみるというのはいかがですか?」
「な、なんだと!?」
「(ふむ、ご主人様が触手で。う~ん、何か言い知れぬ感覚が心の奥底から沸き上がってきますね)」
その話、そこら辺で区切ってくれませんかね。ミルクがえらい方向に行きそうなので。
「私は、フィー!!よろしくね、カヤちゃん!!」
「はい、よろしくお願いします!!」
フィーは、まともにカヤと挨拶をしていた。さすがフィーだ。俺の癒やしだ。フィーと挨拶しおえてからカヤは、俺の頬をじっと見ている。な、なんだ? と、思っていると。チュッ、と軽くキスをされた。
「「「「「!!!!」」」」」
先ほどまでの和やかな雰囲気が吹っ飛んだ気がする。全員の目が怖い。カヤは、それに気づかず顔を赤くしてまだ俺に頬ずりをしていた。
「(さすがに私やレムやミズキより先にと言うのは……。ちょっと教育が必要ですかね)」
「いやミルク、それは言い過ぎではないか。確かに私も、穏やかな気持ではないが」
「(全く、レムがいつまでも恥ずかしがってご主人様にキスしたがらないから。ご主人様がおっぱい揉ませて欲しい。の一言も、あなたに言えないんじゃないですか)」
「えっ!!そ、そうなのですか主?」
いや、そんな話題を振られても俺は、どう答えればいいんだよ。いや、そりゃあ揉みたいですよ。でもね、ほら今アリーとフィーが自分の胸を見ているじゃないですか。……沈黙しか今の俺には、出来ないわけですよ。だがその俺の行動は、もちろん揉みたいと取られるだろう。主にミルクに。
「(ほら、ご主人様も揉みたいと目で言っているじゃないですか。早くご主人様とキスして、そのままなだれ込んでくださいよ。私が人化したらご主人様と遠慮無くすぐ出来るように!!)」
「え、あ、あわ。だ、だが、しかしだな……」
いつも冷静なレムにしては、かなり慌ててるな。顔も赤い。うむ、可愛いぞレム。うん? ミズキが胸の部分からさらし? を外し始めた。
「ふむ殿、私の胸はいかがでしょうか?揉みたくなりますか?」
そこには、いつものスレンダー体型のミズキではなくかなり巨乳なミズキがいた。な、なにいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!
「(ふむ、やはりミズキ……。あなた、隠れ巨乳でしたか!!)」
「隠れ?まぁ普段は、泳ぎの邪魔になるのでさらしで押さえているのですが。と言っても私は、胸の大きさも自由自在に変えれるのであまり意味は無いんですけどね」
そう言って、そのまま胸を大きくしたり小さくしたりするミズキ。す、すごい……。
「(な、なんと恐ろしい!!ご主人様が言っていたニンジャでしたっけ。万能にもほどがありますね。流石ニンジャ!!)」
「あ、主!!私も、柔らかさには自信があります!!」
いつの間にかレムも自分の胸を押し出していた。その影で、アリーとフィーが胸を寄せてみたりしている。……2人は、胸が小さくても可愛いよ。だからそんな顔をしなくてもいいんだ。……う~む、この流れを断つために1つ疑問をぶつけてみよう。カヤの髪、燃えているのに熱くないんだよね。さっきから俺にちょくちょく当たってる気がするんだけど、焼けることもない。
「カヤの髪って燃えてるのに熱くないんだけど、どうなってるんだ?」
「ん、ああこれ?これ、魔力を髪に纏わせてるだけだから一見燃えているように見えるけど、実際は燃えてないんだ。完全に消したりも出来るよ。ほら……」
カヤが髪の炎を消すと、燃えていた時と同じくらいのボリュームの赤い髪が出てきた。なるほど、魔力でそう見えていたのか。
「と、ところで主様。あ、あたしも胸は、結構ある方だと思うんだけど」
カヤが、胸を押し付けるようにひっついてくる。……流れの断ち切りに失敗した。その後、我慢の限界を迎えたのかアリー、フィー、レム、ミズキに押し倒されてもみくちゃにされた。
「(ぐぬぬ、私もこの巨体でなければああああぁぁぁ~~!!!!)」
いやミルク、助けて欲しいんだけど。そう思いながら数十分かけて女性陣をなだめた。とりあえず、この後はどうするかな。カヤも仲間になったし早めに帰るのもありだな。アリーが一旦実家に帰る日が迫っているし。午後は、アリーと買い物に行くのもいいか。よし、そうしよう。そう思い、家に帰ることにした。
「ああ、ベイ!!良かった!!」
帰るとカエラにアリーごと抱きしめられた。いったい何があったんだ? 聞くと、少し離れた地域の迷宮から闇属性魔物の大侵攻があったらしい。このサイフェルム王国とリダウム王国のちょうど中間ぐらいにある迷宮のようだ。なんでも襲ってきた魔物たちは、魔王軍を名乗っていて人間の抹殺を目的としているらしい。今は、複数の村が被害にあいサイフェルム王国とリダウム王国から軍が派遣されている状態とのことだ。
「そんな遠い地域なら心配しなくても今は大丈夫じゃない、母さん」
「ええ。でもその魔物は、魔王軍を名乗ってたって話でしょう。昔の戦いで魔王軍って転移を使った軍隊の瞬時な移動を駆使して多くの国に被害を出しているのよね。この近くにすぐに出てきてもおかしくは無いわ。一応、その対策として国周りの城壁にも兵士さんが配備されているんだけど。私、心配で」
「大丈夫ですよカエラさん。私とベイなら、魔王軍だろうとパッパッとやっておわりで済みますから!!」
「あら、頼もしいわね。でもアリーちゃん、カエラさんじゃなくてお義母さんでもいいのよ?」
えっ、そこ? と言ってもカエラは、子供の冗談くらいにしか受け止めていないだろうなぁ。実際、なんとかなりそうな気がするから困る。でも、慢心はしないようにしないとな。今の俺は、皆の命を預かっているんだから。……そう言えば、転移魔法を使う闇属性魔物の敵を見た気がするな。しかも喋っていたし。あの時俺達が転移させられたのは、ここから近い風属性中級迷宮だったな。……まさかな。と思いつつも俺は、その予感が当たっている気がしていた。