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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・三部 鎧竜神天 ミエル・シスラ・サエラ・シゼル編
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大天使シスラ

では、俺の全力のロロ捕獲劇をお見せしよう。


「幼妻に!!」


 まず、風魔法での加速ブーストからの神魔級強化による全体筋力の強化。これにより、完璧なスタートダッシュをなす。


「なり!!」


 続けて、カザネモード時のディレイウインドを発動。これにより、俺の身体は魔法の効果によって超加速。すでにその場にいたかのように身体が移動し、その場に出現する。だが、本気で発動すると身体がオシャカになるので、劣化版発動だ。お陰で少しのタイムラグが有る。だが、俺はロロの背後にいきなり現れたかのように出現した。これでも劣化版なんだよなぁ。


「まし!!」


 すかさず俺は、ロロの口を手のひらで塞ぐ。この時、鼻も間違って塞がないように位置に注意して口を塞いだ。そして、素早く小脇にロロを抱きかかえる。


「むぐっ!!」


 そして、俺はロロを捕獲すると会議室へと戻っていった。どうやら、まだロロちゃんとは話し合いが必要らしい。


「ただいま」

「おかえりなさいっす」

「むぐぐぐ!!」

「ただいまだって」

「ロロちゃんも、おかえりなさいっす」


 俺は、ロロを下ろした。ただし、肩をがっちり掴んだまま。


「ロロちゃん、いきなりあれは酷いんじゃないかな?」

「なんで?」

「なんでって、俺の同意がないじゃん。大切なところだよ、そこ」

「周知することが大切だって、部族では言ってた」

「……それは、ちょっとおかしいね」

「家族になるのは素晴らしいことだから、皆に言って回らないと行けない。誤解じゃないですよ。夫婦ですって」

「そ、そうかもしれないね。でもね、俺の同意がないじゃない。そこがないと、まだ言っちゃいけないと思うなぁ」

「言ってれば、事実は後からついてくるって」

「ゴリ推しすぎるだろ!!」


 俺のツッコミも虚しく、ロロは頭をかしげている。しかし、何とか考えを改めてもらわねばなるまい。こんな子が、幼妻だと言って回るんだぞ。こんな子がだ。やばいって。


「そんなに、私もそこの子達と変わらない」

「はい」

「えっと、今は元の姿というか。变化してるだけというか」

「私は武器ですから」


 そう言って、ロロはフィーとシデン、アルティを指差す。シデンも幼女モードだからな。そう見えるのも仕方ないかもしれない。だが、根本的に違う。それは、種族的な価値観。恐らくだから分からないが、天使の年齢的価値観は、人間のそれに近い。つまり、ロロが周りに幼妻ですというのは、人間的に言うそういう意味になるのではないか? それが、俺は嫌なのだ。突き刺さる視線にさらされるのが!! だいたい、なんでそんなに決断が早いんだ!! 俺とアリーみたいに、もうちょっと関係を育んでからにしようよ!! そういうの、階段を飛ばして、飛行機で登っていくのやめようよ!! 


「あの3人はね、外見は年をとっても変わらないんだよ。2人とも、ロロちゃんよりお姉さんなんだ」

「はい、皆のお姉さんです!!」

「よっ、フィー姉さん!!」

「多分そうですね。多分」

「私は武器なので」


 そう言えば、ミルクは含まれないんだな。 ……まぁ、あの最強兵器があるのでは、同列には見えないよな。


「なるほど。では、私もそういう感じで」

「いやいやいや、感じとかでOKにならないから!!どうしようもないから!!」

「いえ、事前契約。これなら通る!!」

「ゴリ押すね、ロロちゃん!!」


 強い。この幼女、メンタルが強い。本当に幼女か?


「大自然の中では、いつ死ぬか分からない。ビビッときたら即決断。常識」

「幼女になんて理論教えてるんだ、狩猟天使は」

「では、幼妻(仮)ということで」

「逃れられないの!!決定事項なの!!」

「イエス!!」

「アリーさん、何とかなりませんか?」

「私も許す!!」

「アリーーーー!!!!」


 全ての退路が絶たれた。俺の見栄を、守ってくれる嫁はいない。俺は、ひとり静かに膝を床についた。


「まぁまぁ、ロロちゃん、仮なんっすからあまり言いふらしちゃ駄目っすよ」

「何故。私はすでに予約済み。周知するべき」

「いいっすか。私ら、全員この人の嫁なんっすよ。それで、ロロちゃんまでも嫁になるといい出したら、どうなると思うっすか?」

「どうなる?」

「この迷宮、全ての女性が押し寄せてくるっすね。私も嫁にしてくれって」

「何故?」

「私ら、この迷宮出身なんっすけど、ベイさんについて行ってから凄く強くなったんっすよ。それを、羨ましがらない天使がいると思うんっすか?」

「……強い力、憧れる。欲しい、当然」

「そういうことっす。私ら、これでも迷宮で地位が高いっすからね。一応、それなら強くても普通じゃないっすか。でも、ロロちゃんがいきなり強くなったらどうっすか?」

「私が、強く……。そんなの、ずるい。力、皆欲しい」

「そういうことっす。ロロちゃんが今言って回る。そして強くなる。これを、皆うらやましがるんっす。そして、全ての女性がベイさんに殺到する。力を求めて」

「それ、危ない。夫、捌ききれない」

「いや、ベイさんなら楽勝なような……」


 ロロが、首をかしげる。その表情に、シスラはいやいやと頭を振って表情を濁した。


「そ、そうっすね。ベイさんでも危ういかなぁ……。危ういかもしれないっすね」


 恐ろしく棒読みだ。


「ともかく、それを防ぎたいんすよ。だから、今言って回るのは無しで」

「……分かった」


 グッジョブ、シスラ!! ナイス!! 愛してる!!


「では、私が族長になったら言う」

「えっ?」

「生き残ってるの、若いのだけ。私、強くなる。族長、強いの当然。問題ない」

「あ、そうっすね。それならいいのかなぁ……」

「了解、族長選定は年始。だけど、今は族長不在。代理のみ。今のうちに鍛える」


 シュッシュッとジャルクを抱えながら、ロロはパンチを繰り出す。やる気だなぁ。


「ジャルクパンチ。ジャルクキック。ジャルク・ウルトラストロングメテオパンチ」


 全くジャルクを使ってないけど、技名にジャルクが入るようだ。イメージでは、ジャルクも一緒に戦っているんだろうか。


「ふぅ、でも取り敢えず、なんとかなったな。ありがとう、シスラ」

「いえいえ、愛する夫の為っすからね」


 マジ天使かよ、シスラ。ああ、シスラの後ろから後光さえ見えてきた。これが天使。ありがたや、ありがたや。そう内心で思いながら、俺はそっとシスラの手を握り頷いていた。ありがとう。そう思いながら。



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