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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・三部 鎧竜神天 ミエル・シスラ・サエラ・シゼル編
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美味しいかもしれない

「よし!!それでは、皆さんには迷宮外。外周の木々を伐採しての、バリケードの設営をお願いするっす!!」

「設営地点は、今までに立案されていたこの山の要塞化計画。その敵の撃退ポイント。下からの攻撃を防ぎ、敵を攻撃することが出来る傾斜地点や、狙撃ポイントのある地点です」

「そしてそして、この山の至る所に狙撃ポイントを見えづらくするカモフラージュ。木々の植え込みも、合わせてお願いするっす。見える角度とか、注意して植え込んでくださいっすね」

「それでは、引率役のミランダさんの指示通りに、後はお願いします!!皆さんの働きに、この迷宮の明日がかかっております!!よろしくお願いします!!」


 おー!! と、それなりにやる気があるような声を上げて、兵士たちは引率役の天使に案内されて山を飛び立っていった。何というか壮観だな。この規模の天使の一団が飛び立つのは。2000人位いるのか? いや、もっとかもしれない。数えるのが、めんどくさくなる数だ。


「さて、これで一応下からの備えは良いっすかね」

「後は、シゼルさんの工作班の方たちに任せましょう」

「うん、工作班が別にあるのか?」

「ええ、シゼルさんの指揮する、工作というか戦闘以外担当の部隊なんですけど」

「今は、新しく来た子たちの家を作ってるっす。仮住まいっすね」

「へー、そんな部隊もいるのか」

「他にも偵察、諜報、色々あるんですけど。あまり、活躍の機会は少ないですね。普段は、彼らには迷宮の食料管理部門に着いてもらっています」

「この迷宮、本当に人の住んでる町みたいだな」


 仕組みが、それほど人の住んでいる国と変わらない。違いは、魔物か、人かだけ。こんな場所も、あるんだなぁ。


「おっ」


 何かが、小走りにこちらに近づいてくる。そして、俺の足に体当りしてきて、抱きついた。


「見っけた」

「……ロロ君じゃないか」

「すみません!!突然、走り出しまして!!」


 引率役のフェーゼさんが、他の子達とともに、こちらに向かって走ってきている。ロロ君、集団に左右されない行動力があるなぁ。やんちゃとも言う。


「女子です。ロロちゃんでお願いします」

「……ロロちゃん。何か、俺にようかな?」

「少し、お願いします」


 ロロが、俺の足元に相棒の魔物、ジャルク君を転がす。すると、ジャルク君は俺を見て、めっちゃ土下座をし始めた。しかも、かなり怯えているのか、めっちゃ震えてる。可哀想。凄く可哀想。


「ほら見て」

「本当だ。ジャルクが怯えてる」

「族長よりも、凄い震え」

「見たこと無い」

「だから、ここは安心。少なくとも、この人は族長より強い」

「本当かよ」

「槍とか持ってないぞ」

「鎧もないよ」

「魔物、震えるのやばいやつって族長言ってた。族長にもジャルク震えてた。でも、それ以上。凄いやばい」

「俺のケンチャも、めっちゃ震えてる!!」

「私のも!!」


 可哀想。凄い可哀想。俺を見て、怖がる魔物の幼体達。恐ろしかろう、怖かろう。……すまない。すまない。そう思いながら、俺は伏せていたジャルクを抱き上げた。


「危害は加えない。怯えなくていいんだよ、ジャルク君」

「メスです。ジャルクちゃんでお願いします」

「……ジャルクちゃん」


 ええ~、メスかよ。めっちゃ厳ついぞ。いや、竜だしそんなもんなのか? まぁ、顔だけでオスメスが分かるはずもないか。


「……竜っすか」

「ああ、そう言えばそうね」


 シスラと、サエラが何かを閃いたのか、顔を見合わせている。そして、城に視線を移した。


「はい、ジャルクを返すよ」

「ありがとう」


 何故だか、俺に抱かれた事によって、ジャルクの震えは止まった。だが、その直後、シスラとサエラに目を向けている間にぐったりしていた。死んだふりかもしれない。取り敢えず、息はあるようなのでロロに返すことにした。


「……食べます?」

「食べないよ」


 ドラゴンの肉とか、まずそうではないけれど、人の飼っているものを食べる気にはならない。それに、まだ幼体だし。というか、食べて良いのか? ジャルクちゃん、めっちゃ汗かいてるけど、大丈夫だろうか。


「……美味しいのに、多分」

「多分……」


 ジャルクちゃんが、ロロの腕の中でジタバタしている。ブラックジョークのきつい相棒を持っているな、ジャルクちゃん。頑張れ。生きろ。


「皆、負けました。死んだと思います」

「……」

「ここは、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ」

「約束です」

「ああ、約束だ」

「ありがとう」


 にこっと笑うと、ロロはフェーゼさん達と城の方へと戻っていった。俺に、度々手を振りながら。


「懐かれてますねぇ、ご主人様」

「そうっすね。ベイさん、子供の扱いもうまいんっすね」

「……いつか、私達の子供が、ああいう風にご主人様と戯れるんですねぇ」

「……なんていうんすか、ミルクさん。私、今、幸せが見えた気がするっす」

「奇遇ですね、私にも見えました。ああ、ご主人様と遊ぶ私の子供達、15人」

「じゅ、じゅうごにん……」

「え、何か問題が?」

「多くないっすか?」

「……これでも、まだ抑えたほうだと思うのですが」

「まじっすか」


 ……ミルクのみで、15人。それで、抑え気味だと。俺、大丈夫だろうか。生まれてきた子供たちに、押しつぶされるくらいの数が揃ってしまうんじゃないだろうか。不安だ。将来が。当たって砕けるしか無いが。


「そ、それはさておいて、ちょっと確認しに行かないっすか?」

「確認。何をだ?」

「ミエル様の、ここでの能力っすよ」

「ここでの、能力?」

「ああ、ありましたね。そんなの。竜を操れるでしたか?」

「そうっす、そうっす。ミエル様は、現在階位一位。この迷宮のボス。それを操れるはず、何っすけど。実際はどうなんっすかね」

「出来ないかもしれないと?」

「いや、出来るはずっすよ。でも、やったとこ見たことないっすから」

「俺達も、見てないからな。本当に、出来るのか?」

「だから、それを見に行くっすよ。きっとミエル様も、その能力忘れてるっす」

「……だろうな」


 俺達は、シスラに続いて能力を確かめに、一回城で働いているミエルのもとに戻ることにした。



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