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「えっと、なんでとか、聞いてもいいっすか?」
「ええ。属性特化一体化は、一体化のようでいて、一体化ではありません。性質を、属性に合わせています。属性特化一体化を行うその時、最初の一回目で、強さの方向性を決めます。その方向性とは、属性特化一体化の主軸になる人物。その人物の、こう強くなりたいという願望です。欲望です。つまり、一人の願望を反映して形成されるわけです。そして、皆さんは同じ属性。一度、他の人を主軸にして一体化した場合。その一体化の記憶というか、変化が身体に残ります。というわけで、一度属性特化一体化を行えば、その一人の思い描いた一体化。それが、皆さんの身体に決定案として残り、以降、それ以外の形には変えられなくなるでしょう」
「マジっすか」
「まじです」
「つまり、私達それぞれが、違う形の一体化を行うのは不可能だと言うわけですね」
「その通りです。それは素敵な発想なのですが、一度鎧を形成してしまうと、そうも行かないと思います」
ミエルが、そのアルティの言葉で何かを考えている。そして、小さく手をあげて発言をした。
「私達、全員の考えを反映するということは、出来ないのでしょうか?」
「ミエルさん。全員が、別々の強くなる方向性を考えた上で、それを適当に流れに任せて鎧を形成してしまう。これ、上手くいくと思われますか?」
「良いんじゃないっすかね?むしろ、強いんじゃないっすか?」
「そうね、私もそう思う」
「シスラさんも、サエラさんも、そんな流れ任せではいけませんよ。例えば、カザネモードはスピードを追求しています。その性能を可能にするために、鎧自体にもそれが可能となるような耐久性、能力が備わっています。それを、適当なごちゃ混ぜの思想のもとに作り出してみると、どうなると思いますか?」
「?」
「例えば、速いというカザネさんの思想と、万能になりたいというシデンさんの思想が合わさったとしましょう。その結果、シデンさんの思想部分とカザネさんの思想部分に魔力が分散します。結果、速さが下がります。鎧の耐久力も、魔法適性も下がります。その代わり、別の能力が鎧につきます。その能力が、下がった鎧の耐久を補えるものなら良いのですが、結局は、能力が速さを殺しているということになります。つまり、強さが分散して平均的強さの鎧。大したことのない鎧になってしまう確率が高いのです。あれも、これも強くは尖った強さが逆に出ません」
「なるほど、能力が中途半端になるってことっすね」
「確かに、それは困るわね」
「分かっていただけましたか」
それを聞いて、シスラがミエルを見る。
「まぁ、リーダーは決まってるっすし。最初から決まってるみたいなもんっすよね」
「そうね」
「そうですね」
「え?」
「そうですか。ミエルさん、では、考えておいて下さい。貴方の理想の強さを」
「えっ、ええ~?」
「ミエル様、ドカーンとした威力がある武器のある一体化が私は良いっす」
「私は、複数の敵を同時に倒せるような強さの一体化が嬉しいですね」
「高威力の魔法で、相手を薙ぎ払い倒す一体化が私的には良いかと……」
「え、ちょっと待って!!そんな、いきなり過ぎて!!」
「大丈夫っすよ。ミエル様なら、私達の理想、叶えてくれるって信じてるっす。それじゃあ、行ってくるっすよ」
「私も、行って来ます」
「それでは、よろしくお願いしますね、ミエル様」
「そ、そんなぁ~」
そう言うと、シスラ達は会議室を出ていった。困っているミエルを残して。
「……しかし、なんとかなるもんだな」
「そうですね、ご主人様。正直、動けるのかと思っていましたが。やはり、流石の神魔級回復魔法。私達は、問題なく動けますね」
アリーに回復魔法で、俺は動けるようにしてもらった後、皆と自分を神魔級回復魔法で回復した。だが、神魔級回復魔法でも、俺の不調は完全には回復していない。
「俺は、正直まだきつい。寝転がっていたい気分だ」
「マスターは、身体がまた変化し始めていますからね。本当は、安静がよろしいのですが……」
「やっぱりそうだよな。気持ち悪いのは、そのせいか」
「大丈夫ですか、ベイさん。個室を、ご用意いたしましょうか?」
「いや、いいよ。我慢出来ないほどじゃない。それよりも、一つ気になることがある」
「気になること、ですか?」
「ああ。敵の動きだ。今、俺達が来たタイミングで、別の迷宮の魔物たちが逃げてきていただろう。つまり、敵は先にそこから侵略を開始したということになる。そして、俺達がいたアウダレイシアの町付近にやって来た。この2つの地点、距離的にはかなり離れている。何故、わざわざアウダレイシア方面にやって来たんだ。偶然か?それとも、単純に宣戦布告を振りまいて回っていただけか……」
「そうですね。私が考える有力な理由としては、死神の魔力を察知したからではないかと思います。そして、思い出してみて下さい。連中が、光の魔力を放った位置を」
あいつらが、光の魔力を放った場所? 確か、俺達がシデンモードで死神をぶっ飛ばした所らへんだった様な……。ああ、そういうことか。
「つまり、奴らは死神に威嚇していたんだな。あの魔法で」
「まぁ、正確にはそこにいた何者かにでしょうね。ようは、我々です。と言っても、シデンモードの気配を察知できるとは思えませんから、あいつらからすれば死神なのでしょうが」
「まぁ、私達に喧嘩を売っていたというわけですね。よろしい、潰しましょう!!」
「そうすることになるだろうな。相手が、神魔級である以上」
俺は、力を抜いて椅子に全体重を預けて沈む。その俺の前で、ミエルは何かを紙に書き出して悩んでいた。アウダレイシア付近の聖属性迷宮は、距離的には二択だ。一つは、どんなとこかも知れない地。そして、もう一つはここ。敵の移動速度は分からないが、今までの情報を照らし合わせると、遅くとも2日でここには辿り着くだろう。それまでに、戦いの準備を済ます必要がある。だが、実際の所楽勝なのでは、と、俺は思っているのだ。何故なら……。
「うん、どうしました殿?」
うちには、軍団戦において個人で最強のニンジャがいるのだから。