表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・二部 全妖神狐 シデン編
388/632

別れと代償

「むっ、巨大な魔力の結界の反応が消えたわね。そろそろかしら」


 そう言いながら、アリーは腕まくりをする。


「そうだね」


 そう言いながら、ヒイラも腰を落として構えた。


「えっと、お二人とも何をしてらっしゃるんですか?」

「いいヒイラ、ニーナ。全員で、ベイを入れて13人。神魔級強化を2人にもかけてあげるから、4人は受け止めて。私が、5人は受け止めるから」

「了解、アリーちゃん!!」

「は、はい!!」


 ニーナも、一応前傾姿勢で構える。アリーが、全員に神魔級強化をかけた次の瞬間、目の前に一体化したシデンが現れた。そして、当然の如く一体化を解除する。


「今よ!!」


 一回目と同じように、一体化した全員が、予想通りに地面に倒れ始めた。それを、三人が必死に支えに入る。だが、競い合うように3人共、ベイ・アルフェルトのみを受け止めた。


「ちょ!!」

「あ」

「えっ!!」


 他の全員が、地面に倒れていく。それを、間一髪でアリーが風魔法で止めた。他の全員が、まるで下にクッションでもあるかのように浮いている。


「ちょっと、ベイは私が受け止めるの常識でしょう!!」

「いや、なんか受け止めなきゃって……ね」

「す、すみません!!」

「ニーナさん、我々のことはいいですから、お爺さんと、最後の別れを……」


 シデンが、息も絶え絶えにそう言う。その言葉に、ニーナが後ろを振り返ると、ニーナのお爺さんの身体が、魔力の粒子となり空中に消えて行き始めていた。


「お爺ちゃん!!」

「おお、お別れの時間みたいだな。まぁ、俺は俺の名残でしかないが」

「ええ、そうかもしれません。でも、貴方は、貴方でしたよ」

「そうか。ありがとな……」


 お爺さんと、お婆さんが見つめ合っている。二度目の別れか。辛い話だな。


「ニーナ。お前が孫で、俺達は幸せだったよ。それに、こんなになった俺を救ってくれた。ありがとうな。最高の、爺孝行だぜ!!」

「え、救ってくれたのは、シデンちゃんや、ベイ君だよ?」

「つまり、お前が旦那さんを連れてきたおかげだろ。お前のおかげだ」

「だ、だだだ!!!!」


 ニーナは、慌てた様子で「だ」を連呼している。何かの、アニメソングの冒頭みたいだ。


「ははは!!ニーナ、幸せになれ。子供を産み、孫を持ち、どんな困難も跳ね除けて幸せを手にしろ。大丈夫、お前なら出来る。だって、最高の孫を持てた、俺達の孫だからな!!」

「お爺ちゃん、それは流石に大げさ……」

「大げさじゃない!!それぐらい、幸せな毎日をくれた……。ありがとな。婆さんも」

「ええ、私も、楽しい毎日を送れているわ。お陰で、ニーナの子供を見るまでは、まだ死ねないわね」

「そうか、先に死んだ俺は少し寂しいかもしれんが、それじゃあ仕方ないな!!見届けてやってくれ、俺の分も」


 そう言うと、ニーナのお爺さんの身体が、完全に魔力の粒子となって消滅する。光る魔力の残滓が、風に乗って消えていった。


「ええ。しっかり見届けるわ。貴方の分も」


 お婆さんは、光の飛んでいった方角を、悲しそうに見つめていた。


「ベイ、しっかり!!」

「ベッドが、いっぱいあってよかったね」


 そんな中、俺達全員は、急いでベッドに運ばれてドッと押し寄せてきた疲労回復に全力で努めていた。何だか、情けなくて申し訳ない。


 それから数時間後、ローゼットさんが町から情報を集めて戻ってきた。町からは、全ての幽霊が消えたらしい。町の住民皆が、笑顔で幽霊たちを見送ったそうだ。良い話だな。


「そう言えば、霊園はどうなってるの?」

「はい。酷い有様でして、墓石が全て無くなっていました。今、国に復旧資金を出せないか伝聞して検討してもらっています」

「仕事が速いのね」

「そのために居ますので」


 ローゼットさん、有能。


「そして、事態解決の活躍、お見事ですとシアさんから伝言を預かっています。報酬を差し上げますので、暫くはのんびり過ごして下さい。との事です」

「あら、気前がいいじゃない。あいつなら、次はここの異変を解決してくださいとか、すぐに言うかと思ったわ」

「いえいえ。私が、皆さん研究続きで体力と精神が限界ですと、申し上げておきました。ゆっくり、休んで下さい」

「グッジョブ!!」


 ローゼットさん、マジ有能。


「ベイさんも、この状態ですしね。暫くは、お休みになって下さい。あ、あのことは秘密にしてますから、ご安心下さい」

「マッサージ、次活躍したら約束するわよ」

「マジですか!!吉報を、お待ち下さい!!」

「……」


 あれー、何だか複雑な気分だぞ。有能だと思ったのに、この人もしかして駄目なのではと、一瞬思ってしまった。


「何にしても、数日はゆっくりしたいわよねぇ。最近は、愛しの旦那と、一日中いちゃつけもしない」


 そう言いながら、アリーが俺の頬を撫でる。抱きしめたい!!でも、体が動かない!!マジでヤバイ!!


「……うん?」

「アリーちゃん、なんかおかしな魔力感じない?」

「外ね。……ベイ、見る?」

「ああ」


 俺は、アリーに担がれて外に出た。一応、皆も自分の内に戻す。通常時の一体化なら、すぐに回復して動けるかもしれないからな。


「空が、光っている」

「まるで、天使でも降りてくるかのようね。天使の知り合い居るけど」


 アリーが言った通り、空が神々しく光っていた。そして、その光の中に女性の姿が浮かび上がる。その肌は、真っ白だった。まるで、人間ではないかのようだ。だが、見た目はほぼ人間だ。その背中に生えている羽と、複数生えている腕を除けば。


「愚かなこの星の生物に告げる。我は、聖属性神魔級迷宮の長・ノジュカント。聖属性の魔物を束ねる長である。諸君らに求めるのは、服従か、死だ。これより、我が神魔級迷宮は、全世界に向けて一斉攻勢を開始する。まず手始めに、聖属性の迷宮を統括した後、人間どもを抹殺。そして、全魔物を我々が滅ぼし糧とする。だが、私は慈悲深い。服従するものには生を約束しよう。それまでに、心を決めておくと良い……」


 そう言うと、光は消え、映像も消えた。


「……休めそうにないな」

「そうね。本当に……」


 俺達は、そう呟くと家に戻ろうとする。だが、次の瞬間、巨大な光の柱が遠くの大地目掛けて、天空から降ってきた。


「なんだ、あれは……」

「高威力魔力兵器ってところかしら。見た感じ、国一つ消滅させるだけの威力はあるみたいね。……そろそろ、爆風がこっちに届くかしら」


 そう言って、アリーが家の中に入る。数秒後、風で家が揺れた。


「今のは、私達の力のほんの一分だ。良く考えることだな」


 また、あの女性の声が天空から響く。家の中だっていうのに、よく聞こえるもんだ。


(た、大変だぁ!!)

(迷宮に、戻らないと行けないっす!!)

(皆が危ない!!)

(ベイさん!!)

「……」


 休みたい。久しぶりに、そう思ったかもしれない。でも、行かない訳にはいかないか。ミエル達の、仲間が危ないもんな。俺達は、急いでアリーに回復魔法をかけてもらい、多少回復すると、あとの事をローゼットさんに任せて、ミエル達の故郷へと転移した。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ