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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・二部 全妖神狐 シデン編
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全妖神狐 VS 記憶の死神

 僅かに霧が晴れ、雷が天を貫く。逆さまに、地面から天を目掛けて稲妻が走った。それは、一本の鎖。それに続くように、無数の鎖が地面から生えては、天に向かって伸びていく。そして、その鎖の先が、全て死神目掛けて降り注いだ。


「ガガ」


 死神に、鎖が全て突き刺さる。だが、それは骨を砕いていない。突き刺さってもいない。通り過ぎている。死神の身体を透過して、鎖が突き抜けている。


「ふふっ、わざとです」


 シデンが、扇子をたたんだ。次の瞬間、死神の骨を鎖が捉える。透過したまま、鎖が死神を捉えたのだ。死神の骨に、突如として雷槌の鎖という異物が突き刺さる。本来なら透過していた場所に出現した鎖は、周りの骨を巻き込んで、勢い良く波打ち始める。それは巨大な回転の渦となって、死神の骨を粉微塵に粉砕した。


「……この程度では、まだ最終段階に移りませんか」


 死神が、塵の中から再生する。その周りに、無数の亡霊たちが現れた。きっと、記憶を利用された動物たち、人々だろう。その全てが、一気に俺達目掛けて接近してくる。だが、途中で俺達を見失ったかのように、敵は動きを止めた。


「私は、貴方達に、存在を感知させなくすることが出来る」


 シデンがそう言うと、扇子を振るう。すると、まるで刃物で切られたかのように、亡霊たちが真っ二つになっていった。


「私は、貴方達を、あっという間に切り刻むことが出来る」


 だが、攻撃することは、敵に位置を知らせているようなものだ。その攻撃のせいで、敵は俺達の位置を割り出したらしい。俺達のいる場所目掛けて、亡霊たちが雷を飛ばし、一斉に攻撃してきた。


「式神」


 シデンが、魔力で御札を生成する。その御札を、空中に向かってシデンが飛ばすと結界が張られ、全ての敵の攻撃を防いだ。


「私達は、圧倒的です。今の貴方では、太刀打ちできませんよ。さぁ、その力を一つに纏めなさい。でなければ、少しずつ殺していくだけです」


 死神は、そのシデンの言葉を聞いて、こちらを数秒睨んでいた。


「私は、貴方の未来を当てることが出来る。貴方は、そうするでしょう。そして、貴方は死ぬ。これは、避けようのない事実です。何故なら、それしか手がないのだから」


 その瞬間、死神が咆哮を上げる。辺りの霧を吸い込み、亡霊を取り込み、死神の身体が電撃を放ち始めた。それは、雷を纏った巨大な骸骨。記憶を貪り、雷を操る死神。この町を、地獄に変えようとしていた最悪の化物。その真の姿。


「迷宮の魔力は消え、貴方一つとなった。これで、殺しやすくなりましたね。創世級さん」

「ガガガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 雷属性の創世級、その魔物がこの世に姿を現した瞬間だった。その姿は、迷宮が消えたことによって、町の人々の目に留まる。それだけで、町の人々は腰を抜かし、この世の終わりが来たような顔をした。だが、シデンはクスリと笑っている。まるで、遊ぶかのように。


「ほらほら、皆さんが怖がっています。場所を、少し移しましょう」


 シデンが、指をパチンと弾く。すると、巨大な竜巻が発生して、横から死神を押し飛ばした。


「私は、風を操ることが出来る」


 シデンが、その場でスッと姿を消す。転移魔法だ。転移魔法で、シデンは死神の飛んでいった方向に先回りすると、その兜から生えた無数の鎖の髪で、死神を地面にはたき落とした。


「さて、そろそろ料理しましょうか」


 シデンが、御札を生成し、辺りにばらまいていく。それは、結界を形成し、死神と俺達を包むようにフィールドを作った。


「貴方、記憶から蘇るんですってね。親切な、お爺さんが教えてくれました。でも」


 シデンが、鎖を髪から一本伸ばして飛ばす。その鎖が、死神の腕の骨を少しばかり砕いた。死神は、その傷を見る。だが、その傷は再生しない。


「辺りと、完全に隔絶された空間内でならどうです?周りの魔力記憶と触れられない状態なら、貴方は再生すら出来ないんじゃないですか?答えは、知っていますけどね」

「アアアアアアアアアア!!!!」


 死神が、やけになったかのように無数の巨大な雷の鎌を、高速で生成しては飛ばしてくる。その鎌を、シデンは微笑みながら避けた。全く、かすらせもせず。


「私の髪は、全てを喰らう」


 シデンの髪。その無数の鎖が、死神の前へと、その量を増やしながら伸び始めた。それらはまるで、大きな狐のような形を形成すると、死神に向かって大口を開けて噛み付いていく。死神の飛ばす鎌にすら目もくれず、それは死神にかじりついた。死神の上半身は消え、無へと帰る。鎖の狐が、全てを噛み砕き終えるとその量を減らし、シデンの髪へと戻っていった。


「まずは、半身」


 だが、死神の動きは止まらない。サイズこそ小さくなったが、残った骨で死神は、先程までと同じ姿を形成する。そして、自分自身を発光させると、お構いなしに辺り一面に雷をばらまき始めた。


「あら」


 その雷は、この結界内全てを埋め尽くす。逃げ場などない。数秒間、雷を放出し終えると、死神は辺りをを見回した。そこに、シデンの姿はない。だが、結界は解除されていなかった。


「言ったでしょう。私は、存在を感知させなくする事が出来る」


 その声は、死神の真後ろから聞こえた。何も不思議なことはない。シデンは、転移で結界の外に出たのだ。自由に出入り出来るのは、シデンだけ。最初から、逃げ場はいくらでもあった。


「炎」


 青白い火の玉が、シデンの尻尾から放たれる。それは、死神に到達すると、その体を一気に炎で包んだ。


「アアアアアアアアアアアアア!!!!」

「どうです、浄化の炎は?実体を持たない特性を持った貴方には、初めての痛みでしょう。楽しんで下さい。それが、貴方が最後に感じる感覚。生きるという感覚なのだから」


 死神は、痛みで動きを止めた。初めて感じる痛みに、どうすることも出来ずに死神はもがいている。そこに、シデンが雷の鎖を突き立てた。


「終わりです」


 シデンが、扇子をしまう。すると、鎖が死神の全体を包み込み、小さく圧縮されていく。やがて、鎖は全てが圧縮されて、塵も残さずに消えた。


「おっと、言い忘れてました。私は、貴方の思考を読むことが出来る。それではさようなら、生まれたばかりの創世級さん」


 それは、数分の出来事。未来を予測し、思考を読む。万物を操り、感覚を狂わす。その強さ、理不尽極まりないシデンモードの前では、記憶を食らう死神とて。いや、だからこそ相性が悪かった。その実力、無限の再生能力すら発揮することが出来ずに、死神は消えた。シデンは、敵がいなくなった大地を一瞥する。そこに扇子を振るうと、結界を形成したことによって消えた植物たちが成長し、その姿を取り戻した。


「意外とあっけなかったですね、ご主人様」


 そう言って、シデンは転移する。それは、君が強すぎるからだろと、内心俺はツッコミを入れた。



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