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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・二部 全妖神狐 シデン編
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先の形

「そう言えば、おかしな話ですね。未だに、シデンは中級。流石に、そろそろ進化してもいいと思うのですが」

「その通りです、ミルクさん。私の観察から見ても、すでにシデンさんの身体は安定し、次の段階に移行する準備ができている。そう思うのですが、シデンさんは、未だに進化していません。……何かが、貴方の進化を止めているんじゃないですか?」

「私自身の、何かがですか?」

「そうです、シデンさん。例えば、変わってしまうことを恐れているとか?」

「……それは、あるかもしれません」

「ええ~!!今更、そんなことで悩んでいるんですか!!」

「ミルク姉さん、私にとって、ご主人様に愛される容姿。この今の姿こそが、最良であると思います。これ以上が、思いつかないのです。むしろ、これ以上はご主人様に愛されるか、不安で……」

「シデン、大丈夫だ。俺は、お前を離しはしない」

「ご主人様……」


 俺は、シデンを抱き上げて頭を撫でた。シデンは、嬉しそうに俺の手に頭を擦り付けてくる。かわいい。


「容姿なんて、変化させなくて良いんですよ。ただ、強くなった己さえイメージすれば良いんです。私も、これ以上のおっぱいにはなれないと思いますが、強くなる気は満々ですよ!!ただ、これ以上強い私となると、まだイメージが固まらないのですが」

「これ以上強くなった、ミルク姉さんですか?」

「……確かに、想像できませんね。ただでさえ強いミルクさんが、普通の枠に収まるとは思えません。その先がある。これはレムさんや、フィー姉さんよりも想像できませんよ」

「まぁ、私はスペシャルですからね!!」


 確かに、ミルクのこれ以上強くなった力とか想像できない。カザネであれなのだ。それほど強くなったミルクとか、パンチ一つでどこまで破壊できるんだ? 想像できない。


「で、どうですシデン。覚悟は、決まりましたか?」

「少し、時間を下さい」

「いいですよ。焦らなくても大丈夫です。どうせ中級でも、貴方なら、あんな骸骨ごときに負けはしない。私は、そう信じていますから」

「ミルク姉さん。……いえ、ミルク師匠」

「まだまだ強くお成りなさい、シデン。ご主人様の為に」

「はい!!」


 シデンは、ミルクに元気に返事をする。そして、お互いにサムズアップした。いいコンビだな、この2人も。


「取り敢えず、今日はもう寝ましょう。調査は、明日からね」

「そうだな。おっと、他の皆の様子も見てくるよ」

「そうね。行ってらっしゃい、ベイ」

「ああ、ちょっと行ってくる」


 俺は、学校の寮に向かってシデンを下ろすと、転移した。そこで、サラサ達とおやすみの挨拶をする。ロザリオも、こっちに来ているので、あとで送らないといけないな。7日後くらいかな。普通に移動したとして。それぐらいに、ロザリオの学校にまた送ろう。皆と挨拶をし終えると、俺は戻って、アリー達とベッドをくっつけて寝ることにした。こっちで騒ぎがあった時、対応できないといけないからな。こっちで寝ないといけないだろう。そして、あっという間に朝になった。


「清々しい朝ね」

「そうだね」

「町中に、普通に幽霊がいるこの光景以外は」

「そうだね」


 俺達は、朝の食料の買い出しがてら、町の商業区に来ていた。そこでは、幽霊の方々が普通に徘徊している。道端で、寝ている幽霊もいた。幽霊も寝るんだな。


「あ、これとこれとこれ下さい。皆さんは、何がほしいですか?」

「え、良いの?」

「ええ、国からお金はもらっていますので、なんでも買って下さい」

「じゃあ、これとこれ」

「私は、これで肉料理を作るわ」

「私は、これでスープを作るよ」

「……」

「ニーナは?」

「あ、えっと……。私は、フルーツでデザートを」

「分かりました。これを、馬車に積んで下さい。あと、それも」


 ローゼットさんのお陰で、買い物がスムーズに進むな。しかし、ニーナが不安そうな顔で、町を見回している。まぁ、異様な光景だからな。普通に考えて。町の皆さんは、もう慣れましたという感じで普通に生活していらっしゃるけれど。


「よし、それでは戻りましょうか」

「はい」


 一旦、拠点に帰って腹ごしらえをする。その後、ニーナの家へと移動することになった。


「えっと、こっちです」

「近いのね」

「歩いて5分程です」

「本当に近いな」


 どうも、拠点のすぐ近くにあったらしい。少し道なりに進み、脇道に入って移動すると、一軒の回復魔法治療院の看板を掲げている家についた。


「えっと……」


 ニーナが、家のドアに手をかける。だが、押しても引いてもドアは開かない。


「留守です。帰って下さい。ここから離れろ、ゴーホーム」

「……いるじゃん」

「その声、おじいちゃん!!」


 ニーナが、慌ててドアをガチャガチャする。だが、ドアは開かない。


「言っただろ!!早く町をでろ!!なんで、ここまで来たんだ!!」

「なんでって、ここは私の家じゃない!!」

「そうだけど、今は帰ってきちゃ駄目なんだよ!!それぐらい分かれよ!!わしの孫だろ!!」

「家族が、心配なんだもん!!帰ってくるに、決まってるじゃない!!」

「……分かった。事情を話そう。だから、聞いたら逃げろ。お前の両親も、避難させた。残っているのは、ワシと、婆さんだけだ。そら、入れ。聞いたら、そっちの彼氏の家に帰るんだぞ」

「お婆ちゃんはいるの!!なんで、お婆ちゃんは残って!!」

「町の皆を、残していけないんだとさ。最後まで、治療のために残るらしい。まったく、頑固な女だよ。いくつになっても、ワシが惚れたままの女性だ」


 家の扉が開く。そこには、立派な髭を蓄えた老人の幽霊がいた。これが、ニーナのお爺ちゃんか。


「まぁ、入りなさい。皆さんにも、ここで起きていることの真実をお話しよう。ただし、他言無用だぞ」

「お邪魔します」


 家の中へと、俺達は入っていく。すると、奥から一人の老人が出てきた。彼女が、ニーナのお婆ちゃんか。


「おかえりなさい、ニーナ」

「お婆ちゃん!!」


 ニーナは、祖母に抱きつく。その光景を、ニーナのお爺ちゃんは若干嬉しそうに見ていた。


「この光景だけは、生き返って見た価値があるな。いや、生き返ったわけではないか……」

「それは、どういう?」

「まぁ、まずは座りなさい。それから話そう。お茶を持ってくる」


 言われるがまま、俺達は、家の待合室と思しき場所の椅子に腰掛けて待つことにした。



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