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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・二部 全妖神狐 シデン編
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話し合い

「まぁ、ともかく話してみようよ。それからでも遅くないと思うよ、アリーちゃん」

「……そうね。じゃあ、そうしましょうか。の、前に」

 アリーは、シアに渡されて改良した結界発生装置を部屋に設置する。そして、魔力を流して結界装置を作動させた。


「これでよし。さて、何から話そうかしら?」

「あ、えっと、ブラックアクセルが、ベイさんなのは事実なんですよね?」

「ああ。じゃあ、そこから話しましょうか」


 俺達は、話をするべく部屋にあった椅子に座る。その時、改めて俺はローゼットさんを観察した。長すぎない程度の自然な髪、人懐っこそうな笑顔。アリーの話も一つ一つに丁寧に頷いて反応を示し、一語一句聞き逃さないように聞いている。その上で、アリーが外にこの情報を漏らされると困るという事を言うと、なるほどと、真剣そうに頷いていた。あれ、めっちゃ良い人じゃね、この人? 改めて見ると、良い人オーラが見える。


「分かりました。このことは、国の兵士ですが、上には報告いたしません。私も、国も、ベイさんに助けていただいた身。その妻であるアリーさんがおっしゃるのです。私は、その決定を尊重しましょう」


 ほら、めっちゃ良い人じゃん。国よりも、個人に同情してくれるって、めっちゃ良い人だよ。場合によるかもしれないけれど。


「ほら、話せばわかるんだよ」

「ぐぬぬ、しかしだなヒイラ。伝手が欲しいのよ、私は。国の情報をくれる伝手が。面倒があれば逃げてと、情報をくれる伝令が欲しいのよ。シアに、国に、振り回されっぱなしの人生だと、のんびりベイといちゃつく時間が減るでしょ!!それが嫌なのよ!!!!」

「アリーさんの仰ることは最もです。我々だって、連中さえいなければすぐにでも幸せな家庭で、ご主人様との間にできた子供を育てて、最高で無敵な家族になっていたというのに」

「えっと、それは国や、シアさんのことじゃないですよね?だとしたら申し訳ないです。代わりに、謝らせて下さい」

「ああ、私が言っている連中は、違う連中ですよ。この星に存在する、破壊神共の話です」

「破壊神?」

「創世級って、知ってるわよね」


 そこまで話すのか。アリーが短めに、創世級迷宮が崩壊して、近々この星が滅ぶことをローゼットさんに伝えた。


「……信じがたいお話ですね」

「そうでしょうね」

「これ、国には言わないんですか?」

「言ったとして、証明できる?」

「アリーさんでも、出来ないんですか?」

「出来ないわよ。近づいたら、死ぬんだもの」

「お手上げというわけですか。証明も出来ないのにこのような事実を突き立てられれば、国といえど、どんな反応をしてくるか分かりません。ありえないと否定するか、調査しようとするか……。しかし、調査は調査員に死ねと言うようなもの。国としては、あり得ないと突っぱねるほうが確率が高いでしょうか」

「楽な選択肢でしょうからね。そうなるかもね」

「……なんで私、こんな事実を知らなきゃならないんでしょうか?ただの兵士ですよ?」

「でも、出世確定してるようなもんでしょ?」

「ああ、まぁ、特に学歴や手柄などのない兵士の皆様よりは、出世は速いと思いますが……」

「その立場で、私達をサポートしなさい。特に、難しいことはしなくていいわ。私達の邪魔になりそうな者の情報とか、作戦とかを伝えてくれるだけでいいわよ。それで、星ごと全員分の命が助かるんだから、安いものでしょう」

「確かに……。しかし、勝てるんですか。そんな奴らに?」


 そのローゼットさんの疑問に、答えるように皆が出てきた。


「私達と、マスターなら可能です」

「むしろ、我々と主人しか無理だろうな」

「周りの生物に影響を及ぼさず、ここまで強くなれてるの、私達しかいないでしょう」

「他のものでこの強さに至れば、周りを巻き込んでしまっているだろうからな。この星を救えるとすれば、殿をおいて他にはいない」

「まだまだ、主様には伸びしろがあるもんね」

「ベイさんなら出来ます!!」

「そうっすね」

「私達の強さも、ベイさんがいてこそですから」

「ベイさんが自由に動けなくなるのは、我々としても困るのです」

「今回は、ニーナさんの為という都合と、迷宮という都合が合致していたから来ましたが。今後は、どうなるか分かりません」

「我々としては、迷宮の魔物の討伐を優先したい。しかも、それを順番通りにだ。だから、国の思惑通りに行動できるかは怪しい。むしろ出来ないと思う」

「と、いうわけです。ですので、マイマスターに迷惑がかからないよう、配慮していただけると助かります」

「……あはは、皆さん、いつの間に」


 ローゼットさんが、皆にいつの間にか囲まれていて困惑している。気配もなく、11人も周りに出てくるんだから、そりゃあビビるよな。


「そ、そうはおっしゃいましても。皆さん、近くにいるだけで、恐怖とかするような実力には……」

「ミズキ」

「少し、解除するか」

「え?」


 とたんに、部屋の空気が一段重くなったような気がした。まぁ、俺は平気なんだが。アリー達ですら、顔から汗が出てるんだよな。大丈夫か?


「戻すぞ」

「……嘘、でしょ」

「どう感じましたか?」

「皆さん、本当に人間ですか?」

「分かったでしょう。私達が何か」

「……非常識に強い人としか」

「まぁ、そんな認識で大丈夫ですよ。ですよね、フィー姉さん」

「うん。私達は、実力を抑えています。今のは、ほんの少し周りにその実力が見えるようにしただけです。これでもまだ、私達が勝てないと思いますか?」

「……可能性は、ありそうですね」

「有りそうではありません。私達は勝ちます。そう、マスターに誓ったのですから」


 フィーの自身に満ちた言葉が、ローゼットさんを貫いた。その言葉に、皆が一斉に頷く。その光景を見ると、ローゼットさんは目をつむり、真剣な顔でアリーに向き直った。


「分かりました。出来るだけ、協力はさせていただこうと思います」

「話が早くて助かるわ」

「皆さんが、本気だということが今の話でとても良くわかりました。私になにが出来るかは分かりませんが、お手伝いさせて下さい」

「話せばわかるんだよ」

「ヒイラ、たまには話し合いもありね」

「アリーちゃんは、実力行使が過ぎるからね」

「でも、それで得したでしょ。貴方は」

「……そうだけどさ」


 ヒイラが、顔を赤らめている。かわいい。


「で、何をすれば良いんですか?」

「取り敢えずは、聖属性迷宮の情報がほしいわね。後は……」


 ローゼットさんが国の情報を流してくれることになり、今後の冒険が楽になりそうだ。だが、今は先にこの町の異変を片付けるのが先だろう。俺は、静かに何も起こっていない町を窓から眺めながら、この偽りの平和がいつ壊れるのかと、不安をつのらせていた。


「……ところで、マッサージをしていただけるというお話でしたが」

「……」

「自らそこを言うかな。普通」

「話し合いなんて、やっぱり必要ないのかもね。やっぱ、一段飛ばして交渉したほうが速いわ」


 そのアリーの発言に、皆が苦笑いを浮かべた。



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