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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・二部 全妖神狐 シデン編
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旅立ち

 翌朝、寝かせないぞと言われたが、結構寝れた気がする。皆のほうが先に寝てしまったというのが正しいが。ともかく、十分な睡眠も取れ、次の日の朝を迎えた。……そういえば、旅の準備を何もしていない。いや、牛車にまとめてある分をそのまま持っていけばいいか。あまり、時間はかからないから良いかな。


「と言っても、実際何時に来るんだ」


 朝六時頃、俺はいつも通りの早起きをして、牛車の中でそう考えた。寝ている皆を横目に、カバンの中に荷物をしまう。ものの十分ほどで、旅支度は完了した。


「そろそろ起こしたほうが良いか」


 アリーから順に、皆の肩を揺さぶって起こしていく。特に慌てることもなく、皆は先に朝食の準備を始めた。朝ごはんが出来て食べ始めた頃、アリーが皆にとあることを提案してきた。


「送ってもらうんじゃなくて、ベイの転移魔法でいいでしょ。移動するの」

「それは、良いのでしょうかアリーさん?」

「どうして?」

「いや、ベイが転移魔法を使えるということが、バレるのでは?」

「牛車ごと移動させれば、あれで移動したことに出来るでしょ。バレないわよ。移動時間も寮でゆっくり出来て、そっちのほうが快適よ」

「あ、それ良いですね。馬車に乗ったままって、結構時間持って行かれるし」

「速いのは良いね」

「じゃあ、それで行きましょう。出発前に、皆は先に送ることにして、私達はシアの用意した馬車で移動。その後、現象の調査ね」

「怪奇現象か。魔法使いの仕事じゃ、ない気もするね」

「まぁ、現象には何かしら原因があるわ。そして、理屈で説明できない以上、多分それも魔法なんでしょう。違うようで、あってるはずよ」


 幽霊。それすらも、この世界では魔法で可能なのか。実際に見るのは初めてだな。どんな感じなんだろうか。映画とか、お化け屋敷とかで見たような、あんな感じなのかな?


「皆さん、城の付近で馬車が動き出しました」

「お、来るか」

「それじゃあ、皆支度して」

「はーい」


 全ての荷物が牛車においてあるので、支度と言っても朝ごはんを済ませる程度だろう。皆、残りを急いで食べ始めた。


「それじゃあ、お邪魔しました。カエラさん」

「また来てね」

「ノービスさんは、もう出られちゃいましたか?」

「ええ。最近忙しいみたいで、出勤も早いのよ。ごめんなさいね」

「いえいえ、また必ず着ますので、その時はよろしくお願いします」

「うん、待ってるわ」


 皆が、順々にカエラと挨拶をかわして牛車に乗り込んでいく。それを、ミルクが移動させて、見えなくなってから俺が転移させた。これで、皆は寮に着いただろう。その数分後、シアが馬車を引き連れてやってきた。


「おまたせ!!」

「結構、しっかりした馬車にしたのね」

「わかる?安物じゃないんだよ。配慮して、運転手も頼りになる私の部下の女性だし、完璧じゃない?」

「それはありがたいんだけど、実は牛車を持っていってもらおうと思ってね。だから、先に皆は返したわ。それでも良いでしょう?」

「ああ~、先に言ってほしかったような……。まぁ、良いや。じゃあ、それで行こう。あ、ミシェル達はお客さんが先に行ったみたいだからさ。予定通り、移動を開始してくれる。そう、そのままでいいから」

「で、私達が乗るのがあれと」

「頑丈そうな馬車だな」

「そうね。まるで戦争にでも行くみたい」

「魔法で加工してあるみたいだね。結界も、張れる仕様なのかな?」

「アウダレイシアに、帰れる……」


 ニーナが、腕に力を込めて馬車を見つめていた。その顔は、何か決意を固めたかのような凛々しさがあった。


(……心配です)

(安心しろ、シデン。そのための俺達だろ)

(そうですね、ご主人様)


 念話で、シデンとそう会話したが、俺も少し不安だった。幽霊と合うなんて、初めてだもんな。この現象の裏に、なにがいるにせよ、ろくなものではない気がする。俺は、そう思っていた。


「よし、じゃあ行こうか。出発!!」

「ベイ、行ってらっしゃい!!」

「行ってくるよ、母さん!!」

「アリーちゃん達も!!」

「行って来ます、お義母さん!!」


 別れの挨拶も済ませて、俺達は馬車に乗り込み、アウダレイシアへと向かった。


「じゃあ、あとよろしく」

「シアは、来ないのね」

「ごめんね。残ってすることがあるからさ。話は通してあるから、大丈夫だよ。それじゃあ、またね」

「あまり会いたくないけどね」

「ひ、ひどいなぁ……」


 そう言うと、シアも城に帰って行った。馬車に揺られながら、他愛もない会話をして俺達は暇をつぶす。過ぎ去っていく景色を眺めながら、俺達はアウダレイシアに着くのを待った。


「ねぇ、あの馬車を動かしている女性。結構、美人じゃない?」

「そうだね。顔も凛々しいし、頼れそう」

「ああいう子がこっち側だと、色々情報が聞けそうよね。色々と」

「アリー、何を言っているんだ?」

「最近、シアに良いように使われすぎている気がしてね。やっぱそういうとこに、情報を伝えてくれる内通者がほしいなぁ的な」

「国に内通者って、いけないのでは?」

「自国の情報知るぐらい、良いでしょ。敵じゃないんだから」

「そういう問題なんだろうか」

「内通者って、いい方をするから駄目なのよ。ようは、知人よ知人。それならいいでしょ。知り合い。仲のいいね」

「そんな簡単に、仲良く慣れるかな?」

「出来るでしょ、ね」

「……そうだね」

「え?」


 ヒイラが、またアリーちゃんはよからないこと考えて、みたいな顔をしている。その顔を見て、俺はアリーに目を向けたが、アリーは俺のお腹あたりを優しく指でつついていた。


「……」

「ベイがいるもんね」

「え?」


 今のえ? は、俺ではない。ニーナだ。かなり思い詰めていた顔していたが、そのアリーの発言に思わずニーナは素の顔に戻った。

 

(まぁ、ご主人様なら余裕でしょう)

「ほら、ミルクもそう言ってるし」

「いやいやいや、なんでそうなるんだよ。俺だから大丈夫って理由が理解出来な」

「マッサージ、したの覚えてる?」

「……いや、しないからね!!しないでしょ、普通!!」

「どうかなぁ~」


 チラッと、アリーは馬車を操作している女性を見た。すると、女性が少しビクッと震えた気がする。こわ。うちの妻、怖い。そう思いながらも、馬車はアウダレイシアに向けて進んでいった。



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