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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・二部 全妖神狐 シデン編
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少数精鋭

 次の日。俺達は、シアに調査に出かけるという返事をした。だが、それに対して意外な答えが帰ってきた。


「えっと、それじゃあ悪いんだけど。サラサちゃん達は、一旦学校の方に戻ってもらえるかな。送るからさ」

「は?」

「えっと、それはどういう?」

「いや、悪いんだけどね。今回は、本当に危険だから。なんせ相手は、物理攻撃が効きにくいゴースト軍団だからね。もしもなんてあっても、責任取れないし……」

「一応、効くんですか?」

「気を纏っての攻撃なら、ちょっとは効くらしいよ。でもさ、あまり効果ないみたい。サラサちゃん、レラちゃん、サラ&レノンちゃん。ついでに、あまり実力のないロデちゃんとロザリオちゃんも行かないほうが良いかな。相手は、壁とかお構いなしにすり抜けてくる相手だからね。ちょっと、大人数で行くには不向きな場所かな。ニーナちゃんは、例外として」

「なるほど。熟練の魔法使いでもなければ、生き残るのも厳しい地域というわけですか」

「この中で、唯一同行できそうなのがヒイラさんのみ、というわけですね」

「その通り」


 皆の意見に、シアが指をパチンと鳴らして答える。その発言に、ヒイラが何か疑問をいだいたらしく手をあげた。


「でも、幽霊って今は、友好的なんですよね?何故、それで危険だと?」

「いや、友好的な奴ばっかじゃないよ。すでに、荒くれていた幽霊は何体か成仏させたからね。城の魔法使いたちも、働いているわけよ。それで、兵士が全く役に立たなくてね。ある程度熟練した兵士でさえも、それだったらしいからね。気を抜ける街ではないと思うなぁ。まぁ、今はだいぶ平和らしいんだけど。一部の幽霊たちは、何処か浮かない顔をしてるって言うしね」

「なるほど。それなら納得ですね」

「いや、そんな状態の街に行って大丈夫なの?プライバシーとか大丈夫?夜に怯えたりしなくていい?」

「ああ、それは結界を張って寝られれば大丈夫だよ。ほら、そのための結界アイテムも、おつけしましょう」

「……安っぽい作りね」

「いや、これでも城の魔法使いが、総力を上げて作った!!」

「これをこうして、こうと……」


 アリーが、渡された宝玉のようなアイテムを、魔力でいじっている。すると、赤い宝玉が紫色に変化した。


「出来た」


 アリーが、宝玉を天にかざす。すると、アルフェルト家の敷地一帯が魔力の結界で覆われた。


「……範囲が、2倍くらいでかくなってる」

「5倍よ。5倍。これだと、テントが精々な範囲でしょ。良く、これで今までやってこれたわね」

「いや、一部屋覆えばいいだけだし……」

「出力もなってないじゃない。無駄が多すぎ」

「流石、アリーちゃん。城の技術力が、全く目じゃないわね。私の目に、狂いはなかった」


 今や、未来のアリーと融合して、神才とまで化したアリーだ。これぐらい、お茶の子さいさいだろう。 ……正直、何をやったのか俺にすら理解できていないが。まぁ、それほど天才ということだ。


「アリーちゃん、それだと一日もたないんじゃない?」

「ヒイラ、ここよ。これ」

「ああ、自分で供給出来るようにしたの。それなら安心だね」

「魔力の充填も早くて、長持ち。ここまでで最低ラインでしょ。結界アイテムって言うからにわ」


 ……流石、天才2人。何を見ていっているのか、さっぱり分からん。いつの間に、そんな魔法機構を編み出したんだ。俺にも教えてほしい。


「……それ、お城に持って帰っても良いかな?」

「駄目。私の特許魔法だから」

「いやいや、そんな硬いこと言わずに」

「返すなら、もとに戻しておくわよ。当たり前でしょ」

「……」


 シアが、ケチーという顔でアリーを見ている。だが、アリーは涼し気な表情でそれを見ていた。


「でも、アリーちゃんが行ってくれれば解決できそうだね。それで、よしとするよ」

「……どうかしらね。私でも、幽霊に関わるのは初めてよ」


 あれ、未来のアリーでも関わっていないのか?


「まぁ、そこは何とかなるでしょ。アリーちゃん達なら、大勢の幽霊の大群からも、無傷で生還できるよ。信じてる!!」

「はぁ……、根拠がない信頼を持たれてもねぇ。でも、ベイがいるんだし、無傷なのは確定しているけどね」

「ああ。アリー達は、俺が守る!!」


 すんなり俺の口からその言葉が出る辺り、俺の覚悟の深さを俺自身も自覚してしまう。アリーが傷ついたら、俺の怒りがどこまで登るかわからない。街を、消してしまいかねないからな。そんな事態は、俺自身避けたいところだ。


「じゃあ、明日出発ということで。他の皆も明日、学校に送るよ。そろそろ授業聞いとかないと、置いていかれるかもしれないし、速いほうが良いでしょ?」

「……ああ、すっかり忘れてた。授業のこと」

「戦士科だし、そんな事態にはならないでしょ?」

「契約学とかぐらいかな。聞いとかないといけないの」

「出席日数は、今までのはOKで通ってるんですよね?」

「そこは勿論大丈夫。でも、あまり長いことOK取らせるのもちょっと、難しいかな」

「ああ、そういう」

「特にロザリオちゃんのところは、特別うるさくてね」

「……うちって、そうなんですか?」

「ロザリオちゃん、結構あっちだと優秀生徒でしょ。あまり危険を背負わせたくないみたいでね。特に、優秀な生徒には。お金も、かなり払ってるんでしょ。ロザリオちゃんのうち」

「そうですね。確かに、私の住む寮の新設費用を全額寄付した覚えが……」

「ぜ、全額!!!!」

「わ~お。太っ腹!!」

「お母さんが、絶対他の男子と一緒の寮に住ませられないって入学前から言ってて。それで、別の寮をまるごと建てることに」

「……なんか納得だわ。それ、納得の理由」

「そうかな、ロデ?」

「満場一致で納得」


 全員が、うんうんと頷いている。今でこそ女性だが。その前から、この容姿でロザリオは男性だったんだもんな。 ……うん、やばい匂いがプンプンするぜ。


「というわけで、皆も明日には荷物まとめといてね。それじゃあ、明日の朝に迎えをよこすよ。それじゃあね」


 そう言うと、シアは城に帰ってしまった。昨日もそうだったが、まだまだ忙しそうだな。


「幽霊退治か。この、神才である私がね……」

「アリーちゃん、本当に初めてなの?」

「そうよ。ベイがいない世界では、そもそも古代神魔級迷宮が出てきてすらいないんだもの。こんな事態、初めてよ」

「そうなんだ」

「でも、変わり始めてるってことよね。この世界が、ベイの手によって」


 アリーが、真剣な顔をして遠くを見つめている。その顔を見ていた俺は、唐突にサラサに担がれた。


「え?」

「ベイ君」

「今夜は、寝かせないぞ」

「そういう事だ、ベイ」

「……ま、当然よね」

「が、頑張る!!」

「レラさんまで乗り気に!!」

「ニーナは、何時までもうぶね。ま、それもありか」

「よし、運ぼうー!!」

「「「「わっしょい、わっしょい」」」」

「えっ?えっ!!」


 抵抗する暇もなく、俺は元気に牛車へと運ばれていった。



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