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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・一部 幻音神鳥 カザネ編
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風魔神鳥

「そんなボロボロの状態で、まだ周囲を気にする余裕があるのか。面白い。では、その余裕をなくさせてやろう!!」


 カザネは、オーギと戦闘しながらも周囲の風の動きを魔力で捉えて、町の人間に被害が及ばないように考えて立ち回っていた。だが、そのカザネの立ち回りを、オーギはカザネの挙動から察していたようだ。


(洞察力も普通ではないか……。良く見えている)


 そう考えるカザネに向かって、再びオーギが突進してきた。拳を振りかぶって。カザネを殴りつけようとする。カザネは、その拳に蹴りを合わせ、距離を取るようにオーギの拳を蹴って後ろに飛んだ。


「なるほど、驚異的な身体能力と言わざるおえないな。正々堂々とした、真っ向からの揺るぎない力だ。ただの小細工では、ダメージすら通らんというわけだな」

「その通りだ。我が身体は、漲り渦巻く風の魔力の塊。普通の攻撃では、そもそも我が身体を傷つけることすら叶わぬぞ。もっと強い攻撃でなければ、我には傷一つつけられん!!さぁ、全力でかかってこい!!」

「……ふぅ」


 カザネは、オーギを見据えながら深呼吸して息を吐く。そして、ゆっくりと攻撃の構えを解いた。


「なかなかやる相手のようですね、ご主人様」

「ああ、強いな」


 カザネの戦闘を、ベイ達は出来るだけ近くで見守っていた。だが、まだ誰もカザネを助けに行こうとはしない。何故なら、カザネの行動そのものが、負けを認めていなかったからだ。


「勝てますよね、カザネ」

「カザネは、もう立派なヒーローだ。これぐらい、ピンチのうちにも入らないさ」


 そう言ってベイは、息を吐き終わり、構えをといたカザネを見守っていた。


「なんだ、何のつもりだ?」

「正々堂々と、真っ向勝負!!!!」


 カザネが、そう言って目を見開いた。カザネの鎧に付いている緑のラインに沿って、カザネの鎧中に、風の魔力が行き渡りその全身を包んでいく。


「フル・アクセル!!」


 周囲の風が荒れ狂い、強風を当たりに撒き散らした!!風の魔力に全身を包まれたカザネは、そのままオーギに向かって突進する。そして、そのままオーギの腹に向かって蹴りを放った!!


「しっ!!」

「ぐおっ!!」


 オーギは、カザネの動きが見きれずに、もろにカザネの蹴りを腹に受けてしまう。そして、その蹴りの威力で、町の外へと吹き飛ばされていった。その飛ばされたオーギを追うように、その場からカザネが消える。


「俺達も行こう」

「はい」


 その後を追って、ベイ達も移動を開始した。


「ふっ!!」


 カザネが、町を離れきったところでオーギに追いつき、拳を放つ。だが、その拳をオーギはガードした。


「ふはははは!!やはりな、こうでなくてわ!!では、我も本気の勝負をするとしよう!!」


 オーギの身体から、風の魔力が溢れ出す。それはオーギの身体を膨張させ、その体の筋力を増加させた。


「さぁ、真っ向勝負といこうか!!」

「望むところだ」


 カザネとオーギは、その場で睨み合う。そして、どちらからともなく相手に近づき、相手の顔面めがけて拳を放った!!


「はぁっ!!」

「はぁぁあ!!」


 2つの拳が、お互いの顔面を捉える。カザネの鎧の頭部にヒビが入り、オーギの顔もまた、カザネの打撃で歪んでいた。


「ふっ」

「……」


 カザネとオーギは、お互いに腕を引き、再度反対側の拳に力を込める。そして、相手の拳を躱しながらその拳を叩きつけようと、何度もお互いに高速で拳を交差させた。


「はぁあああああ!!!!」

「でぇああああああ!!!!」


 カザネとオーギの突きが、どんどん速度を増していく。その間に、カザネもオーギもお互いの拳を避け続け、お互いに拳を放ち続けた。空中で、風の魔力がせめぎ合っている。そして、遂に片方の拳が、相手の腹を捉えた!!


「ふっ!!!!」


 それは、カザネの拳だった。その突きの威力に、オーギは一瞬動きを止めて、口から血を吐き出す。


「ガハッ!!」

「これほどまでに早くした拳だ。並ではあるまい」

「ははっ、その通りだ。だが、まだ我を倒すにはぬるい!!」


 オーギは、再びカザネ目掛けて拳を放つ。カザネは避けたが、鎧の一部が、その攻撃ではじけ飛んだ。完全にかわしたつもりでも、攻撃の威力が周囲に残り、カザネの鎧にダメージを与えたのだ。だが、カザネは気にすること無く、すぐにオーギの身体に攻撃を放ち続ける。


「はぁあああああああああ!!!!」

「うぐっ!!ガハッ!!ま、まだまだぁああ!!!!」


 オーギの拳の威力も高まっていっている。だが、それ以上にカザネの速度が高くなっていっていた。オーギの拳を紙一重でカザネは避け続ける。その度に、鎧が剥がれていったが、カザネは休みなくオーギを殴り続けた。


「でぇぁぁああああ!!!!」

「ガハァッ!!!!」


 カザネの拳が、再びオーギの腹を捉える。そして、その拳を腹に受けたオーギは、大量の血を吐き出した。


「ぐぬっ……」


 オーギが、空中でふらついて一歩分後ろに引いてしまう。その間に、カザネは身体に纏っている全風の魔力を脚に移動させた。


「終わりだ」

「笑止。我はまだ、立っている!!」


 オーギも、その拳に風の魔力を集中させた。腕の筋肉が盛り上がり、周囲を揺らす。


「お前の敗因は、私の動きに追いつけなかったことだ」

「抜かせ、思いあがるなよ!!最後に死ぬのは、お前の方だ、黒き戦士よ!!」


 一瞬、周りの音が消える。そして、2つの風の魔力を纏った打撃が、空中でぶつかりあった!!


「フルアクセル・ソニックキック!!」

「剛掌!!」


 衝撃が辺りに伝わっていく。周囲の雲がはじけ飛び、辺り一面に青空が広がっていた。拮抗する2つの力がぶつかり合う。片方はスピード、片方は筋力がその短い間にも増大し、その威力を高めていく。そして、一方の力の増大が、もう一方を上回った。


「我の、腕が!!」


 オーギの拳が、徐々に押し返されていく。もう片方の腕を添え、オーギは耐えようとしたが。増大したカザネの蹴りの威力を支えきることは出来なかった。カザネの風の魔力が、オーギの腕を吹き飛ばしていく。遂に耐えきれなくなったオーギの腕は消し飛び、オーギの胴体には巨大な穴が空いていた。


「お前、遅かったな……」


 脚から、ゆっくりと風の魔力を消しながらカザネは、パチンと指を鳴らす。そして、その音にオーギはニヤリと笑うと倒れ、その場で爆発した。


*****


「……おわったか」

「なんだと?」


 ライオルの攻撃を躱し、アーケオが動きを止める。そして、ライオルと距離を取った。


「呼んでいる、迷宮が」

「逃がすかよ!!」

「無駄だ。もう、我には誰も追いつけない。その為に、最後に残ったのだから」


 そう言うと、アーケオはその場から消えた。ライオルに、その動きが全く見えていなかった。ただ、一瞬だけアーケオが別の風の魔力に包まれていたのが見えた。


「ふぅ……、予定通りではあるが、我が最後の一羽となってしまったか」


 迷宮内に帰還したアーケオは、中央の椅子へと座る。そして、目を閉じた。アーケオの周りの景色が、徐々に歪んでいく。オーギが殴り倒した木々が魔力として粉砕されていき、その他の迷宮内の全ても同じようにして魔力となってアーケオの元へと集まっていった。迷宮外を渦巻いていた風の魔力も消え、アーケオへと取り込まれていく。そして、全てを取り込んだ時、アーケオは何もない山の中央に立っていた。いや、それはもうアーケオではない。その身体は、薄緑色の装甲で覆われていた。その姿は、まさに翼を持った竜の鳥人間。鋭く透き通るような装甲のようなくちばし。全部がまるで鉱物のような透き通った羽。その全てが、今までのアーケオとは桁違いの魔力を放っていた。


「なんだ、あれは?」


 シアが、その魔物を遠くから見てそう言う。その魔物を見ていると、何故だかシアは呼吸が出来ず、体中が冷たくなっていっているのを感じた。シアは、急いでその場から離れるように周りの兵士たちに指示を出そうとする。だが、その場にいた全ての兵士が気絶していた。


「この威圧感……」

「まさか」

「創世級……」


 ライアと、ガンドロス、治療を終えたジーンがそう呟く。彼らを気に留めることもなく、その魔物はこう言い放った。


「我はウインガル。今、神魔級迷宮と一つとなった、この星に選ばれた新たなる創世級・ウインガルだ!!」


 創世級魔物・風魔神鳥ウインガル。最悪の魔物が、この世に誕生した瞬間だった。



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