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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・一部 幻音神鳥 カザネ編
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豪風

 時が過ぎ、一夜が明ける。多くの住民がいつものように朝ごはんを食べ、いつもどおりの朝を過ごした。ベイ達も、それは同様である。一日、敵の襲撃もなく、穏やかに平和に彼等は朝を迎えた。


「へっくしゅ!!しかし、こう強風が吹いている所にいると冷えるね」

「全くだ。火をつけても、すぐに消えちまうしな。しんどいぜ、こりゃあ」

「俺は、なんともないが」

「何時まで、ここにいれば良いんでしょうかね?」


 だが、敵の本拠地に泊まり込んでいたシア達は違っていた。さきの取り逃がした魔物を追うべく、二手に別れようとした一行だったが。すぐにその魔物をカザネが倒してしまったがために、再びその場で野営することになった。今も、いつでも戦闘を出来る体勢を取りながら、朝ごはんのパンを片手間に食べている。ライアが、風の冷たさに若干身体を震わせ、火魔法を自分の近くに出して温まり始めた。その時だった。


「?」

「なんだ……」


 風の壁の中を、なにか黒い物体が近づいてきているのが見えた。それは、まるで歩いている人間のようなシルエットをしており。ライア達に、ゆっくりと近づいてきている。ライア達は、すぐに武器を構えて戦闘態勢をとった。だが、ライア達に殺気を向けられてなお、その影は何もないかのように悠然と歩んでる。そして、その影が風の壁を抜けた。


「人間か。強者はいるようだが、お目当ての相手ではなさそうだな」


 そいつは鳥人間だった。鋭い目つきに白い体毛。羽は黒い毛で覆われており。その大きさは、この場で一番大きなガンドロスよりも屈強で、さらに巨大であった。その出で立ちは、オウギワシと言われている鳥に近い。その屈強な肉体は、鳥本来のものからかけ離れており、まさに怪物という出で立ちであった。


「やっと出てきやがったか!!」

「準備運動くらいにはなるか」


 ガンドロスが、気を纏ってオーギに斬りかかる。ジャンプして、上段からオーギ目掛けて剣を全力で振り抜いた!!


「おりゃあああああ!!!!」

「ふっ」


 オーギが、軽く息を吐くとガンドロスの剣をその手で掴む。そして、その斬撃と衝撃を完全に止めた。


「ああ?」

「良い重さの攻撃だな。だが、軽い」


 オーギは、そのまま振りかぶると、掴んだ剣ごとガンドロスを投げ捨てた。


「ぐおっ!!」


 重量級のガンドロスを、軽々とオーギは投げ捨てる。ガンドロスは、空中で体を捻って衝撃を受け流し地面に着地すると、オーギに向かって警戒するように剣を構えた。


「それだけか」

「なっ!!」


 瞬時に、オーギがガンドロスの前へと移動する。その動きが、あまりにも早すぎたために、ガンドロスは反応が遅れた。だが、ガードするべく剣を即座に構え直す。オーギの拳が、ガンドロスの剣に当たろうとした。


「おい」

「……」


 その瞬間、ジーンがオーギを攻撃する。ジーンが、音もなく移動しガンドロスだけに意識を向けていたオーギの羽を切り裂いた。だが、その羽根には、傷一つついてはいない。まるで、羽ではないかのように、その羽根はジーンの剣をそのまま弾き返した。


「なっ!!」

「見事な動きだ。だが、攻撃が鈍いな」


 オーギが、空中に剣を弾かれて浮いたままになっている状態のジーン目掛けて、裏拳を放つ。ジーンは2本の剣でガードしたが、為す術無く吹き飛ばされた。周辺の木々に当たり、その木々を数本砕いたところでやっとジーンは止まる。そして、そのまま血を吐き、力なくその場に倒れた。


「ジーンさん!!」

「風炎魔神!!」


 ライアが、火の魔力と風の魔力で出来た魔神を出現させる。その魔神が、オーギに向かって拳を振るった。その体格差は、一見するとオーギが簡単に潰されそうな体格差であったが。


「ふん」


 オーギは、魔神の攻撃を、あっさりとその片腕で止めてみせた。


「瞬爪!!」


 ライアの叫びとともに、魔神の拳から風の刃がオーギ目掛けて襲いかかる。風の刃が確実にオーギを捉え、辺りの土を大量にえぐり、舞い上げてその威力が強大であることを示した。だが、その中でオーギは無傷のまま佇んでいた。


「そんなバカな!!」

「魔法使いか。小賢しいが、大した威力だ。だが、この程度の風魔法では、我が肉体に傷一つつけられぬ」


 オーギが、腕に力を込めると魔神の拳を押し返した。


「だったら、炎刃だ!!」

「ふん!!」


 オーギは魔神を押し返すと、即座に拳を構え直し、再度魔神目掛けて拳を撃ち放つ。その攻撃に、ライアは合わせる形で、魔神の拳から炎の刃を放った!! オーギの正拳突きの衝撃と、炎の刃が空中でぶつかる。互いの攻撃が空中で相殺し合ったが、その後すぐにオーギが二発目の正拳突きを撃ち放ち、魔神を粉砕した。あっさりと消滅した魔神を見て、ライアは驚愕の表情を浮かべる。


「はぁああ?何よそれ!!でたらめな威力すぎるでしょ!!」

「これで終わりか?」


 オーギが、ライアとシア目掛けて拳を構える。その間に、ガンドロスが割って入って剣を構えたが、それとは別の角度から光の塊がオーギ目掛けて飛んできた。


「ぬっ!!」


 その光の塊は、オーギの羽を斬りつける。羽でガードしたオーギだったが、その羽が切られていた。だが、切られた羽は、わずか一枚にすぎない。けれども、オーギは苦悶の表情を浮かべた。


「この状態の我に、傷をつけるとは……」

「……」


 光の塊は答えない。ただ、無言で剣を構えてオーギを見ていた。


「ふふっ、胸躍る相手のようだが、今日は先約があるのでな。お前とは今度にしよう」


 オーギの周りを、風の魔力が渦巻いていく。その魔力にオーギが包まれると、オーギはその場から消えた。


「……転移、ではなさそうだが。単に猛スピードで移動しただけか。追わねばならんだろうな」


 光の塊は、そのまま天へと登ると、サイフェルムの方向へと飛んでいく。その動きを、ライア達は目で追って固まっていた。


「あっ、こんなことしてる場合じゃない。ジーンの治療を!!」

「もう、救護班がやってくれています。後は任せましたよ、おじ様。サイフェルムに連絡を!!」


 オーギは、シアとライオルの予想通り、サイフェルムへと向かっていた。そのサイフェルムへと接近するオーギの風の音を、カザネは自宅の庭で聞き取り、静かに立ち上がった。



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