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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・一部 幻音神鳥 カザネ編
355/632

家族

*****


 風の壁に覆われた森の中に、轟音が響いている。そこにあった巨大な木の迷宮は、一本も残すところ無く折られ、その大地を埋め尽くしていた。


「……ふっ、流石に我々2羽になっただけのことはある。宿っている力のあがり方も、今までの比ではないな」

「それは良いが、いつ向かうんだ?こう、木を折る音ばかり聞かされるのは退屈なんだが」


 立ち尽くしていたオーギの元に、残りの一羽が舞い降りる。オーギは振り向きもせず、ただ拳を空に向かって一撃打ち放った。大気が歪み、空気中に小さな風の渦が形成される。それが迷宮の壁に当たると、暫くして消滅した。


「一日は待つ。相手は、戦いを終えたばかりだ。全力でやりあえなければ意味がない。だが、我も我慢強い方ではないからな。一日が限界だ。相手が一流の戦士であるのなら、それだけあればなんとかするだろう」

「敵に回復の時間を与えるとは。勝つ気があるのか?」

「この迷宮を見渡して、我が負けるつもりだとでも思うのか?」

「ふっ、そうだな。存分に慣らしていくと良い。だが、そろそろ寝たいんでね。今ぐらいは、静かにしてくれたまえ」

「……ああ」


 そう言って、その鳥人間は飛び立っていく。オーギはその場に座り込むと、静かに目を閉じて眠り、明日の戦いに備えることにした。


*****


「なるほど、全員で洗える十分なスペースね」

「お風呂の中も、それぐらい広いほうが……」

「勿論、全員が入ってまだ余裕があるくらいじゃないとダメよ。問題は、機能性を考えるとどういう配置と設計のお風呂にするべきか……」


 細かいよ、話し合う内容が。


「深さは、通常通り?それとも、泳げるくらいが良い?」

「どうしてです?」

「潜っての、アピールも可能でしょう。ミズキとか」

「いや、そこは普通で行きましょう。立泳ぎでお風呂とか、癒やされません」

「そうね」


 プール? プールなの? そのお風呂、温水プールか何かなの?


「ロデ、予算は」

「そうなると、かなり高額ですよ。……これぐらいは余裕で」

「ふむ、いくら出せる?」

「当初予算ですと、これくらい」

「……ベイが魔物の素材を売りまくれば、差額はすぐね。それで、見積もりだしてみて」

「分かりました。……家というより、町の1区画かなにか何ですけど。これ、大丈夫なんですか?」

「土地代は都市の外れだから、少なくて済むでしょう。まだ空きは十分あるし、大丈夫よ。ダメなら、見積もりした段階で提示して」

「はい」

「ロデ、うちのつての職人さんを頼れば、安く出来るかも?」

「なるほど、材料費は別負担で入手。工事は、こっちのうちの業者でかぁ。ナイスねロザリオ。これでいくらか浮くはず」


 話がまとまってきている!! もう完全決定まで、後一歩ぐらいまで進んでる!! 速い!! 速過ぎるよ!! そんなにすぐに家建てるの!! って、言うぐらい速いよ!! 学生、僕らまだ学生です!!


「まだ、内装が決まってないのよねぇ。ヒイラ、ニーナの言うように図書館や倉庫。サラサ、レラの言うような訓練ができる建物。ロデや、ロザリオの言うような仕事部屋的な部屋。ミルクの言う、牛乳作成用の部屋など。まだまだ考えることが多いわね」


 おい、最後ひどいのなかったですか? アリーさん、ひどいのありませんでしたか?


「細かく見積もりを出して、最終的につなげて全体見積もりとしましょう。そこで発注ということで」

「そうね。再来年くらいには、発注予定にしましょうか。お金と作成希望書と予定があっていれば」

「了解しました!!」


 何が始まるんです? って、聞きたくなるくらいに大掛かりだな。それ、本当に家なの? 何かの会社だったりしない?


「私が建てても良いのですが。材料さえ揃えば」

「あっ……」

「ミズキ、あなた、最高か」

「そうですよ!!ミズキにやってもらえば、工事費用なんていりません!!むしろ安心!!」

「その手があったか!!ならば、材料費で、こうなって、こう計算が!!」


 うちの最強ニンジャが、椅子から立ち上がってしまったな。これは、再来年には家が建つ。確実に建つぞ。


「私は、庭に遊び道具がほしいです。子供たちを遊ばせたいので」

「なるほど、いいアイデアねカザネ。子供への、配慮は大事よね」

「はい。のびのびと育てる、いい家にしましょう」


 カザネが、ニッコリと微笑んでそう言う。そして、俺を見た。皆も、チラッと俺を見た気がする。……頑張ろう。頑張るよ!!


「おっと、そろそろご飯の時間ね。じゃあ皆、作りましょうか」

「はいはい」


 ぞろぞろと、皆が立ち上がって台所へと移動する。毎度思うけど、凄い光景だよな。この人数で料理って、どんなの作るんだよって気がする。まぁ、量がいるから、これぐらいで良いのかもしれないけど。……ふと見ると、カザネがまだ座っている。まるで感極まっているかのように、椅子に座ってホッとした様な表情をカザネは浮かべていた。


「主人、幸せですね。皆で集まって、家の話をして。未来の子供のために準備をする。順風満帆って、こういうことなんでしょうね」

「……そうだな。家族って、こういうことだよな」

「家族。……素敵な響きです。迷宮で生まれた私には、縁のない言葉だったでしょう。周りが常に敵のみだったあの頃からは、考えられないほどの素敵な言葉です」

「そうか。俺も正直、ここまでになるなんて思ってなかったけどな。アリーと、フィー達とのんびり暮らすぐらいになるかと思っていたが。まさか、ここまで大切な人が増えるとは……」

「守りたいです。皆さんを、主人を。大切な妻仲間を、その未来の子供たちを。そして、私と貴方の子供を」

「……俺にも守らせてくれ。一緒に頑張ろう。皆で、平和と幸せを掴もう。それが、家族だからな」

「はい。私達は、家族です」


 カザネが、俺の差し出した手を握って立ち上がる。そして、俺に抱きついてきた。うん? 部屋の中だというのに、風が吹いている。魔力は感じない。だが、たしかに風が吹いていた。少し疑問に思ったが、俺は考えても答えが出ないと思い、カザネと一緒に台所へと手伝いに向かうことにした。



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