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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・一部 幻音神鳥 カザネ編
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死の風

 食事も終わり、夜も更けてきていた。眠るために、ベイ達は牛車へと移動する。


「そういえば、シアさんからの連絡が来ないですね。丸一日、何もないなんて……」

「神魔級の対処にでも、駆り出されてるんでしょう。もっとも、あれじゃあ手出し出来ないでしょうけど」

「あれとは……」

「ロデ、あんたなら目の前に竜巻があったらどうする?」

「逃げますよ、それは」

「そういうことよ」


 少し離れた山の近く。そこにシア達は居た。遠巻きに、シアは兵士たちとその光景を見ている。山が、風の渦にすっぽり包まれている様を。


「こんなもの、どうしろと……」

「相手が出てくるのを、待つしか無いということですかね?」

「まぁ、そうでしょうね」

「……ライアさん」

「お久しぶり、シアちゃん」


 シアが振り向くと、そこにはライア・スペリオが現れていた。その後ろには、ガンドロス・エジェリン、ジーン・サルバノが居た。


「おお、これはえらいとこだな……」

「出てきた獲物を、狩れば良いのか?」

「そういうことだよ、お二人さん。ところで、バルトシュルツの連中はどうしたの?」

「城で、この結界を破る方法を考えています」

「うーん、城の魔法使い総動員なら、数分通り道が作れるかもね。でも、流石にそんな状態で神魔級迷宮に切り込むのは、無謀じゃないかなぁ?何体居るかも、わからないわけだし?」

「そうですね。私も、そう思います」

「あと……」


 ライアは、クイクイとシアを引き寄せて耳打ちする。


「英雄さんは、来てくれないのかな?」

「……一応、待機はしていてくれています」

「なるほどね。いざって時は安心ってわけだ」

「ですが、少し問題がありまして」

「問題?」

「……異変が起きているのは、ここだけではないみたいなんです」

「それ、まじ?」

「はい。失われていた迷宮のあったと思われる場所、それら全てに、新たな魔力反応があるとか」

「出てくるっていうの、ここみたいに?」

「可能性は、十分ありますね」


 シアは、不安そうに遠くを見つめていた。この星の何処かで、それらは人の目に触れつつあった。なだらかであった平地が、突然鉱物の隆起した別世界に変わりだしたり。森林地帯が、熱く煮えたぎるマグマで囲まれたり。得体のしれない者が、実体なく町中で頻繁に目撃されるようになっていた。


「お祖父様には、そこにもいずれ行ってもらわなければなりません。ここに、時間をかけてはいられないのです」

「そういうこと。あと、少し気になることがあるんだけど」

「なんですか?」

「いや、大丈夫だと思うよ。このライアさんが認めた子だし。大丈夫だと思うよ。でもねぇ~」

「?」

「……ベイ君ってさ、無事?」

「ああ~、重症でしたけど無事ですよ」

「重症!!……お、お見舞いに行かないと!!いや、ここを離れるわけには!!ええーい、ヒイラちゃんに任せるしか無いか!!」

「……」

「……おほん、まぁ、無事なら良いんだよ。あの子が、一番無茶しそうだからね。あの子が無事なら、他の子も大丈夫でしょう」

「ええ、その通りです」

「なら良いんだよ。ならね」


 ライアは、テレ顔で咳払いすると目の前の竜巻を見つめた。ライア達は知らないが、今、竜巻の中に生命体は3体しかいなかった。それらは、一つの部屋で時間がすぎるのをただ待っている。


「あと、数時間後か……」


 1人の鳥人間がそういった。そして、ゆっくりと夜が更けていく。


「どうでもいいんですけど。私達は、シアさんの連絡がないと帰れないんですよ。そこだけは、なんとかしてもらいたかったなぁ。忙しいのは分かるけど」

「良いじゃない。休日だと思えばいいのよ」

「アリーさんは、焦らないですね。強い魔物が、来るかもしれないのに」

「ベイのそばが、一番安全なのよ。そう思えないから、あんたはまだまだなのよ」


 そうこうしているうちに、全員が牛車に集まった。


「あ、明日は私が説明したいことがあるから、皆は今日みたいに集まってね」

「アリーさんが、説明?」

「あの石のことかな?」

「そういうこと」


 アリーは、そう言い終えると定位置に移動する。ベイも、アリーの隣に行き。不安そうにいまだ起きないニーナを心配するように、実家の方を見つめた。


「大丈夫、大丈夫」

「……そうだな、アリー。おやすみ、皆」


 ベイがおやすみを言うと、皆がベイにおやすみなさいを返した。そして、夜が更けていく。雲が風で流れていき、月の光を覆い隠した。その闇夜で、目を光らせて何者かが動き始める。川の側に行くと、その何者かは川に手を突っ込み……。その後、間を置かずに瞬時に周りの植物たちが腐ったかのようにしなびて、溶け出していった。


「!!」

「はっ!!」

「殿!!」

「ミズキ、俺にも分かったぞ!!」

「……」


 突如として、ベイ、ミズキが跳ね起きる。それに続くかのように、カザネが機敏に起き上がった。


「皆、起きろ!!」

「……うーん、どうしたのベイ?」

「敵だ!!」

「えっ?」


 ベイ達は、急いで外へと出ていく。外に出ると、ベイはミズキの肩に腕を置き、魔力を渡し始めた。


「ミズキ、やれるか?」

「お任せ下さい」


 ミズキが、水の魔力を地面に走らせて行く。その光景を、皆が何をしているんだ? と、言う風に見ていた。


「毒ですよ。皆さん」

「毒?」

「はい。敵は、風と水に毒を乗せてこちらに運んでこようとしています。それを今、ミズキさんが防いでいるんです」

「レム!!カザネと、残りの皆を連れて行け!!位置は分かるか?」

「相手の、位置ですか?」

「私には分かります。邪悪な風の魔力を感じる。恐らく、あそこでしょう」


 カザネが、念話でレムに場所を指示する。


「ここか。分かった」

「何かあったら呼んでくれ。すぐに行く!!」

「はい。主人、行って来ます」

「カザネ、気をつけてな。皆も、危なかったら援護してやってくれ」

「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」


 転移魔法で、カザネ達は結界の外へと移動する。そこから少しカザネは移動すると、そこに一つのうごめく影を見つけた。


「瞬風・変身」


 カザネの身体を、風の魔力が包んでいく。その風の余波で、相手はこちらに気づいたらしい。カザネと睨み合うように、相手はゆっくりと立ち上がった。


「並々ならぬ魔力だ。予定とは違うが、本命が来たようだな」

「毒を風に乗せて運ぶなど、風が悲しんでいるのが分からないのか。見ろ、この景色を。変わり果てた景色に、風が泣いているぞ。お前には聞こえないのか、この風の音が!!」

「ふっ、風を操る魔力を持つ我らにとって、風など道具に過ぎぬ。風が喚くわけなかろう」

「そうか、聞こえぬというのなら、私が聞かせてやろう。風の嘆きを」

「ははは!!俺に対して怯えぬその態度。やはり、貴様がホロウズとキージスを倒したものだな。俺は、ウインガル四翼の一羽・毒風のズッグーロ!!」


 その鳥人間を、月明かりが照らし出す。その顔と羽根は黒く、身体はオレンジの毛で覆われていた。


「貴様を倒し、俺が迷宮の覇者となる。勝負だ、黒き戦士よ!!」


 月明かりが、カザネとズッグーロを照らし出す。闇夜に、2つの風の魔力が激突した!!



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