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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・一部 幻音神鳥 カザネ編
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食事と決意と

 ああでもない、こうでもないと、カザネは頭を働かせながら考えている。そのカザネを見て、ベイはやれやれと軽く笑うと、カザネを肩に座らせて持ち上げた。


「わわっ」

「カザネ、皆が待ってるぞ」

「は、はい、主人!!」


 ベイは、カザネを担いだまま家へと歩いていく。その肩で、カザネはベイを見ていた。


(私が困っていると、そっと寄り添ってくれる。主人といると、心がこんなにも穏やかになる。この気持ち……)


 これこそが幸せなのだろうと、カザネはそう思いながら。そっと、ベイに寄り添った。


*****


 晩御飯の支度を終えたベイ達は、賑やかに食卓を囲んでいる。何故かと言うと……。


「あ、お義父さん、新居もここらへんの土地がいいですか?それとも、都市中央に土地を買ってこう、ズバーっと!! 大きいの建てちゃったほうがいいですか?」

「い、いや、ロデちゃん。私達は、ここらへんでのんびり暮らせれたらいいかなと……」

「なるほど。それでは、予算を土地代より建築費にまわして……」

「お母様、私の作った料理はいかがですか?」

「うん、美味しいわね!!ロザリオちゃんは、料理が上手ね!!」

「はい、ありがとうございます!!」


 このように、ベイの両親へのアピールをそれぞれがしだしたからである。その様子を、ベイは若干苦笑いを浮かべながら、アリーは、特に気にする様子もなく見ていた。


「なぁ、アリー。ニーナは、本当に大丈夫なんだろうか?」

「大丈夫よ。私も見たけれど、肉体に傷はなし。あとは、精神的にってところかしら……」

「精神的にか……」

「そんな顔しなくても大丈夫。ベイの魔法を受けたんだもの。きっと、もうすぐ起き上がってくるわ」

「だといいんだけど……」


 そんな2人をよそに、女性陣のアピール合戦は続いている。サラサが、インパクトの有る肉料理で攻めれば、そこに上品な薄味の料理でヒイラが対抗をし始める。その間に割って入って、レラがドリンクを差し入れたり、レノンとサラが、空いたお皿を下げたりして細やかな気配りを見せていた。


「なぁ、母さん。うちの子は、本当にモテるな……」

「そうね。それも皆、美人でいい子ばかり……」

「凄いな」

「凄いわね」

「ベイ」

「うん、どうしたの父さん?」

「早死するなよ」

「え、まぁ、長生きはすると思うけど?」

「そうね、ベイは鍛えてて体力があるし、この人数でも大丈夫よね?」

「……」


 この2人は、何を言っているんだ。そう言う顔を、ベイはしていた。何故か女性陣が顔を赤らめてベイを見ている中、ロデが話題を変えるべく喋りだす。


「ところで、お二人は謎の黒い戦士に助けられたということですが、実際、どんな人物でした?」

「どうって、凄い強いとしか分からなかったなぁ」

「誰なのかしらね。あの親切な人は」

「先程の取材で、喋られていない事実とか無いでしょうか?実は、私の家の商会では、情報誌も出しておりまして」

「いや~、ないない。全部話しちゃったよな」

「そうね、あの剣幕で言われたらね」


 事情を知っている皆は、ちらっとカザネを見る。カザネは、特に気にすることもなく、黙々と料理を食べていた。


「そうですか。うちで他誌に無い情報を扱えれば、大々的に取り上げて人気を押し上げ、グッズを作り商品化。売上で、大儲けと行こうと思ったのですが」

「あんた、それってどうなの?」

「アリーさん、本人が名乗り出ないからと言って、この人気を捨て置く必要がありますか?商売とは、人気の波に乗ることが重要。どんなチャンスでも、変えられるのならお金に変える!!それが、商人と言うものです!!……勿論、節度は必要ですけどね。今回の件なら、特に問題はないでしょう。噂のブラックアクセルさんを傷つけるわけではないのですし。むしろ、応援になりますよ」


 ロデは、そう言いながら人気に乗った商売がどれほど有用かを語り始める。ベイ達は、まぁ、本人は目の前にいるんだけどな。という顔で、カザネを見ていた。とうのカザネは、嬉しそうに肉料理を新たに皿に取り分けて食べている。


「……ガンドロスさんが、神魔級魔物を討伐し、素材を売り込んできた日には。それはもう、大剣の注文が殺到しまして」

「しかしあれだな。しばらく、ここを離れるべきなのかもしれない……」

「え?」

「愛する故郷ではあるが、今は神魔級魔物に襲撃されている町だ。何処かに、安全になるまで移動していたほうがいいかもしれんな」

「大丈夫ですよ、お義父さん。この国には、結界があるじゃないですか」


 アリーは、神魔級魔物の襲撃によって、街全体を覆うように張られている結界を見るように、窓の外へと目を向けた。


「とはいってもだな、アリーちゃん。やはり、不安は拭えんのだよ。あと一歩、あの黒い戦士が遅れていたら、私達は……。次も、都合よく助けが入るとは限らん。そう思うと、皆で移住するのも有りなんじゃないかと思ってな」


 真剣な顔で、ノービスはそう語る。その言葉に、カザネはギュッと拳を握りしめた。


「私が、もう少し早かったら。すいません……」

「うん?いや、カザネちゃんが、悪いわけじゃ……」

「いえ、私がもっと早く。お二人が、ピンチになる前に駆けつけていれば……」

「え?」

「約束します。私がこの街を、人々を守ると。だから、そんな顔をしなくて大丈夫ですお義父さん。必ず、私が倒しましょう。あの悪鳥達を……」

「カザネちゃん、君は……」


 凛とした顔で、カザネはそう答える。それ以上何も語らず、カザネは料理を再び食べ始めた。


 サイフェルム王国、結界の外で、何かが上空から王国を見つめている。


「ふん……、小賢しい。だが、キージス、ホロウズをやった奴がいるとすればあそこだろうな。他を出し抜く意味でも、やはり、あそこを攻めるべきか」


 その何かは、ニヤリと笑みを浮かべる。


「あのような小細工など、俺には無意味だ。ついでに、あの街にいる他の雑魚も全て俺がたいらげるとしよう。そして、俺こそがウインガルになるのだ!!」


 その何かは、沈みゆく夕日を見つめている。そして、その場から物凄い速さで移動し消えた。新たな戦いの時は、すぐそこに迫りつつあった。



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