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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第三章・一部 幻音神鳥 カザネ編
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不安

「ただ、一つ注意点があります」

「注意点?」

「こちらをご覧ください」


 アルティが、皆が進化した時の実力を表にして表示する。


「これを見て分かる通り、能力の上昇量には一定の要素が関係しております。そして、注目していただきたいのはここ。強敵と相対した時の皆さんの能力の上昇と変化です」

「それが、どうかしたんすか?」

「強敵と戦っているほどに、特殊な能力と力の上昇が大きいのです。この表では分かりずらかったですかね。色分けしてみるとこうです。危機的状況にあるほど、特殊な能力を得ていることがわかります」

「なるほど、確かにそうかもしれないな」


 フィーの全合一、レムの一体化、ミルクの破浸透、シスラの破砕槍、サエラの集破弓、シゼルの魔大杖、カザネの超瞬速は確かに危機敵状態で獲得している気がする。


「ですので、皆さん最初の属性特化一体化を行う際は、出来るだけ強い敵と戦う時にして欲しいのです。それこそ、皆さんが相対して苦戦するほどの相手でなくてはいけません。それで、一体化した時の能力がどこまで変化するか決まることでしょう。恐らくですが、そう思います」

「なるほど、一回一体化してしまえば、以降も上昇した能力はその時の能力で固定されてしまうということか」

「それで、上昇幅を大きくするために、出来るだけ強い敵と戦えと?」

「そういうことです。これで、今回の話は以上です。ご清聴、有難うございました」


 そう言って、アルティが映像を消す。皆は、先程の話を聞いて難しい顔をしていた。


「あ、創世級と戦うときまでとっておくというのは無しにしてくださいね。流石に、あれ相手は属性特化一体化をしたとして勝てるか怪しいので」

「それ以下、ということですか」

「それで強い相手」

「やはり、神魔級でしょうか。となると、ボス?」

「じゃあ、話は速いじゃないっすか。早速行きましょう。神魔級迷宮」

「ちょっと待った。それは、今は無理だ」

「どうしてっすか、カザネ?」

「私達がここを開けてしまったら、誰がこの街を、主人の家族を守るんだ?」

「……ああ~、そうっすね……」

「いえ、むしろ都合がいいです。カザネさん、連中の相手をお願いしていいですか。そして、もしもカザネさんが苦戦する相手が出た場合」

「……私が、属性特化一体化を行うのか」

「そうです。相手と同属性のカザネさんが追い込まれるなど、余程の状況ということでしょう。絶好の相手となると思います。試してみて下さい」

「分かった」

「ところで……」


 アリーが玄関の方を覗き見る。扉を開けると、わいわいとまだ声が聞こえていた。


「まだやってるわね」

「その黒い鎧の人物の正体に、心当たりはないんですか!!」

「は、はい。だから初対面の謎の人物でして、心当たりは一つも……」

「男性ですか、女性ですか?」

「さ、さぁ、声は男性の様な、女性のような?良く分からない感じでした」

「風魔法の使い手で、かなりの実力者の方のようですね。ノービスさんは、そのような人物に心当たりは?」

「いえ、私は剣を使う相手であれば心当たりはいくつかあるのですが、あれほどの動きをするものは知りません」


 玄関先では、ノービス達が取材攻めにあっている。あれほどの魔物を退けた人物。それも、謎の黒い鎧の戦士ということで話題沸騰しているらしい。街では、ブラック・ウインドなど、ブラック・ストームなど色々な呼ばれ方をしているようだが、一番人気はブラック・アクセルらしい。


「もうちょっと、格好いい呼び方にはしていただけないのでしょうか。黒仮面・ブラックソニックとか。強音神風・ブラックウインガーとか」

「日本式だな」

「日本とは、一体?」

「知らない」


 話が皆に通じていない中、俺とカザネだけは目で通じ合っていた。いいよね、日本式。そうこうしていると、アリーが俺に近づいてきて背中に手を置いた。


「こう?」

「え?」


 すると、体の違和感が消えていく。アリーの手から流れてくる魔力で、俺の体調は綺麗に制御されていった。


「よし、応用は利くわね。私が、先に魔力化しててよかったわ」

「ああ、こうするのか」

「そういうこと」


 何だか、今の身体の制御の仕方がわかった気がする。ありがとう、アリー。腕も普通に動くぞ。もう歩ける。


「ノービスさん達はまだかかるようですので、マスター、魔力制御の練習をしましょうか」

「え、今?」

「いつ、新しい敵が来るかわからないのです。早めに、簡単に出来るようになっておかねば」

「まぁ、そうだな」

「では、先に外からの魔力吸収の感覚をお伝えしておきます。これを、しばらく練習してみて下さい」

「分かった……。こんな感じか」


 アルティが、念話で伝えてきた感覚を再現する。俺の周りが、謎の光を放ちだし、俺に吸収され始めた。


「おおー!!」

「す、すごいです、ベイ様!!」


 ヒイラと、ロザリオが興味深げに俺を見ている。俺は、特にリアクションも出来ず吸収を続けた。これ、かなり難しい。気を抜いたらすぐ出来なくなる。そんな難しさがある。


「流石、私達の主人だな。まさか、あんな力がお有りになるとわ」

「そう思いますか、カザネさん?」

「うん、そうだろう?素晴らしい力じゃないか」

「……私は、そうは思いません」

「何故だ、アルティ?」

「あの力は、見た目こそ便利に見えますが、脆さそのものです。相手の魔力特性に合わせてしまうということは、相手の魔力の変調にも合わせてしまうということ。もし、私達の誰か一人でもマスターを拒絶していたら。そんな状態で誰かが仲間になっていたとしたら。マスターそのものの魔力が、マスターを殺すことだってあり得たのです。あれは諸刃の刃。今まで、生きてこれたのが不思議なくらいの、不安定なの力なのです。それを、マスターだから乗り越えてこられた。力に変えることが出来た。そう言う意味では、私達のマスターは素晴らしい。ですが……」


 アルティは遠い目をして、ベイを見つめている。


「もっと、都合のいい力であったほうが私は嬉しかったです。この能力、レムさんが一体化を獲得していなければ今ほど強い力を発揮できてはいませんでした。あの能力は、私達がいて初めて成立する能力です。それ以外ではあまり、強さとしては意味をなしていない。まるで、マスターには私達とともに生きるしか強くなるすべはないと、そう言っているように感じるのです。あの能力は」

「……アルティ、それが主人のお力だ。私達を含めて、強さにしていらっしゃる。それが主人だ。そこに脆さなんて無い。不確かさなんて無い。私達と一緒でもいいじゃないか。むしろ私達にとって、それこそが都合がいい。何処に嫌な要素があるっていうんだ?見てみろ。何もないじゃないか。不安になることなんて、なにもないんだよ」

「……そうですね」

「ああ、むしろ、不安になるのなら。私自身が、何処までマスターに貢献できる力を得ることが出来るのかと……」

「カザネさん?」

「……少し、外を見てくるよ。この街を見てきたい。そう思っていたのを思い出した」

「お気をつけて」

「ああ」


 玄関から、誰にも気づかれることがなく黒い影が飛び立つ。カザネは、誰の目にも捉えられないスピードで、町並みを眺めて回った。




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