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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・九部 決戦のリングルスター
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神魔級回復魔法

「……やっぱり」


 音に反応したアリーが、後ろを振り向いてそう言いながらニーナに向かって駆けていった。嫌な予感がした俺は、ニーナに近づこうとして身体に力を入れようとする。だが、すぐその場に倒れてしまった。それを、フィーとレム、ミルクが受け止める。3人に顔で促して、俺は3人にニーナの元へと連れて行ってもらった。


「ニーナさん、ニーナさん!!」

「動かさないで、触るのも駄目よ!!」


 シュアが、倒れたニーナに駆け寄ろうとしていたが、それをアリーが止めた。その間に、俺はニーナに近づいていく。ニーナをよく観察したが、どうやら魔法の進行がまだ遅いようだ。これなら、今の俺でもなんとかなるかもしれない。


「どうして、何も無かったのに?」

「やはり、大容量の魔力を受けたものだけは、どんなに今攻撃を受けなくても身体にその属性の魔力が発生してしまうのね」

「ということは、これは……」

「ええ、巻き戻した弊害。と言うやつかしら」


 そう言いながら、アリーがニーナに触ろうとする。それを、俺は腕を何とか動かして止めた。


「やめるんだアリー。触った瞬間に、アリーにもこの魔力は移動する。これを受けた俺には分かるんだ。こいつは、魔力に反応して相手を食い散らかすように操作されている魔法だ。今は自然発生したものだが、特性に変わりはない。回復魔法であろうとも、今のニーナに使えば魔力を伝わりこの魔法が攻撃してくる。消す方法はただ一つ、相殺しか無い」

「この魔法を、相殺するですって?」

「おやめ下さい、マスター」


 アルティが、俺に近づいてきてそう進言する。だが、構わず俺はニーナに手を乗せようとした。それを、アルティが掴んで止める。


「申し訳ありませんが、先程の戦いでマスターの身体は今は不安定な状態。己の身体を動かすのさえお辛いはず。さらに、その上で魔力操作などされては……」

「アルティ」

「はい」

「俺は誰だ」

「私の、マスターです」

「お前のマスターは、仲間の女性すら救えないような男なのか?」

「……違います」

「……俺を信じろ」

「はい」


 そう言うと、アルティは手を離した。


「ま、待って。なら、私の剣で魔力だけ切れば!!」

「駄目なんですよ。こいつらは、今もニーナを破壊している。回復と同時進行でなければ、ニーナが保たない」


 俺はそう話しながら、ニーナに回復魔法と闇魔法の相殺を行い始めた。やはり、ニーナの体内に蔓延している魔力量が多い。通常の回復魔法では回復が追いつかないようだ。さらにこれを、相殺しきらなければならないのだが。


「……くっ」


 ちょっと気を抜いただけでも、意識が飛びそうな目眩がする。少し魔力操作を行っているだけなのに、俺の身体にはとてつもない負担がかかっていた。身体がふらつく、それをレムとフィーが支えてくれていた。


「マスター」

「フィー」

「主」

「レム」


 2人の寄り添っている身体から、俺に向かって魔力が流れ込んできた。2人の魔力操作のおかげで、体調が少し安定する。そしてそれと同時に、俺の背中に幾つもの手が重ねられてきた。


「ミルク、ミズキ、カヤ、ミエル、シスラ、サエラ、シゼル、シデン、カザネ」

「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」

「俺に、力を……」

「マイマスター」


 ニーナに乗せていた、腕が震え始めている。その腕に、アルティが腕を重ねて震えを止めた。


「存分に」

「アルティ……。ああ!!」


 もう、失敗する要素は何一つない。だって、俺には彼女たちがついているのだから。


「皆、俺に力を!!」

「「「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」」」

「……これが、神魔級回復魔法だあぁぁぁああああああああああああ!!!!」


 俺を中心に、青い光があたりに広がり始める。それは風を巻き起こし、アリー達はその魔法のあまりの光に目を手で隠していた。青い空に、巨大な水色の光の柱が伸びている。それらは収束していくと、やがてニーナの身体を青い光で包み、きれいに消えていった。回復魔法と同時に、相殺魔法も一気に魔力を流すことで全体に行き渡らせた。これでもう……。


「……ぐはっ!!」


 やばい、口から血が出てきた。俺、駄目かもしれない。のけぞるように俺は後ろに倒れる。それを、ボロボロになりながらも、なんとか皆が支えてくれていた。


「やったの、ベイ?」

「……」


 ニーナは動かない。だが、静かに息をし始めた。もう、大丈夫だろう。


「……ベイ、お疲れ様」


 アリーが、ニーナの無事を確認しおえると俺に近づいてくる。そして、そっとキスをしてくれた。ありがとうアリー、おかげでよく眠れそうだ。俺は、その心地よさに任せて目を閉じようとした。


「た、大変です、騎士長!!」


 だが、誰かが慌ただしく近づいてきているのが聞こえる。俺は、その方向を見た。すると、兵士らしき人が馬に乗ってこちらに駆けてきている。その人は、急いで馬を止めるとシアに対して、まくし立てるようにこう報告した。


「サイフェルムが!!サイフェルムが!!」

「落ち着きなさい、何があったんです?」

「サイフェルムが、魔物の襲撃を受けています!!」

「!!」


 その言葉に、俺は目を見開いた。まさか、クローリか?


「まさか、魔王?」

「いえ、違います。報告によりますと、敵は1体。発生場所はサイフェルム周辺の山、ウインガル!!敵は風属性神魔級魔物です!!」

「!!」


 神魔級魔物が、家の近くに……。俺は、周りを見渡した。皆ボロボロになっている。とてもではないが、まともに動けそうにない。誰か一人、誰か一人だけでも動ければ……。俺は、意識が途切れそうな頭をなんとか動かして考える。あの連中に太刀打ちできる誰か、早く動ける相手に対応できる誰か……。その誰かを、俺は見つめた。



次回から、登場人物紹介回(まだ書き終わってないので、ゆっくり内容更新)をはさみまして、第3章に入ります。

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