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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・九部 決戦のリングルスター
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最悪の敵

 只々時間が過ぎていく。地面に書かれていた魔法陣を完全に破壊し終えて、俺達は何度も再生を繰り返す相手を葬る作業に集中していた。一瞬たりとて相手を殺す手をゆるめない。最速で、最短で相手を破壊する。それは何故か。最悪の敵の出現を、絶対に阻止するためだ。創世級がこの場に出てくれば、俺達でさえ勝てる保証がない。ならば、出てこないようにするに越したことはないだろう。


「……魔力が、消えた」

「アリーさん達が、目標を破壊したようですね」


 相手の身体から、外部から転送されてきていた魔力を感じなくなった。俺達は、手を緩めずに最後の一撃を再生する相手に放つ。すると、もう魔力が空中に向かい集まって再生することがなくなり、辺りの空気が徐々に澄んだものへと変化していった。


「おわった、のか……」

「みたいですね」


 俺達に陽の光があたる。空が晴れてきたのだろう。俺達は、そう思って空を見つめた。そのはずだった……。


「……雲が、消えていない」


 紫色の雲は、依然として俺達の真上に存在していた。その周囲の空は、青々と晴れている。だが、一瞬にして紫色の雲がドス黒く染まると、すぐに空が黒い何かで覆われ始めた。


「ご主人様、周りの魔力が!!」

「空に、吸われて……」


 街を覆っていた霧のようなものが、空に向かって吸い込まれていく。黒い空に溶けるように霧が消えると、今度は街全体が動き始めた。俺達のいる周囲の建物が、俺達に向かって集まってきている。まるで、広げられていた土地が元に戻るように、周囲の建物が俺達の周りに集まってきた。そしてその瞬間、地面に魔法陣が現れ輝きを放ち始める。


「これは、まさか!!」

「その通り、君たちは良くやったほうだ。だが、全ては無駄だったんだよ」


 声のする方を、俺達は振り向く。すると、建物の屋上に1人の人間が存在していた。


「君たちが相手にしていたのは、俺の記憶を魔力でコピーして作った人形さ!!どうだい、楽しめたかな?」


 その男は、笑いながらこちらを見ている。黒い空から、雨のしずくのようなものが男に向かって一滴降り注いできた。その滴は、先程戦った半分が獣の顔の男と同じ形にその姿を変化させていく。そしてその男に、屋上に存在していた男が楽しそうに肩を叩きながら寄りかかった。


「良く出来てるだろ。こいつさえあれば、俺は死なない。そして、君たちのおかげで万全な召喚に必要な魔力が集まらなかったが、この街を見てなんとも思わなかったのか?すでに、最低限召喚に必要な魔力を街自体に充満させているとは思わなかったのか?まぁ、分かるはずがないよな。にしても、君たちが暴れまわったおかげで、本来集めるはずだった量よりも極端に魔力量が少ないようだ。これでは、呼べても一部位をこちらに通させるのが限界だろうな。まぁ、それで十分だとは思うが」

「呼ばせると思っているのか?」

「あー、無理無理。もう、呼ぶ段階に切り替えてあるんだ。もう、止めることは出来ないよ。君たちは強いからな、手は速めにうたないと駄目だろ?」


 黒い空に、紫色の線が現れて魔法陣を刻む。地面の魔法陣と、上空に出現した魔法陣が連動するように輝きを放ち始めた。すると、その間の空中に新たな魔法陣が現れていく。その魔法陣の中央の空間が、黒いもやで覆われ始めた。


「さぁ、俺に従う神の登場だ!!」


 黒い靄の向こうから、得体の知れない寒気が俺達を包み込む。ゆっくりとそれは、巨大な魔法陣の内側から伸びてきた。それは、全身に何か鎖のようなもの纏わせながら、こちらに伸びてくる。どうやら、その黒い何かは、その鎖に引っ張られているようだった。だが、それを物ともせずその巨大な何かは町中へと出てくる。その全体図を見た俺は、こう思った。


「指だ……」


 それはドス黒く、巨大な一本の手の指だった。空中にその巨大な手の指は出現し、地面に向かって指先をゆっくりと伸ばしていく。その間に、指の側面に赤い目のような物体が次々と現れ始めた。その一つが赤く輝き、屋上に存在していた男に向かって黒いビームのようなものを放つ。その攻撃を、顔が半分獣の男が盾となって防いだ。攻撃を受けた男は、瞬く間に塵となって蒸発していく。


「おっと危ない。無駄だ。俺にはその攻撃は届かない。お前のことは調べがついているんだ、早く俺にしたが……」


 そう息巻いていた男だが、その体が徐々に黒ずんだものへと変わっていく。その速度はゆっくりだが、確実に男の体を侵食していっていた。


「なんだよ、これ。俺のこっちにある分身だけじゃない、本体にまで攻撃が届いて……」

「……ヨウズミダ」


 それは、ドス黒く冷えた声だった。屋上にいた男はもがき苦しむように身体をかきむしりながら呪文を唱えようとしている。だが数秒後、何もすることが出来ずに男は塵となって消えた。あの様子だと、もう再生することも出来ないだろう。


「……やるしか無いのか」

「みたいですね、マスター」


 俺は、アルティを構えた。そして、地面に向かって指先を伸ばそうとしている指の先端目掛けて全力で突っ込んでいく。そのまま、その指先を真っ二つに切り裂こうと、アルティを勢い良く魔力を乗せて振り下ろした!!


「はぁああああああああ!!!!」


 巨大な指の先端に、俺達の最大威力の攻撃が激突する。だが、攻撃の余波がやんだ後、その指を見たが指には傷一つ付いていなかった。まるで気にすることもなく、指は地面に向かって進もうとしている。分かっていたことだが、やはり実力の差が生半可なものではない。通常の一体化では、傷すらおわせることが不可能なのだろうか。


「マイマスター」

「ああ、やっぱり、あれをするしかなさそうだ」


 俺は、軽く息を吸い込んだ。そして、一体化を解除する。それと同時に、己の身体に己自身の魔力で作った鎧を纏った。


「行くぞ、皆!!」

「「「「「「「「「「「「はい!!!!」」」」」」」」」」」」


 その上から、更に俺は一体化を身に纏う。俺の魔力で作った鎧にレムの鎧が融合し、その上から更に皆の魔力が融合していった。通常の一体化時から一回り鎧が大きくなり、若干見た目をゴツく変化させる。その鎧のあまりに溢れる力に、俺は天に向かって思わず吠えた。


「うぉぉぉおおおおおおおお!!!!」


 体感で、その鎧を身に纏った時に感じる力は、通常の一体化の2倍以上の様な気がする。恐ろしい鎧だ。


「成功です!!活動可能時間は五分弱!!一気に決めましょう、マスター!!」

「ああ!!」


 俺達は、再び創世級に攻撃するべく、その指先へと突っ込んでいった。


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