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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・九部 決戦のリングルスター
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古代都市

「分かってたけど、キリがない!!」

「ブラストボム!!」


 ロザリオが、火の玉を正面の道目掛けて飛ばす。すると、その火の玉が拡散して無数の小さな玉となり広範囲の敵を焼き尽くした。


「やるじゃない、ロザリオ!!」

「はい、まだまだ行きます!!」

「私だって!!」


 ロデが、銃にバッグから取り出したカートリッジを付け替える。そして銃の引き金を引くと、その銃口から無数の雷の光線が辺りに雨となって降り注いだ。


「ロデ、すごいです!!」

「へへ、まぁね。……アリーさんは、ノーリアクションだけど」

「……まぁ、良いんじゃない」

「こほん、ありがとうございます」


 一気に、二人の活躍で道が開いた。そこにすかさず、レラとサラサが切り込んでいく。相手がなにか動く前に、2人は次々に相手を切り裂き、蒸発させていった。


「黒いのしかいないね」

「これだけ多くては、魔物も近寄らないということでしょうか?」

「ヒイラ、準備は出来てる?」

「うん!!」


 建物眼下に広がる黒い海、その先端を見つけたときから、ヒイラは行動を開始していた。アリー達が進むに連れて、黒い海の容量が多くなっているように感じる。だが、それは誤りだ。正確には、ヒイラがかき集めている。黒い海を、赤い血の壁が器となって寄せ集めているのだ。どんどんと進んでいく度にヒイラは血の器の範囲を狭め、球体になるように黒い水の塊を中央へ向けて押し出していく。遂に、木の前までアリー達が到達した頃には、その木全体を包み込むように血の壁が狭まっていた。


「これで、全部かき集めたわね」

「うん、間違いないと思う」

「ご苦労様、ヒイラ。さて、こっからは私の番」

「何をしようと無駄だよ、どうせ壊せないんだから」


 遠くで黒い棒人間が、座り込みながらそういう。まるで、何もかもどうでもいいかのように、その黒い棒人間はその場に寝転んだ。


「あんた、人間?」

「そうと言えば良いんだろうか?まぁ、元人間の一部とでも言うべきかな。正確には」

「やる気なさそうね」

「そりゃあそうだよ。誰がやりたくて、こんな姿になるっていうんだ。俺は、こんなの嫌だね。まぁ、この姿で過ごすのが長すぎて今では当時の自分の姿すら覚えてないんだけども、それでもこれよりはマシだったよ。もっとイケメンだった」

「……あんた、もしかしてダークの出身者?」

「……ああ、懐かしいな我が故郷。その名前が出るとは。俺でさえ忘れてた名前だったのに、よく知ってるね。ろくでもない都市だったけど、俺は好きだったなぁ。こんな姿になったけどさ」

「とすると、あんた魔法研究者でしょう。これ、壊し方知らないの?」

「知らない知らない。俺は、俺から抽出された記憶でしかないからさ。そこまで俺より頭良くないわけよ。あいつもクソなことするよね。対価に魔力をよこせと言っておきながら、実際はこうやって相手の記憶を送られてきた魔力から断片的に取り出して繋げて形にしていたわけさ。見なよ、喋れるやつなんてほんの一握りだ。あいつらは、情報が足りない誰かの魔力記憶の塊さ。だから動きが遅い。俺みたいに、好き勝手出来ない。まぁ、それで俺が幸せかって言うとそうでもないんだけど」


 黒い棒人間は、完全にやる気をなくしたのか少し溶けかかっているように見えた。それを、遠巻きにアリーが見ながら魔力を練り上げる。


「アリーさん、ダークって?」

「大昔の古代都市よ。創世級なんてものがこの星にいる原因となった古代魔法国家。その昔、この星は7つの巨大な都市に別れていた。火、水、風、土、雷、聖、闇。それぞれの魔法を、属性を絞って研究していた国家達。そいつらは、いつもお互いの国の資源を奪おうと戦争を続けていた。まるで、俺達の魔法がすごいんだぞと言わんばかりに」

「あの頃は楽しかった。3日とまたず新しい魔法が開発されては、ぶつけ合いがされていたなぁ。楽しかった。やっぱり、あんな奴ら呼ぶべきじゃなかったんだ」

「あんな奴ら……」

「切り札を考えたのよ。相手が無条件降伏するような、絶対的切り札。それが……」

「創世級」

「そういうこと」

「人でなしの化物連中さ。それぞれを呼び出し、拘束して無理やり従わせていた。ただし、それだけじゃあ奴ら命令を聞かない。対話して、対価を払って動いて貰う必要があった。動きを抑えることは出来ても、完全には制御できなかったんだ。国によっては、対話すら出来ない化物が出てきていたこともあったらしい。土だけが、食べ物とかだったかな?そんな安い要求だったらしいが……」


 よっこらしょと、黒い棒人間は立ち上がる。そして、アリーの方に身体を向けて座り直した。


「知性があるっていうのも外れだったかもね。おかげで、俺達はこのざまだ。あいつ、俺達の記憶を集めて利用して、いつか俺達から逃れて滅ぼそうとしていたんだ。俺達人間を。ああ~、やっぱ呼ぶんじゃなかった。上には逆らえなかったけど、逆らっておくべきだった。あそこで死んでおけばよかった。こんなことになるのなら」

「それももうすぐ、終わるわよ」


 アリーが、杖を血の球体に向かって向ける。それを合図に、ヒイラが完全に血の球体で木を覆い尽くした。


「やるわよ、ヒイラ」

「うん!!」

「圧縮!!」


 アリーが、血の球体を魔力で覆う。すると、血の球体が一気に縮んだ。みちみちと、一瞬でありえないような音をたてて球体は縮む。そこに、アリーは再び魔法をかけた。


「あれ、再生しない?」

「それはそうよ。再生という命令が出来ないぐらいにまで魔力を砕いたのと、あの木の周りを時間停止して固定した。周りにくっつく魔力も発生させられないんじゃあ、再生のしようがないわけよね」

「でも、何時までもつかなぁ。そんなことしても、いずれは再生して……」

「どうかしらね」


 みちみちと、更に血の球体がゆっくりと縮んでいく。その光景を数秒眺めていると、血の球体は手のひらサイズまで小さくなり、最後には形すら残さずに消滅した。


「……き、消えた」

「停止と圧縮。それらを再生よりも早く繰り替えす。耐えきれなくなった魔力の塊は純粋な魔力となって形を残さずに消滅する。そして、こうなるってわけ」

「お見事……」


 黒い棒人間は立ち上がった。そして、自ら自分の首に手をかける。


「これで、今回はもう再生しなくて済むだろう。あいつらも、切れば消滅するはずだ。ありがとう、ありがとう」

「最後に聞いていい。中央にいるやつ、あいつもダーク出身者かしら?」

「いや、彼は都合のいい男というか。利用されているに過ぎない。あいつが、あそこから出るために蒔いた種を上手く拾ってしまった哀れな男だ。騙されているとも知らず、あいつの用意した魔導書に書かれているまま計画を進めてしまっている。いずれ、彼もこうなるだろう。じゃあね、お嬢さん。俺は苦痛から解放されるとするよ」


 そう言って、黒い棒人間は首を引きちぎった。そして、蒸気となって消えていく。


「哀れね」

「うん……」

「よっと、終わったかな?」

「これで全部だね」


 レノンとサラが、武器をしまいながらアリーに近づいてくる。辺りを見回すと、黒い棒人間は、もう一人も残っていなかった。


「お二人とも、速かったですね」

「確かに」


 レラとサラサが、そう言いながら近づいてきた。確かに、あれだけいた黒い棒人間がもう一人もいないのだ。再生をやめさせた時間からしても早すぎる。それだけ、皆の殲滅力が高かったということだろう。


「お、空気が晴れてきた」

「空にも太陽が……」

「ベイが、とどめを刺したみたいね」


 今までの濃い霧が嘘のように晴れていき、空に青空が出てきた。アリーは、ニーナの顔を見る。キョトンとして、その顔は空を見上げていた。何とかなった、この時のアリーはそう思っていた。



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