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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・九部 決戦のリングルスター
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再戦

「あの~、いきなり下から手みたいなのがせり上がって来て気づいたらこんなことになってたんだけど、これ、ヒイラちゃんの?」

「説明は後で、今は時間がないんだから!!ほら、全員降りてきなさい!!」

「分かったよ、アリーちゃん!!」


 血の巨人が、見る間に小さくなっていく。その間にも、巨人から伸びている細い血の糸が周りの魔物を虐殺していた。そして、完全に巨人がしぼみ切ると乗っていた全員が道の上に降り、アリー達がいる建物へと入っていく。辺りには、血の匂いと魔物の死体だけが残った。


「さて、ぶっちゃけ苦戦してるわけよ」

「アリーちゃんが?」

「まぁ、先のこと考えると全力ってわけにもいかないからね」

「えっと、今はどういう状況なの?」

「教えていただけますか?」

「良いでしょう」


 アリーが、魔法で空中に先程見た化物の図を詳細に描いた。


「相手は再生する大樹。こいつが街の中央に魔力を送る装置が設置してあるんだけど、その再生を手伝っている。こいつがある限り、街の中央の魔力供給装置は破壊できない」

「なるほど……」

「そして、先程見た相手の情報だけど。恐らくこれは、人間に近しいもので出来ている」

「……は?」

「どういうことですか?」


 アリーは、目を閉じて考えるように腕組みをした。


「先程戦ってみたとき、この大樹の周りにある黒い泉から出て来る言葉を喋る生物と接触した。そして、どうも相手の口調から人間ではないかと私は予想したわけ」

「こ、こんなものがですか?」

「……あいつらを見た時、その身体は全て魔力でできていた。だから、厳密には人間ではないといえると思う。元人間であったと考えるほうが妥当ね。人間の記憶を持っている生物とでも思えばいいわ」


 アリーは、空中にその生物を描いた。


「数は不明。恐らく無限とでも思っておけばいいと思う。核となるこの大樹を消滅させない限り、何度でも湧いて出てくるでしょう」

「そんなのを、どうやって倒すの?私の剣で、何とかなりそう?」

「シアには悪いけど、その剣じゃあ破壊が間に合いそうにないわね。私とヒイラがやるわ」

「あれかぁ~」

「巨大生物相手には、丁度いいものだしね」


 2人がお互いを見る。そして、通じ合っているかのように同時に頷いた。


「という訳で、皆にはそこまでの護衛を頼みたいんだけど」

「任せてよ、アリーさん!!」

「修行の成果を、お見せしましょう!!」

「……ところで、何故ベイ・アルフェルトがいなくて皆さんがいるのでしょうか?」

「助っ人って、後から来るものでしょう?」

「……それはいいにしても、ベイ・アルフェルトは何処に?」

「中央よ」

「中央!!1人でですか!!姉さん、私達は中央に向かいましょう!!彼がいくら強かろうと、1人行動は危険です!!」

「ああ、行かなくていいわよ。1人じゃないから」

「え?」


 アリーは外に向かって目線を向ける。その目には、心配など何一つしていない感情が読み取れた。


「あんたたちなんかより、よっぽど頼りになる嫁達が付いてるわ」

「皆さん、お強いですからね……」

「ミズキさんがいれば、十分というか……」

「そんな気はするね……」


 何故か疲れた口調でレノンとサラが、ミズキという名前を口に出す。その名前を聞いて、シアとシュアは首を傾げた。


「ともかく、こっちがあれを破壊しないことには、ベイが決着をつけられないわけよ。せっかくミズキに任せずに、私達に出番が回ってきてるんだから、さっさと応えないとね!!」

「ベイ様のためとあらば!!」

「というか、ロザリオきてたんだ……」

「ベイ様のためならば、何処にでも駆けつけるのが今の私です、ロデ!!」

「足、引っ張らない?」

「練習してきました!!」


 ロデに向かって、胸を張ってロザリオは杖を握る。その堂々とした態度を、ニーナは羨ましそうに見ていた。


「あ、それとニーナ」

「は、はい!!」

「貴方は、シアとシュアと一緒に後方支援ね。まずそうだったら前衛から人を回すから、あんたが良さそうかは見て判断しなさい。回復役なんだから」

「は、はい!!」

「ですって、姉さん」

「こりゃあ、呼ぶ必要もないって立ち回りをしないといけないね。大人として」


 シアとシュアが、そう言いながら剣を構えた。


「先頭はサラサ、レラ、その次にレノン、サラ。残りが、その後からで行きましょう」

「ふふ、腕がなるね」

「レラ先輩、なんだったら、どれだけ多く切れるか勝負しませんか?」

「私とレノン、今相当速いですよ」

「へぇ~、じゃあ、本気見せちゃおうかな」


 レラが緑色の気を纏う。それを見て、レノンとサラが水色の気を纏った。


「おお、2人ともその領域に!!」

「努力してましたから」

「させられてたとも言うけどね」

「ふふ、では、行きましょうか!!」


 サラサも、黒い気を身にまとった。そして、店の外へと出ていく。濃い霧の中、再びアリー達は巨大な大樹目掛けて駆け出していった。


「よっと!!」


 建物の壁を蹴って、跳ねるようにレラが空中を舞っている。その超高速の動きは、空中にいる魔物たちでは捉えきれないようだった。全ての空中にいる魔物が、レラに切り刻まれていく。


「相変わらず、レラさんは凄い」

「私達、調子に乗ったかな?」

「そんなこと、無いと思うよ?」


 そう言いながら、レノンとサラも道上に立ちふさがる獣形魔物を尽くなで斬りにしていった。2人の活躍で、サラサはまだ剣を振っていない。


「やりますね、お二人とも」

「ミズキさんより、こいつら遅いからね」

「楽ちん楽ちん」


 そう軽口を叩きながら、目的の場所へとサラサの案内で全員が進んでいく。そしてある程度進んだ時、建物の下が黒い海のようになっている空間に踏み込んだ。


「……来ますよ」

「OK」


 進路上の建物の屋上に、人のような黒い物体が何本も立っていた。それらは動きこそ遅いが、確実にサラサたちに向かってきている。その群れに、恐れることなくサラサは突っ込んだ!!


「はぁああ!!」


 大剣を振るい、着地地点を確保する。そこに、レノンとサラ、レラが踏み込み、周りの敵を切り払っていった。


「増えてるじゃん」

「まだ仲間がいたってわけか。無駄なんだけどな」

「げ、本当に喋ってる!!」

「レノン、気にしちゃ駄目!!」


 やれやれと言うようなリアクションを黒い棒人間は取っている。その棒人間を、サラサが容赦なく切り飛ばした。その間にも、建物下の黒い海から、また新たな棒人間が這い出て登ってきている。後先を考えず、迅速に処理して一行は先を急ぐことにした。




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