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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・九部 決戦のリングルスター
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2人の超英雄

 サラサが大剣を振るい、出来るだけ広範囲の獲物を薙ぎ払う。剣を振り切った隙を突いて、残った魔物がサラサに襲いかかろうとするが、サラサの剣を振るスピードのほうが速かった。返す刃で、襲いかかる魔物たちをメッタ斬りにしていく。だが、そのさなか空中の魔物たちがサラサ目掛けて魔法を飛ばしてきた。その魔法を、アリーが相殺して消滅させていく。だが、あまりにも数が多い。まるで雨のように、3人の行く道の上に魔法攻撃が降り落ちていった。


「キリがない!!」

「アリーさん、こんなのは迷宮内ではよくあることですよ!!」

「それは頼もしいお言葉ね、サラサ!!で、何か手があるの?」

「無いです。駆け抜けきるしかないでしょう!!」

「そういうと思った!!サラサ、落ちるわよ!!」

「落ちる?」


 サラサが、隣の建物へと飛び移り、周りの魔物を一回薙ぎ払ったその瞬間だった。サラサの足元が、アリーの放った風魔法によって円形に崩れ、下の階にサラサは落ちていく。続いてアリーとニーナがその穴に飛び込むと、アリーは急いで土魔法でその穴を閉じた。


「私に捕まって!!」

「は、はい!!」

「失礼します!!」


 アリーがそう言うと、ニーナとサラサは素直にアリーに抱きつく。すると、3人はその場から消えた。建物の窓を破り、魔物が3人が元いた場所へと近づいていく。その光景を、3人は向かいの建物から見ていた。


「やっぱり、短い距離なら転移が使えるわね。もう何回か繰り返すわよ」


 そのまま、アリーは小さな距離の転移を続ける。暫くして転移をやめて、3人は徒歩での移動を開始した。少し歩いて飲食店の建物に入り、3人は2階に置いてあったテーブル席に座る。安堵したように、ニーナは椅子に座るとため息を漏らした。


「さて、どうしようかしらね」

「何とか出来るんですか、アリーさん?」

「あいつら、あんたが切ったら蒸発したでしょう。無敵ではないと思うんだけど、再生はしてるみたいだし。これは、あれしか無いか……」

「あるんですか、何とか出来る魔法が!!」

「私を誰だと思ってるのよニーナ。アリー・アルフェルト!!正直、この後のことを考えないなら私一人でも、あれぐらい殺しきれるわよ。魔力使いそうだから、そんな大雑把なことしないけどね」

「そ、そうなんですか!!」

「あれ、一応生物でしょう。ということは、呼吸をしてるはずなのよね。空に全部打ち上げてしまえば、それで終わると思うわけ。まぁ、全部とか魔力使うからしないけど」

「そ、そんな手が……」

「流石、アリーさんですね。で、それを使わないとすると、どうするんですか?」

「うーん、ヒイラが来るのを待つしか無いわね。戻るにも戦力がいるし、それが無難ってところかしら」


 アリーは、眉間を押さえて集中し始めた。数秒して、杖を上に向ける。すると、ゆっくりと部屋の中に紫色の光が集まっていった。


「あ、アリーさん?」

「ベイに魔法の補助をしてもらってるの、ちょっと黙ってて」


 光が収束し、部屋の中が一瞬光りで満ちる。光が止むと、見知った顔がそこには寝転んでいた。


「うぇぇ、ここ何処?」

「もうちょっとだけ、寝かせて……」

「あんた達、出番よ」

「えっ!!教室じゃない!!あ、アリーさん、おはようございます!!」

「おはよう、ロザリオ。元気そうね。強くなった?」

「は、はい。それなりにですが……」

「ふむ」


 アリーは、ロザリオの胸を眺めている。そして、おもむろにそれを揉んだ。


「ヒッ!!」

「やはり、何かバンドで押さえつけてるわね。この感触、随分成長したと見た!!」

「あ、あの、恥ずかしいんですけど」

「まぁ、まだあっちじゃ未だに男で通してるあんたには、仕方ないことなのかもね。でも、私も見抜けるようになってきたわね。うんうん、経験は生きるもんだわ」


 アリーは一人、納得して頷いている。その光景を見ながら、床に寝そべっていた2人がもそもそと起き上がり、身体に装備していた武器を確認し始めた。慣れた手つきで剣を引き抜き、全く同じ動作タイミングで2人は剣を振り回すと鞘にしまう。そして、アリーに向き直った。


「改めて、来ましたよアリーさん。ここが、噂の戦場ってことでいいのかな?」

「そうみたいだね」

「レノン、サラ。良く来てくれたわね。まぁ、呼んだのこっちだけど。忘れず装備を身に着けていたみたいで嬉しいわ」

「そりゃあもう、これじゃないと最近は使い慣れませんからね」

「ねぇ~」

「……お二人とも、強くなられましたね」


 サラサは、2人の動きを見ながらそういった。今までの記憶の2人とはうってかわり、今の2人の動きには余分なブレがない。ただ立っている今の状況でも、2人は無駄な動き一つせず力強く立っているようにサラサには見て取れた。よほど辛い修行をしたのだろう、ミズキさんと。サラサは、そんな辛い修行を乗り越えた2人を見ながら、何故か自然と拍手を送っていた。


「まぁ、ね」

「あれで強くなれなかったら、ちょっとへこむよ」


 2人は、ちょっと疲れた顔でそう返した。その顔から、ニーナはその辛さを想像した。前に、自分の受けていた訓練よりも、よりハードな訓練。 ……その光景を思い描こうとした時、ニーナはその考えをもう、それ以上考えるのをやめた。想像したくなかった。


「で、敵はどこです、アリーさん?」

「まぁ待ちなさい。ヒイラ達が来てからよ」

「というか、来られるんですか?私達がこうしてることも、知らないと思うのですが?」

「えっ?さっき念話したから、知ってるわよ。数分前に最後の魔石を取って、こっちに向かってたみたい。急いでるから、2分で来いって言っといたわ」

「2分で……」


 その時、突如として建物が揺れ始めた。定期的な揺れが起き、周りの建物が振動している。それはまるで、何かの足音のように規則正しくこちらに向かってきているのが感じ取れた。


「思ったより速かったわね」


 ズシン、ズシンと巨大な足音をたてながら赤黒い巨人が店の前を通ろうとしている。ふと、店の前でその巨人が止まった。その巨人は、近づいてきている魔物を、尽く赤い糸で切り刻んでいる。逃げようとしている魔物すら、その背中をうち貫き殺していた。その光景は、一方的な虐殺のように見えた。


「2分とか無理だよ、アリーちゃん!!」

「来れたじゃない!!やれば出来るもんね!!」


 窓を開け、アリーが聞こえてきた声に返事をする。赤黒い巨人の手の上、その上に、ヒイラ・スペリオとシア、シュア、ロデ、レラが座っていた。


「ちなまぐさい……」


 ロデが、小さくそう言っているのが聞こえた。




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