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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・九部 決戦のリングルスター
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腐食の木

「そう……」

「どうしました、アリーさん?」

「アリーさん?」

「ちょっと、寄り道しなきゃならないみたいね」


 中央へと駆けていたアリー達であったが、途中でアリーが立ち止まったことにより、2人は立ち止まっる。そして、アリーが別方向へと建物の上を飛び移りながら進んでいくと、その後を、ニーナとサラサは黙って追いかけた。


「ミズキの話だと、この辺りか……」

「なにかここ、おかしくないですか?」

「何かが、腐ったような臭いがします……」


 アリー達が到着した辺り一面に、強烈な刺激臭が漂っていた。少しずつ歩みを進めるたびに、その臭いは強くなっていく。たまらずアリーは、風魔法で臭い遮断を行った。鼻に、刺激臭が入るのを風魔法で防いでいるのだ。その魔法を使うと、サラサとニーナは鼻を押さえていた手をどけた。


「あれかしらね」


 アリーの視線の先、白い霧に紛れて何か黒い塊が見て取れた。それは、他の建物よりも圧倒的にでかく、一目見ておかしいと思えるようなシルエットをしている。そのシルエットは、まるで巨大な木のようだった。だが、所々が一定時間が経つごとにグッチャっと音をたてて地面に落ちていく。そして、無くなった部位から、また新しい同じ形の何かが生えてきていた。


「アリーさん、あれは……」

「きのこ、かしらね?」

「あんなの、きのこじゃないですよ」


 アリー達は、出来るだけ近づいて怪物の特徴を観察した。その身体はどす黒く、まるでヘドロのように粘ついた粘液で覆われている。体の周りには、アリーがきのこと語った謎の物体が無数についていた。そして、その根本が時間が経つごとに腐り、地面に落ちてきている。べっちゃと、そのきのこが地面に落ちると、地面にある黒い液体のシミが広がっていった。そして、腐り落ちたところには、また新しいきのこが生え始める。その光景を、てっぺんについた頭らしき物が、ぼーっと眺めていた。


「生き物、なのかしらね?」

「どうします?」

「まぁ、破壊しなきゃならないんだけど。まずは、様子見で攻撃してみましょうか」


 アリーは、クリムゾンランスを4本出現させる。それらを、無造作に化物目掛けて放り投げた。


「よっと」


 4本の紅の槍が、風を切り裂いて飛んでいく。そして、怪物の周りを覆うきのこのような物体に槍先が触れると、その場で爆発した。熱い風が、辺りを吹き抜けていく。


「燃えたかしらね?」

「……ダメそうですね」


 爆風が止むと、そこには無傷の怪物が残っていた。いや、完全に無傷というわけではない。槍が当たった箇所の周りのきのこが崩れ落ち、地面に落ちていた。しかし、間を置かずにまた新しいきのこが生え始める。その光景を、アリーは黙ってみていた。


「あれ、障壁かなにかの代わりなのかしらね。いわゆる甲羅とか、装甲みたいなものなのかしら。しかも、再生する。……ちょっと面倒ね」

「どうします、アリーさん?」

「こうするのよ!!」


 アリーは、杖に魔力を込めた。すると、怪物の頭が動きを止める。それに乗じて、アリーは火の玉を怪物目掛けて乱れ打ちした。


「アリーさん、これは?」

「あいつの、頭の時間だけ止めたわ。再生の命令を下す頭が動けないのなら、再生すら出来ないはずでしょう。ほら、この通り、後は耐久力の低い装甲をはがして、本体の核を狙い撃てば……」


 アリーがそう言っているさなか、また新たなきのこが生え始めた。しかも、先程よりも早いスピードで。


「……あれ、頭じゃないみたいね」

「どういうことですか?」

「脳みそが、詰まってるところじゃないってこと。……それとも、細胞自体に再生を自動で行う機能があるとか?いや、先程よりも生える速度が早くなっているってことは、何処かにその命令を下している何かがあるはず。となると、やはり脳みそが別にあるのか」

「アリーさん……」

「ちょっと待っててニーナ、今、倒す方法考えるから」

「下、下です」

「下?」


 アリーが、ニーナに言われて建物の下を覗き込む。すると、怪物の下に落ちていた黒いヘドロのようなものが、建物を這い上がってきていた。


「……ちょっと、下がりましょう」

「アリーさん、他にもいるようです」

「感がいいな」

「感ではない。空気の動きでわかる。2人いるのがな」

「ただの人間じゃないみたいだな、お嬢さん?」


  アリー達の後ろから、黒い人間のような影が近づいてきた。遠目には、そいつらはまるで人間のように見えた。しかし、近づいてきたそいつらの身体は、全身が真っ黒だった。本来、人間にあるはずの関節や、指というものがその生物には確認できない。人の形に近いシルエットをしてはいるが、その生物の手先や足先は丸くなっていて歩く度に、べっちゃっと何か液体を踏んづけたかのような音を辺りに撒き散らしていた。


「化物か……」

「おいおい、化物だってよ」

「いや、違いないだろ。これじゃあな」


 そいつらは、ゆっくりとアリーたちに近づいてくる。そして、サラサの間合いにそいつらは踏み込んだ。


「はぁああっ!!」


 サラサが、剣を抜き放つ!! 横薙ぎに一閃すると、そいつらの胴体が真一文字に切り裂かれた。


「おっと、やるねぇ~」

「怖い怖い」


 声は、後ろから聞こえてきていた。サラサが切り裂いた2人は、建物の屋上に黒い液体のようになり、バシャッと音をたてて落ちると、その場で蒸発した。しかし、2人の声は建物の下、その外壁から聞こえてきていた。


「危ない危ない」

「死んじゃうところだったぜ」


 外壁を登ってきている黒い液体から、人のような何かが這い出てきた。その2つの黒い生命体は、アリー達目掛けてゆっくりと建物を登ってきている。そして、その2人に続くように黒い液体の中から、次々と黒い人間のような何かが這い出してきた。


「……一旦下がりましょう」

「はい」

「ニーナ、行くわよ!!」

「アリーさん、あれ……」


 ニーノの示す先、その先には無数の魔物が待ち構えているのが見て取れた。空中には蝙蝠のような魔物が大量に、建物の上や外壁には、黒い虎のような魔物が何匹も集まってきていた。


「取り敢えず、下がらないことにはどうしようもないわね。無理にでも通るわよ!!」

「はい!!私に付いてきて下さい!!」

「行くわよ、ニーナ!!」

「は、はい!!」


 サラサが飛び出し、建物屋上の魔物の群れに切り込んでいく!! その後を、アリーとニーナが援護しながら駆け抜けていった。



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