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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第一章・二部 青と赤と魔王軍
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火属性上級迷宮(VERY HARD)

 その日の晩御飯もアリーが作ってくれた。ありがとうございます。うちの父のノービスも大絶賛でした。でもその後に。


「ベイ、お前には、凄まじい壁が今迫ってきている。俺にも止められるか分からん……。だが、お前の幸せのため父さん頑張るからな!!」


 と、ノービスは男の顔をして言っていた。一体何が? と俺が言うと。アリーをちらっと見て。


「その子の家族がちょっとな……」


 と言った。……嫌な予感しかしない。アリーも何故かその話でうんうん、と頷いていた。……強くならねば。そう俺は思った。


「という訳で、明日に備えて寝ましょう!!」


 張り切ってアリーは布団に入る。昨日と同じポジションで皆就寝することにした。寝る前のキスをアリーとフィーがしてくれる。まだフィーは慣れていないのか、アリーに急かされてやっとという感じだった。フィーの俺へのキスを見てレムとミルクは固まっていたが。その後、おめでとうございます姉さん!! と、熱い拍手をしていた。ミズキもうんうん、と頷いている。そしてその日は、何事も無く就寝する事が出来た。


「……よかった」


 次の日の朝、俺はいつも通り早起きが出来ていた。また触手に悩まされなくて良かったと思う。つい口をついて良かったと言ってしまう程だ。俺は、部屋を見回す。横を見るとレムとフィーだけだった。あれ、アリーがいない。俺は、上体を起こす。するともそもそと横のフィーが動いた。


「ま、マスター。お、おはようございます!!」

「ああ、おはようフィー」


 フィーは、俺の顔を見て朝から顔を赤らめた。う~ん、いつ見ても可愛い。俺がフィーを見ているとフィーはもじもじしていたが。チュッと、朝のキスをしてくれた。そして、更に顔が真っ赤になった。天使だな……。俺は、フィーを優しく撫でてあげた。


「おし、とりあえず起きるか!!」


 布団から出てレムを起こし、ミズキの朝ごはんを取ってミルクを迎えに行く。そして、皆の召喚を解除して家に戻った。朝ごはんを食べようと台所に行くとアリーが朝ごはんとお昼用のお弁当を作っていた。


「あっ、おはようベイ!!」


 近づいてきて朝のキスをしてくれる。良かった。カエラには見られてなかった。でも迷宮に行くのに、朝からこんなに幸せでいいのでしょうか……。いや、幸せのためにも強くならねばなるまい。朝から胸が幸せでいっぱいになりながらそう考える俺だった。そのまま家族で朝ごはんを食べて、その後迷宮に行く準備をする。早めに出ることになったので出勤するノービスと一緒ぐらいに家を出ることになった。


「ベイ~!!父さん、お前のために頑張るからな~!!」


 と、ノービスが朝からやたら覚悟を決めた!! みたいなセリフを言って出勤して行ったが、大丈夫だろうか。無事に帰ってこいよノービス。ノービスを見送って俺達も移動を開始する。風魔法で移動して約5時間ほどで火属性上級迷宮に到着した。丁度到着がお昼時だったので、弁当を食べてから迷宮に入ることにする。弁当は、アリーが作ったサンドイッチだった。しかし、これがまた美味い!! 野菜と絶妙に焼かれた鶏肉がパンに挟まっていい味を出している。更に良く分からないフルーツサンドまであって、とてもうまかった。アリーに聞いたらこれがフルーツトウガラシらしい。なるほど、クリームとフルーツの甘味の中に広がる悪くない辛さ。不思議だが美味かった。アリーは、ミルクの牛乳に興味を示したのか、すごい味わいながら飲んでいる。これをアレに使って……、とかすごい呟いていた。相変わらずミルクは、俺が飲んだ時だけ、おほぉ、とか、ふふ~、みたいな反応をする。おかげで牛乳は美味いんだけど飲みにくい。


「それじゃあ、そろそろ行こうか」

「そうね。ベイと初めての迷宮攻略、楽しみだわ!!」


 片付けをして俺達は、火属性上級迷宮に入っていった。焼ける大地と呼ばれるだけのことはある。火の魔力のドームの中は、それなりの暑さだった。地面は固そうな黒い岩で覆われており、所々に砂地の大地が見える。うっすらと岩の隙間は赤くなっていて、下に溶岩でもあるんじゃないかという色をしていた。砂地には、サボテンや葉が赤い木などが生えていて少ないがちゃんと植物もあるようだ。ボスエリアは……、あのだいぶ先にある岩の塊かな? あそこが怪しい。


「主、ここはちょっと厄介ですね」

「うん?どうした、レム」

「あそこに見える黒い岩の塊ですが、幻ですね」

「……蜃気楼ってやつか」


 つまり、実際にはあの見えてる方向に黒い岩の塊は無いってことか。それは辛そうだな。脱出は、魔力のドーム端目指して歩けばいいが攻略は難しそうだ。第一目標は、フルーツトウガラシだけど。


「とりあえず、目標を探しに行こうか。確か、葉が赤い木と一緒によく生えてるんだっけ?」

「そうね。図鑑にはそう書いてあったから、とりあえず見えるとこから当たって行きましょう」


 ということで俺達は歩き出そうとした。が、レムは、何故か遠くの火山を見ている。


「レム?」

「……いえ、向こうに気になる魔力があったので。大丈夫です、行きましょう」


 何か言い知れぬ不安を感じたまま俺達は歩き出した。


*****


「お~~、強さそうな奴がいるじゃん!!何、この気配。しびれるわ~!!」


 彼女は、燃える髪を左右に揺らして喜んでいた。


「一緒にいる奴らもなんか変わった気配してるなぁ~!!あ~、楽しそうだなぁ~!!」


 彼女のテンションは、気配を感じてから上がるばかりだった。


「う~ん?でも1人だけおかしな奴がいるなぁ。何だろう?あそこのほぼ全員と魔力で繋がってる?どういう奴なんだろ。あんな強そうな連中と一緒にいるなんて。やっぱり只者じゃなさそうだよねぇ。う~ん、でも強そうには感じないかなぁ~。なんでだろ?」


 顎に手を当てて考える。だが、考えても考えても彼女の頭には、ハテナマークしか浮かばなかった。


「まぁ、考えるより行動したほうがあたしらしいよねっと!!」


 スッ、と小さく飛んであぐらから立ち上がる。生えているしっぽを楽しそうに揺らし、棒を肩において体をひねり軽く柔軟運動をした。


「よし、いっちょ行ってみますか!!」


 そう言うと彼女は、大きくジャンプして空中を蹴って飛んだ。


*****


「主」

「マスター」

「ベイ」

「殿」

「(やばい。やばいですよ、ご主人様!!)」

「ああ、俺でも分かる。こりゃ、まずそうだな……」


 と言うか、もう肉眼で見える距離にその脅威は来ていた。空中をそいつが蹴るたびに大きな炎が出て、そいつが更に跳躍する。しかもまずいことに、明らかにこっちに向かって来ていた。


「主、下がってください」

「(ご主人様、私も出ます!!)」


 レムは、鎧を完全に着こみ剣と盾を出す。ミルクも召喚して一応の迎撃準備をした。フィーもミズキも、俺とアリーのすぐ前で警戒している。……最悪の場合の選択肢は、転移してすぐに逃げるだな。もしくは、一体化してすぐに倒すかだ。とりあえず、アリーは何としても守らないと。俺は、覚悟を決めた。そいつは、俺達からちょっと離れた場所に轟音と強風を撒き散らして着地する。そして、こっちを向いた。


「よっと!!……初めまして。それで会ってすぐで悪いんだけど、あたしと戦ってみない?」


 そいつは、水着のような露出の高い服装をしていた。下半身は、短いスカートを履き腕と足首にリストバンドのようなものを付けている。肌は赤く、燃えている髪はボリュームもあり彼女の腰ほどもある長さでかなりの存在感を放っていた。目は、黒地に黄色の怪しげな瞳をしている。だがそれが彼女に似合っており、全体的な可愛さと色気を出していた。胸もそれなりにあり、しっかりと見えている腹筋からは健康的な色気を感じる。太ももの肉付きがよくとても柔らかそうだ。足は裸足で何も履いておらず、爪は尖っていて黒い。さっきから後ろでしっぽを楽しそうに揺らしている。彼女の持っている赤い棒が、彼女の武器だろうか? 全体的には、エロそうなお姉さんという感じだが。放たれている強大な魔力から俺達は、彼女の存在に今冷や汗しか出なかった。


「……ちょっと遠慮したいんだが」

「え~。でもあたしも退屈で困ってるんだよねぇ~。嫌なら、無理やりにでもやる気にさせちゃおうかな~」


 ニヤッと笑うと彼女は、手の棒を振り回し始めた。砂が土煙を舞上げる。最悪だ。俺は、そう思わずにはいられなかった。




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