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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・九部 決戦のリングルスター
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血の惨劇

「血、ですかね」

「あっちに続いてるね」


 慎重に、血の跡を辿ってシアは進んでいく。通路を抜けると、別のフロアに出た。そこで、血の跡は消えている。歩みを止め、シアはあたりを見回した。しかし、何も異常を見つけることはできなかった。


*****


「やってられねぇな。待ってるだけなんてよ!!」

「良いじゃないか、楽で」

「本当に、こんなことで大金がもらえるのかねぇ?」

「それは別にどうでもいいだろ。この賭博場の金をいただければ、十分だ。あとは、周りの障壁が消えたタイミングでとんずらすればいい。そうだろ?」

「ま、そうだな」


 そこは、金庫部屋に通じる部屋の一室だった。男二人がその部屋にはおり、1人の男がガチャガチャと金庫室に通じる鍵を開けようとしている。


「まだ掛かりそうか?」

「意外と難しくてな」


 ギィィイ、とその男たちの背後の扉が開く。男たちが振り向くと、そこには見慣れた男が立っていた。


「おいジリー、持ち場を離れてこんなとこにどうした?」

「ああ、ちょっとな……」

「お前、入り口の見張り番だろ?一番重要な場所じゃないか。早く戻れよ」

「と言ってもな、誰もこないだろ。こんな障壁の中じゃあ」

「まぁ、そうだな」

「違いない。だけど、万が一ってことも……。お、開いたぞ」

「他の連中は、今頃どうしてるかな」

「別のフロア連中のことなんか知らねぇよ。おおかた、俺達と同じように金目の物でもあさってんだろ」

「違いないな」

「この賭博場には4フロアあるみたいだが、全部で4チームでいいのか?」

「お前、話聞いてなかったのかよ。俺ら外周巡回が5人で1チーム。他がフロアごとに1チーム。肝心の物がある部屋に1チームで、全部で6チームって話だったじゃねぇか」

「じゃあ、全部で30人か」

「ああ、そうだっただろ。それよりも、早く金を頂くとしようぜ。金庫の解錠はもうすぐだ」

「ところでジリー、お前、腕に何か付いてないか?それ、もしかして血か?」

「……」


 ピチャっと、金庫を目の前にした男の後ろで音がした。水が床に落ちたかのような音だ。男は、何故こんなところで水の音がするんだと疑問に思い、振り返った。


「あっ、ああっ……」

「……」


 そこには、おびただしい量の血が流れていた。先程、男といたもう一人の男の背中から、赤黒い刃物のようなものが突き出ており、男の腹から大量の血が流れ出ている。それが、ポタポタと床に落ち。水が落ちたかのような音を立てていた。


「ジ、ジリー?」


 刺された男の眼の前にいるのは、そのジリーと呼ばれた男だった。だが、先程まで軽快に喋っていた様子とジリーの顔は異なっている。白目をむいてニヤついた表情をジリーは浮かべていた。しかも、目と口からゆっくりと血を垂れ流している。それを振り払おうともせず、ジリーはニヤつきながら立ち尽くしていた。そのジリーの腕を男は見つめる。ジリーは、刃物を持っていない。だが、ジリーの腕の切り傷らしきところから、何かの腕が伸び、男を突き刺していた。


「な、なんだそれは……」


 ジリーから飛び出している腕は、ゆっくりと刃物を引き抜いた。それと同時に、刺された男が前のめりに倒れる。それを見ると、ジリーはもう一人の男へと近づいていった。


「や、やめろ。来るな!!」


 金庫室へと、男は逃げ込み鍵を内側からかける。まだ安心できず、部屋の奥へと男は逃げ込もうと扉に背を向けた。


「が、ガハッ!!」


 何かが、男の背を貫いた。赤黒い刃が男の背中から腹を突き破り出ているのが見える。男が口から血を流しながら振り向くと、鍵穴から赤い糸のようなものが出ており、その先が大きな刃物のように変形して男を刺し貫いていた。


「こ、こんな話、聞いてな……」


 男を刺し貫いている刃物が縦に広がり始める。男は、真ん中から真っ二つになり、金庫室の床へと転がった。


「……」


 暫くして、金庫室の扉が開く。そこには、先程真っ二つとなった男が立っていた。


「顔に、どうしても切れ目が残っちゃうなぁ」


 ジリーは、出てきた男を見ながらそういった。


「13人仕留めたから、後は17人かぁ。先は長いな」


 先程腹を貫かれた男も、ムクリと起き上がる。そして、何事もなかったかのように腹を擦った。


「手分けするかな。操りづらくなるけど」

「……」

「……」


 3人は、別々の方向へと歩いていく。その先々で、誰かがまた悲鳴を上げた。


*****


「何かがおかしい」

「どういうことです、姉さん」

「いや、誰もいなさすぎると思って」


 シア達は、慎重に部屋を移動して回っている。だが、誰ひとりとして敵を見つけることが出来ていなかった。


「あっ」


 カランカランと、何かがヒイラの足元に転がってきた。その赤い石を、ヒイラは手に取る。


「目的は果たしたし、帰ろっか」


 そう言って、ヒイラは赤い石をカバンにしまった。


「えっ?」

「今の石は、というか、転がって?」


 いいからいいからと、ヒイラは窓の外を指差す。シア達が窓の外を見ると、もう障壁は消えていた。


「本当に、これでいいの?」

「うん、次に行きましょう」

「ヒイラさん、どういうことか説明して」

「まぁまぁ、いいじゃないですか。それよりも、もう一つの建物に行きましょう」

「急いでるんだし」

「まぁ、そうですね。腑に落ちませんが、行きましょうか姉さん」

「そ、そうだね」


 納得の行かない表情をしながら、シアを先頭に一行は次の目的地へと移動を始めた。



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