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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・九部 決戦のリングルスター
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動き出した未来

「ふぅ……」


 アリーが杖先から魔力を放つ。軽くその杖を振ると、俺達の周りに満ちていた転移魔法の魔力は全て相殺された。


「……どう、ベイ?」

「ああ、近くの村に変えておいた」


 一方の俺は、転移魔法の魔力に移動先の変更をするべく、割り込みを試みていた。どうやら、最初は遠く離れた山の上に転移させられることになっていたようだ。死者が出る可能性が、無いとはいえない位置の場所だな。近くの街でも、歩いて3日かかるような距離だ。冒険者も紛れているから、救助を呼ぶにしても、最短で2日掛かる場所だっただろう。そこから、俺は近くの街に行き先を変えた。魔力を相殺し、移動先をコントロールする。一瞬でやるにはなかなか難しい作業だが、何とか上手くいったようだ。


「さて、馬車から出るとしましょう」

「そうですね」


 俺達は、周辺を警戒しつつも外に出る。そして、前の馬車に乗っていた全員が出てきたのを確認した。


「いや~、始まったね」


 シアが、剣を素早くしまう。……あれに何か、秘密があるんだろうか?


「騎士長、これは?」

「ああ、始まったみたいね。敵さんの攻撃が。そっちは予定通りに、外周に潜伏した仲間に声をかけに行って。いい、鉢合わせには気をつけるのよ」

「分かりました」


 馬車を運転していた運転手の方たちが、シアの命令で急いでその場を立ち去っていく。そうすると、シアが無言で遠くを指差した。そして、俺達とは反対の方角に向かって進もうとする。


「ちょっと待った」


 その背中に、アリーが声を投げかけた。シアが振り返る。すると、アリーの差し出した腕の上に、巨大な熱を放つ真っ赤な槍が4本、直立に浮いていた。


「クリムゾンランス・ソーラフレア」


 アリーが、空中を指差す。すると、一瞬にして四本の槍は空高く上昇し、一定の高さで静止した。そして、魔法陣があると示されていた四方向に向かって、それぞれの槍が空気の壁を超えて加速していき、飛び始める。


「これで、4つはお終い」


 アリーがそう呟くと、街の4方向から、突然巨大な火柱が舞い上がった!! その熱は、大気中を伝わり俺達の肌に届く。


「どう?」

「4つの魔法陣の消滅を確認」

「消えたって。確認するまでもなく」

「そうよね」


 ミズキが分身を飛ばし、即座に魔法陣の破壊を確認。それを、俺がアリーに伝えた。いやぁ~、嫁が強すぎる。


「4つとも、これで破壊したわ」

「……アリーちゃん、凄すぎ」

「ただ、まだ安心できないのよね」

「え?」


 アリーは、空中に漂っている紫色の雲を睨みつける。そしてその雲に向かって、先程と同じ槍を一本手に持ち、ぶち投げた。槍は、空気を切り裂き飛んでいき、雲に到達する。そして、横に爆風が広がるようにして、空中で破裂した。


「?」

「何だ、ありゃ?」


 俺は見ていた。アリーの放った槍が、雲に到達する前に何かの壁にあたり、破裂したのを。そして、紫色の雲は依然としてそこに残っている。全く形を変えないまま。


「魔法障壁?」

「ありゃあ、かなり強力なやつみたいだね」

「……」

「ベイ、待って」


 俺が、アルティを構えようとすると、それをアリーが止めた。代わりに、シアが剣を空に向かって抜き放つ。


「サフュール!!」


 シアがそう叫ぶと、剣が光を放ち。その刀身を雲の彼方まで光で伸ばし始めた。巨大な大剣が完成し、シアはそれを空中に真一文字に一閃する!!


「でぇぁぁぁぁああああああ!!!!」


 すると、光の剣が当たった部分の障壁が切り裂かれ、その先の雲が見えた。だが、切り裂いた部分から障壁は直ぐ様再生し、雲を閉じてしまう。


「ちっ!!」


 シアは、一旦剣を縮めると鞘に戻した。


「大出量の魔力供給ね。元を断たない限り、何度でもあの障壁は再生するわ。やるだけ無駄ね」

「いや、この剣なら、雲ごと障壁をぶった切れる!!」

「それも同じことよ。雲が再生するだけ。それで終わり」

「……」


 シアは、構えをといた。


「見た感じ、場所はこことここかしらね。ここに、魔力を供給する何かがあるはず」


 アリーが、地図に4つ赤丸を書いて皆に見せる。そして、その方向に向かって先程と同じように槍を飛ばした。直ぐ様、空中に火柱が上がる。


「どう?」

「該当地区の建物に、無傷なものがあります。賭博場、ホテル、雑貨店、広場ですね。いずれも、アリーさんの魔法が直撃したのにも関わらず、壁すら焦げていません。試しに、水手裏剣を投げてみましたが、どうも全体が強力な魔力結界で守られているようです。私一人では、潜入が難しいと思われますね」

「……マジかよ。駄目みたいだ」

「当たり、ってことね」


 結界で覆われていて、ミズキにも潜入が難しいとなると、かなりやばい結界だぞ。破れるのか?


「という訳で、当初の予定通りに行きましょう。あんた達はあっち側のこの赤丸2つの制圧ね。私達はこっち」

「……分かった」

「シア、あんたの剣なら楽勝でしょ。さっさと終わらせて、3つくらい先に潰しといてくれてもいいわよ?」

「あはは、お姉さんに期待しちゃってるかぁ。まぁ、頑張るよ!!じゃあ、皆無事でね!!」


 そう言って、シア達は駆け出す。シアとシュア以外の他の皆は、俺に手を振って駆けていった。俺も、手を振り返した。


「さて、私達も行きましょうか」

「そうですね」


 サラサが、走る姿勢を取る。


「転移で」

「え」


 アリーが、魔法を展開する。俺達は、結界のすぐ近くまで移動した。


「ベイ」

「おう」


 俺は、結界を目でよく見る。どうやら、建物上部から魔力を上空に送っているらしい。そこだけが薄く、他より壊しやすくなっている。俺には、そう見えた。


「アルティ」

(イエス、マイマスター)


 俺は、アルティを構える。そして、風魔法で建物上空に飛んだ!!


「シッ!!」


 魔力を乗せて、アルティを振るう。相殺をうまく使い、必要最低限の魔力で結界にヒビを入れ、ガラスを割るように全体を崩壊させた。


「行きましょうか」

「うわっ!!」


 短い距離だが、時間がないため、また転移で建物の近くまでアリー達は移動する。俺も、落下して建物屋上に着地した。その直後、周りの結界がすぐに再生し始めた。



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