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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・九部 決戦のリングルスター
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見回り

「さて、私達も戻りましょうか」

「そうだな」


 俺達も席を立ち、食堂を出て部屋に戻る。そして、借りている部屋にフィー達を召喚し、食事をしてもらった。


「マスターと、一緒に食べたかった……」

「フィー姉さん、乙女!!」

「まぁ、俺も持ってきた果物食べるから、それで許してくれ」

「……はい!!」


 満面の笑顔でフィーはそう答える。単純だが、そこが可愛い。食べ物は、転移で自宅からミズキが調理したものを持ってきた。早いし美味い。


「うーむ、少し目を閉じている間にフィーさん達がいるとは。流石だ、侮れない」


 サラサも特に難しく考えずに、単純に考えているようだ。フィー達が、高速で窓から侵入してきたと思っているんだろ。ちょっと窓を開閉してみている。召喚という考えに至らない辺り、脳筋だなと思った。だが、そこがサラサらしくていい。


「……穏やかな街ですね。殺気すらもなく、人々は楽しそうに過ごしている。もう夜もふけようとしているのに、通りは行き交う人達でまだ賑わっていますね」

「こんな所が戦場になるんだ。世の中、どうなるかわからないものだな」


 レムとミズキが、窓の外を警戒しながらそんな会話をしている。この2人が外の警戒をしていると妙に安心するな。何が来ても安心な気がする。ニンジャと、ナイトだもんな。しかもこの2人だ、何が来ても、気づいた時には襲撃者は死んでいるだろう。よっぽどの敵じゃ無い限り。


「……どうだ、ミズキ?」

「……分身からの情報だと、まだ特に異常はない。報告された魔法陣の位置にも、シアのお仲間と思えるような奴らしか周りにはいない。まだ、始まることはなさそうだな。この宿も、護衛の騎士らしきものしか見ていない。相手に、位置はバレていなそうだ」

「そうか」

「ほんと、ミズキは便利ですよね」

「うんうん」


 カヤとミルクが頷いている。ミズキ1人で、街全体の偵察できちゃうからな。そりゃそうだよね。


「ヒイラ、明日は貴方がこういうことをするのよ。練習通りにね」

「む、難しいんだけどね。やってみるよ」

「……」


 ヒイラ・スペリオ。アリーに超英雄と呼ばれた魔法使い。そんな彼女が、未来の自分の魔法を強化し、今の今まで修行してきたのだ。はっきり言うが、最早ヒイラは、今までのヒイラではない。その呼び名に相応しい魔法使い、鮮血のヒイラとなった。未来のヒイラ程の魔力量はないが、俺でも一目置くレベルの魔法使いだ。あの魔法を使われる相手……。悲惨としか言いようがない。あんなにヒイラ自体は可愛いのに。えげつないよな、ほんと……。世界の危機でもなければ、一方的な殺戮ゲームになりかねないところだ。敵が人である以上、血が流れていることに違いはないのだから……。


「さて、皆食べましたかね?」

「はい!!」

「美味しかったです、ミズキさん」

「ああ、なら良かった」

「それじゃあ、私達は戻るっすかね」

「出番まで、もう少しありそうですし」

「休養しておきますか」

「殿、私は警戒に残りましょうか?」

「……いや、ミズキも今は休んでてくれ。今回は、俺達全員が全力の備えをしておく必要がある。良いように、事が運ぶとは限らないからな」

「承知」


 アリーがサラサの目を、両手で塞いだ。その瞬間に、皆を魔石に戻す。アリーが手を離すと、サラサはまた不思議そうに窓を開閉していた。その直後、コンコンと部屋の扉がノックされる。ヒイラがゆっくりと魔法で部屋の扉を開けると、そこにはニーナが立っていた。


「あの、私達はもう皆疲れたみたいで、交代で寝ようと思うんですけど」

「そうね。長旅と、満腹で寝るのには良い頃合いかしら。分かったわ。こっちもそうする。いざという時には、起こせるようにそんな感じでいて」

「分かりました」

「おやすみ~」


 最後に、レラが扉を開けてそう言って帰っていく。護衛に付いてきたようだ。こう、徹底して用心してるのを見ると、緊張感が伝わってくるな。


「それじゃあ、私達も交代で寝ましょう」

「俺が起きてるよ。皆は先に寝て」

「そうね、そうするわ」


 自然に俺にキスをしてベッドにアリーは向かう。うーん、この当たり前とかした日常が凄い好き。個人的に。


「おやすみなさい、ベイ」

「ああ、おやすみ、アリー」

「私達も寝るとしますか」

「うん」


 ヒイラも、サラサも照れながらキスをしてくれてベッドに横になる。これがあるから、明日も頑張ろうって気になってるよな、毎日の俺は。ありがたいことだ。今日は、フィー達のおやすみのキスがないのが残念だが。まぁ、今は良しとしよう。部屋にある椅子に座って、アルティを腰にくくりつけ魔力を周りに薄く張り巡らせ警戒する。夜がふけるまで、俺はそうして1人街の様子を伺っていた。緊張している俺とは裏腹に、街の夜は静かに過ぎていった。


「……朝か」


 12時ほどにアリー達と交代して、俺は寝ていた。朝日が目に差し込んでくる。起きると、アリー達がもうすぐご飯だよと教えてくれた。俺は起きて、身だしなみを整えると、皆で食堂に向かった。


「今日は、昨日言った通り、一通り街を見て回りたいと思います」


 シュアが、食事をすぐに終えてそう喋る。そして、今日回るコースを説明し始めた。一番街から、流れるように端の方まで見ていくらしい。ちょっとしたドライブだな。


「歩くの?」

「いえ、馬車で行こうと思います。ちゃんと手配してますので、ご安心下さい」

「馬車ねぇ……」

「作りも見た目こそ普通ですが、魔法で強化されている馬車です。安心してください」

「そう」

「じゃあ、食べたら行こうか。外に待たせてるから」


 そうシアに促されて俺達は食事後、2班に分かれて外に待ち構えている馬車に乗る。一番街から二番街まで、ざっと流れるように街を見て行った。


「何だか、同じ風景を見ているみたい」

「何処も、店と人ばかりですからね」

「でも、天気が良くて良かったです。雨が降ってたら、こんなにスムーズに移動できなかったでしょうね」

「そうだ……な」


 ニーナの会話に、俺は頷こうとした。今は二番街中腹ぐらいだろうか。突然、周りの陽の光が遮られていく。雲が出てきたのかと思い、俺は馬車の窓から外を眺めた。


「……アリー」

「ええ、魔法か何かかしらね」


 確かに、雲は出てきていた。だが、それは紫色の雲だった。見る間にそれは広がり、街を埋め尽くしていく。そして、街の周りから巨大な光の柱が立ち上がり、線となって巨大な魔法陣を形作った。


「記憶とは違うけど、開戦ってところかしらね」


 転移魔法が街を覆い尽くす。外に出ていた多くの街の人達は、先程の賑わいが嘘のように、一瞬にして姿を消していった。

 

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