表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・九部 決戦のリングルスター
323/632

商業街・リングルスター

 その後、道中で軽く食事休憩をし、持ってきた地図を見ながら進むこと数時間。遂に俺達は、目的の都市にたどり着いた。


「おお、あれが」

「リングルスター」


 本当はもっと早くつけたが、シアとシュアを乗せた状態で速度を出すことも飛ばすこともしたくなかったため、そろそろ夕方になろうかというこの日暮れ時に到着する羽目になった。リングルスターの周りは大きな壁に囲まれている。だが、その壁には無数の商業店舗の広告と思わしきものが書かれていた。壁を眺めているだけで、この街が商業によって成り立っていることが容易に想像できる。俺達は、そのまま牛車で街の門の入口に乗り付け、シアが門番と2・3やりとりをすると、すぐに町の中に入ることが出来た。


「さて、私達の宿は4番通りの中腹にあるから、そこまでよろしく」

「はいはい」


 街に入ると、大きな通りに番号がふられた看板が立てかけてあるのが目に入った。その看板の4番目を進み、多くの行き交う人と長い大通りを抜けて、その中腹と思わしき所に存在している宿屋前で牛車を止めた。


「これか?」

「おお、ここ、ここ」


 シアとシュアが、率先して牛車を降りる。宿屋に入ると少し話をして俺達に入ってきて良いよと言うジェスチャーをした。俺達は、シアが指差した裏手に回り、そこに牛車を止める。そして、改めて入口に戻り、宿屋に入った。なかなかに大きな宿だ。内装もしっかりしているし、古めかしさを感じない。中央通り店という看板がかかっていたところから、まだ他の通りにも支店があるのかもしれないな。


「なんとね、今日はこの宿、私達の貸し切りだから!!凄いでしょ!!いやー、命かかってる任務だからこう奮発してくれるのは嬉しいね。お国バンザイってとこだ」

「結構、お高い宿ですよここ。しかも中央通り店は、買い物に立地的に便利だから、毎回お客さんが多くてなかなか予約が取れないはず。それを貸し切り。一体、いくら使ったのやら」

「ふふ、ロデちゃん。そこは言わぬが花ってやつですよ。まぁ、長距離の移動で疲れたでしょうし、先ずはゆっくり休みましょう。ああ、部屋は好きなとこ使っていいから」

「ああ」


 シアは、そう言いながら1階の入り口に一番近い部屋の鍵を取った。すぐに部屋から出られるようにと、警戒するためだろうか。そして、すぐに荷物を持って部屋に向かう。


「あ、7時に食事があっちの食堂であるからね。それまでは自由時間ってことで」


 そう言って、シアとシュアは部屋に入っていった。


「……チームプレイも、何もない動きね。まぁ、あいつはあいつで忙しいんでしょうけど」

「部屋割り、どうします?」

「……2階を使いましょう。まぁ、なにもないでしょうけど。警戒はしておくべきだし。それで、部屋は角部屋を使いましょう。私とベイ、サラサとヒイラが階段に近い方。その一個端を他の皆で使って」

「そんなに詰めて使うんですか?」

「何か合ったとき、誰かが対応してくれる状況であったほうが良いでしょう。そういうことよ」

「あの、私もベイ君と一緒が!!」

「今は諦めなさい」

「はい……」


 部屋が決まり、俺達は鍵と荷物を持って部屋に進んだ。そして、部屋に入るとすぐにアリーが部屋の棚の扉を開けたり、ベッドの下を見たりしている。そして、それが終わると隣の部屋に進み、同じことをしようとしたが、ロデが先に同じことをしていた。


「……何かあった?」

「いえ、何も。普通ですよ。私のアイテムにも、魔力反応はなし」


 ロデが小さな石をかざす。それにロデが魔力を込めると、青から石の色が赤に変わった。


「そう、なら安心ね。ロデ、よくこんなことするの?」

「ああ、拠点の安全確認はアイテムを使うものとしてあたり前のことですので。まして、敵と戦うかもしれない戦場の町。当然ですよ」


 そう言いながら、ロデは部屋の隅に何かの粉を部屋を囲う線になるように振りまいていく。そして、部屋の窓を警戒するようにゆっくりと開け、辺りを見回し、何かを上にかざした。


「……わーお」

「どうしたの?」

「僅かですが、何か反応がありますね。何かの、魔法の発動範囲にいるようです」

「……あんた、結構有能ね。私の記憶と、少し違うわ……」

「え?」

「なんでもないわ。で、何かは分かる?」

「いや、そこまでは。魔法陣であることは分かります。大気中の魔力に変な流れがあるのが見えるアイテムですので。魔法陣は、設置しているだけで周りの魔力に微弱な影響を起こしますからね。それを測定したわけです。ゆらぎが観測できる。ということは、魔法陣の範囲内ということですから、何かがあるのは間違いないかと」

「そう」

「召喚魔法陣の影響ですかね?」

「いえ、それは転移魔法陣の影響よ。恐らくね」

「転移魔法陣……」


 アリーは、ロデが持っていた杖らしきものを手に取る。杖の先の宝石が、揺らめくようにいろいろな色に変化していた。


「なるほど。よく作るわね、こんなの」

「アリーさん、何故転移魔法陣だと?」

「……こんな町中で、邪魔もなしに召喚魔法を使えると思う?しかも、警備兵が多い商業町。このままだと、誰にも召喚が事前にバレていなかったとしても、誰かしら邪魔に入っていたでしょうね。それを避けるために相手が取れる方法、それがあるとすれば」

「転移魔法?」

「そう。町中にいる人間を全て転移させ、邪魔者を消す。それが最善手でしょうね」

「なるほど。ということは、町全体に転移魔法陣が?」

「可能性はあるわね。でも、逆にありがたいわ。犯人が民間人を避難させてくれるんですもの。逆にありがたいわよね」

「ああ、それはそうですね。私達以外が敵。とても分かりやすいと思います」

「そういうこと」


 アリーは、ロデに杖を返した。


「でも、どうやって私達は残るんです?この場に?」

「私かベイ、後はシアの周りにいれば大丈夫よ。その時にね」

「シアさんも、ですか?」

「ええ。あれ、貴方は欲しがるかもね」


 そう言って、アリーは部屋に戻る。俺は、少し魔力で街の様子を探った。魔法陣の反応、それ以外におかしなところは今はない。さて、どうなるかな。


「アリー、何時ぐらいに始まると思う?」

「明日ね。明日の夜。予想だけどね」


 アリーの記憶だと、明日の夜か。気は抜けないが、少しは気分が落ち着いた気がする。その後夕食まで、俺はサリスとアルティを布で磨いた。キラリと、2本の剣の刃先が光る。頼むぞ、二人共。


(お任せ下さい。ね、姉さん)


 アルティの声を聴くと、俺はサリスを鞘に収めた。キンっと、鋼がなる音が部屋に響いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ