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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・九部 決戦のリングルスター
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道中2

「おお~、揺れが少ない!!」

「……そうですね、姉さん」

「はぁ~、やれやれ」


 アリーは2人が牛車に乗ってくると、無言であっちに座れと指をさした。順当に空いている席の前に詰める側なので、特におかしいところはない。だが、捉えようによっては詰めて座ってくるなという指示にも取れるだろう。実際、そういう意味の指示だったと思う。まぁ、ゆったり座りたいし、無理に詰めてくることもないと思うが。


「あ~、確かにこれは快適だわ。……シュアちゃん、ちょっと私寝るね」

「どうぞ」


 そう言うと、シアは目を閉じて体の力を抜き、椅子にもたれかかった。……疲れていたのだろうか? 長時間馬車を走らせたみたいだしな。もしくは、目的地に着いた時までに体力を全快にしときたいからだろうか?


「……」


 うーん、シュアも目を閉じて静かに座っている。だが、その姿勢はピンと伸ばされ、気を張っているように感じられた。休みながらも、気を抜いていないという感じだろうか。


「あいつらは、相変わらずね。休める時に休み、無理をする時に備えてるんでしょう。旅や冒険ってよりも、まさに仕事って感じよね。兵士って感じ」

「私も、迷宮で泊りがけの修行をした時はあんな感じでしたね。交代で休憩しながら、戦闘に備える。あの2人は、早くから長期戦を見越して動いているようですね」

「敵の人数も不明だけど、大規模な組織のようだから、かなり動くことにはなるでしょうね。決戦の日は」

「リングルスターでしたか。確か、大きな商業区があるとのことでしたが」

「ええ。8本の大通りを挟むように、露店が展開されている商業区のある街。それがリングルスターよ。その商業区の大きさは、まさに迷路。小道脇道も多く。出店されている店の数も多いため、全部回るには最低でも3日かかると言われている町みたいね」

「す、凄いですね!!」

「まぁ、うちほどの品揃えはないと思うけど」


 そう言って、ロデが魔法銃の手入れをしている。その顔は、何処か自慢げだ。


「そう言えば、誰か行ったことある人いる?」


 アリーがそう言って馬車を見回すが、手を上げているものはいなかった。


「地図なら頭に入っています。ご安心下さい」


 シュアが、そう言った。


「そう。まぁ、私もある意味行ったようなもんだから、構造は覚えてるけど。あの町じゃ、覚えているだけでは駄目ね。移動力がないと、ちょっときついわ。風魔法とか、筋力強化で建物飛び越えられるくらいじゃないとちょっときついわね」

「練習、してきました」

「お、ニーナちゃんやるじゃない。でも、あまり無理しないでね。特に貴方は」

「は、はい?」


 ニーナに移動力が……。生存率が上がる方向に、働いてくれれば良いのだが。


「そう言えば、あの2人はそこら辺大丈夫?」

(すでに気を纏えるようになっていますし。私の修行で、速さのみを重点して磨いています。問題ないかと)

「ミズキが、心配ないって言ってたよ」

「なるほどね。……あの2人、もしかして今、ニンジャになってるのかしら。ロザリオとニーナに修行をつけていたから、あまりあの2人の成長を知らないのよね。ボロボロな姿しか、最近見てない気が……」

「私もよく知らないですね。ベイ、お前は知ってるんだろ?修行終わりには、ベイがあの2人をよく介抱していたじゃないか」

「ああ、そうだね。……まぁ、以前とは別人かな。手数も多くなったし、動きも早い。武器も短剣と長剣の二刀流になったし」

「武器も持ち替えていたのか。ちょっと手合わせしてみたいな」

「サラサにはまだ遠いと思うよ。強みはあると思うけど」


 俺は、連携してミズキに挑んでいたレノンとサラを思い出していた。間違いなくあの2人は、段違いの成長を遂げている。いつもボロボロのクッタクタになるまで動き、それでも訓練をやめなかった。それで成長しないほうが、おかしいというものだ。


(まぁ、あの2人の目的は、主に修行終わりの湯浴みをご主人様に手伝ってもらうことのためだけに頑張っていたように思えますがね)

「……」


 そうなんだよなぁ。疲れすぎて動けないって言うんで、毎回汗を拭いたり、身体を洗う手伝いなんかをした。……あれで、あそこ迄がんばれたのだろうか。だとしたら、やったかいがあったと思う。俺も役得だったし、WINWINの関係だな。


「ということは、あまり足手まといにはならなさそうね。なら良かった」

「私だって今までとは違うよ、アリーさん。新調した魔法アイテムが、皆さんの勝利を保証しますよ」


 そう言ってロデは、手入れした魔法銃を振り回している。以前に比べて、扱いが早くなったように感じられた。でも、レノンやサラほどの訓練をロデはしていない。本当に、大丈夫なんだろうか?


「回復アイテムは、多めにあるのよね?」

「勿論。そして、今回の目玉商品はこちら。氷結球。投げた場所、一面を凍らせる優れもの。これにかかれば、敵の足止めから氷漬けまで、あっという間という訳でして」

「……まぁ、使えなくはなさそうね。魔法使いには、あまり効き目がないでしょうけど」

「そうなんですよね。火魔法に弱くって。でも、直接当てれば詠唱も何も意味ないですから、任せて下さい。投げのコントロールは抜群ですから!!」


 投擲技術を鍛えたということだろうか。アイテム使いっぽい鍛え方だな。


「さて、あまり戦力に不安はなさそうね。じゃあ、着くまで何してましょうか?」

「じゃあ、私はベイ君の喜ぶことが知りたいです!!妻として、夫のことを知りたいですから!!」

「そういうのは、シュア達がいない時に言いなさい。ほら、少し不機嫌な顔してるでしょ」

「あっ、そうですね。話題を変えますか」

「その方が良いわね」

「じゃあ、ベイ君が今までどんな修行をしてきたのか聞かせてもらってもいいですか?」

「俺の?」

「うん。聞きたいなぁ~」

「私も、興味がある」

「そうだなぁ」


 どこから話そうか。やはり、アリーと修行を始めた頃からかな。俺は、皆との出会いと訓練の日々を皆が魔物であるという事実を隠しながら、皆に話していくことにした。



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